2024年通年もこの車両が、「日本で一番売れた車」になりました。HondaのN-BOXです。
フルモデルチェンジしたのですが・・・どこが変わったのかわからない・・・
Hondaの車として、初めてだと思います。「3代続けて同じデザイン基調の車」は。
私は、「Hondaは、フルモデルチェンジするたびに台数が減っていく車を作る世界でも稀な特技がある会社」と思っているのですが、このN-BOXは、その「変な特技」を打破することができているようです。
完成された形・・・価値あるいは機能を表現していると思います。
遠くから一目見て、「HondaのN-BOX」と分かる良い形をした車です。
軽自動車という「枠」が決められているのにも関わらず、これほど「独自の車名」がわかりやすい車両デザインも非常に稀だと思います。初代ワゴンR以来の完成された「形」だと思っています。
「それだったら、フルモデルチェンジ投資する必要もないのでは?」
う〜ん・・・実際・・・「わざわざ初代から2代目あるいは、この3代目に乗り換えるユーザーがどれだけいるのか?」という点は、これからデータが蓄積されていくのだと思います。
「フルモデルチェンジをすることで、今、ユーザーが所有している物をわざわざ古くする。」
という拡販手法は、20世紀的というか・・・とっくの昔に通用しなくなっています。車の世界では。
「フルモデルチェンジをするとユーザーが逃げていく。」ということをこれまでのHondaは、体現し続けてしまったというか。
軽自動車のフルモデルチェンジというのは、今後は、「コストダウンのため」実行されるようになるのではないかと・・・
「軽自動車」という枠組みの中で、必要な車種は3つしかありません。
1.超背高ワゴン
2.5ナンバー枠に収まる車高の車両
3.上記1,2の間の車高の車両
モデル数を増やしてしまうほど、管理コストが増えることになります。「安く作らなければならない。」という宿命がある車両群なのに。
なので、ダイハツが今もコペンを作り続けていることは、イレギュラー中のイレギュラーかと。
恐らく、「いかに台数を捌き続けるか」が必須事項の枠組みなので、商用車分野でいかに安定した台数を確保し続けられるかがキーで、まあ、そのためにHondaは、フレーム構造の軽トラックは撤退して、バンの方は、N-BOXとできる限りの共用化を果たした新商品を投入することで、生き延びることを狙っているのだと思います。
私は、ずっと前から「Hondaは商用車分野に本気で進出するべきだ。」と思っているのですが、なんでかプロボックスやハイエースを放置し続けていますよね。フリードでその威力をフルに発揮して見せているのに。
ビジネスカーの分野を放置していると、せっかく「家庭はHonda車だけ」で固めているはずのオーナー企業の拠点にもトヨタのセールスマンがやってくるってことなんですよ。
まあ、その侵食に歯止めをかけるためにHondaは軽自動車を大事にしているってことなのかもしれませんが。
だいぶ前置きが長くなりました。珍しく。いつも通り、車両そのものの話に入りましょう。
「日本で一番売れ続けている車」なので、「必要なもの」は、一通り全部揃っている車両です。小さい車体の中に。
この手の軽自動車は、「シート裏の机」が標準装備されるみたいです。タントにも同じ装備がありました。
両側電動スライドドアです。ミニバンでも片側だけという車両があるのに本当に贅沢です。
「デザインの力」が、内装にもフルに発揮されている車両です。プラスチック成形のテイストを黒一色にしないことで、開放感を表しています。まあ・・・この色味は・・・私は、「時間が経過すると、すごく古臭く見えるのでは?」と思いながら、撮影したんですけどね。
シートヒーターも装備されています。すごいですよねえ・・・
USBは、TYPE-Aだけでなく、TYPE-C端子も装備されています。両方を装備している車両に乗るのは、初めてかもしれません。
USB端子を装備してくれているので、ヘルメットも乾燥させながら移動することができます。
最近は、ミニバンに必ず装備されるようになった「網戸」もちゃんと装備されています。軽自動車なのに。
N-BOXを象徴するのが、この「荷室の低さ」本当に低い位置から、テールゲートが開きます。他のメーカーの軽自動車では、絶対に実現できない構造の車両です。
ただ、今回のN-BOXは、「後席後ろの荷室は、フラットになっていない。」構造です。というか、この手の車両で、「後席を目一杯後ろにした状態で」「バックを搭載できる。」こと自体が異例なのですが。
なぜか、「後席後ろの床は、なだらかにテールゲートに向かって下がっている。」構造になっています。今回のN-BOX。
何がなんでもフルフラットにしてこなかった理由が・・・何かあるんだと思います。例えば・・・フルフラットにする代わりにその空間に電池を押し込んで、EV版N-BOXを今後出してくるとか・・・考えすぎか。
アクセルペダルは、樹脂一帯成形品でした。位置関係に違和感を感じないようにセットされています。
現行Fitに通じる水平2本スポークのシンプルなステアリングホイールを操作してスタート。
握りの太さも適切で、非常に操作がしやすいです。
2代目と3代目の大きな違いは、「コーナー進入時の曖昧さ」が消えたことです。
初代は、コーナー進入時にスパッと車体姿勢が決まったのですが、2代目は、その辺りが消えてしまって、残念に感じていました。
今度の3代目は、その残念な部分が消し込まれて、かつ、乗り心地が格段に良くなっています。この手の「背が高い軽自動車」は、舗装道路の段差越え時にガツンと衝撃が伝わってきてしまうことがあるのですが、このN-BOXでは、そのような症状は皆無でした。
ただ・・・それと引き換えになったのか・・・高速道路を走り始めてから、非常に困惑が・・・
「ステアリングホイールを両手でしっかり握り続けないといけない。」(当たり前と言えば当たり前なのですが。)
そう感じました。高速道路に乗ってすぐに。
「あれ?なんだろう・・・ものすごく左右にステアリングが取られる。風が強いのか?」
確かに・・・吹き流しを探して見ると左から右に向かって揺れてはいた日でしたが・・・それにしてもこんなに直進安定性に欠ける感覚は・・・ここのところ、軽自動車に乗っていなかったからそう感じるのか・・・いや、軽トラックにはたびたび乗っていたし・・・ここのところ、軽自動車といっても競技用に改造されたナンバー付きをドライブするようになっていたから、感覚がずれているのかな?
そんな疑問を感じながら、Honda SENSINGを作動開始。
ほっとしました。Honda SENSINGは必須装備です。高速道路を走る軽自動車にとって。緊張感をだいぶ和らげてくれます。時に今回のN-BOXでは。
センサー動作自体も、さらに精度が上がっています。前方に車両が割り込んできても、急ブレーキがかかるようなことがなくなりました。
この「高速道路で緊張感を伴う。」点については、タイヤの銘柄を変えるだけでもだいぶ印象が変わりそうな・・・実際、返却前に念の為、タイヤの空気圧を測定してみたところ、指定から5%程少ないエア圧で1日走ってしまっていました。4輪とも。通常、レンタカーの車両は、「エア、入れすぎ」で貸し出されれる方が圧倒的に多いんですけどね。
なので、適正空気圧で走行させれば、また違う印象になるのかもしれません。
今度のN-BOXも「買って間違いなしの軽自動車」になっています。本当に「限られた空間(枠組み)の中でよく考えられた。」いい車両だと思います。