河野美砂子の「モーツァルト練習日記」+短歌+京都の日々の暮らし

河野美砂子の「モーツァルト練習日記」+短歌+京都の日々の暮らし

4/26(土)13時30分「ショパン・ワルツ全曲①」NHK文化センター京都教室 ワルツ第1~4番

バースデートリオ、フォーレ!

2024-12-29 03:35:45 | 室内楽
12/26、東京・荒川クラシックBOXにて「バースデートリオ」無事終了しました。

ハイドン e-moll 、ラヴェル「ソナチネ」(トリオ編曲版)、そしてフォーレ「ピアノ三重奏Op,120」。
いずれもピアノトリオとしてはマイナーな作品ながら、演奏する喜びとしては格別なものあり。

ハイドン晩年の、モーツァルトから多大な影響を受けたであろう、生き生きとした曲。
特に「小節線をまたぐスラー」がめっちゃ面白い! 
モーツァルトも同様ですが、彼らの後半生にしか現れないこのスラー。
存分に楽しみました。

ラヴェルは、有名な三重奏曲とは異なった小品として、
今回初めて編曲(原曲はピアノ曲)譜面を見つけて(音源は見つからなかった)音出ししてみたのですが、
原曲を知っているピアニストとしては、改変せざるを得ない所多数。
……なかなか大変でした。

そしてフォーレ! 
もうなんというか、私はこの曲をしんそこ愛します!! 
たぶんお客さまの中には、一度聞いただけではようわからん、
とおっしゃる方も少なからずいらっしゃるかもしれません(アンケートではそんなことなく圧倒的に人気ありました)が、
弾き終わったあと、こんなに「もいっかい弾きたい」と思う気持ちが湧きおこるのはなんでなの? 

第一楽章冒頭チェロのテーマが、その後すこしずつ形を変え調を変え色を変え、時にひらひらと断片が浮遊し、最後に向かってゆく………音楽以外の喜びとしては決してあり得ないような、音の喜び………

第二楽章の、もう今ここで言葉にすることは「言葉の敗北」としか言いようがないと思われる、凄い音楽。
……なんでこんな音楽をフォーレは書けたんでしょうね……。

フィナーレの、1小節が3拍子でありながら、3小節が1まとまり(3×3)の音楽。
わたしはこれをダンス、と思って弾いてましたが、
次々と同じメロディながらカラーがめくるめく変わってゆく不思議さ!

……これは、はからずも
先日私のNHKカルチャーで終了したショパン「マズルカ」の最終曲(死の床で書いた)を思い浮かべずにはいられません。
同じメロディが4回、それがすべてハーモニーが変化することに命を懸ける、といった……

ん~、フォーレのトリオ、なんとしてももう一度弾きたい!!!


谷川俊太郎さん

2024-11-29 15:48:00 | 谷川俊太郎さん
2006年7月21日京都新聞夕刊掲載

ショパンが死の直前に書いた曲

2024-11-19 00:41:46 | 全曲演奏付き講演会
(★11/20、追記しました。●●●✦✦✦後をご覧ください。)

11/23(土)13時30分より「ショパン・マズルカ」シリーズ ⑫ 最終回を、
NHK文化センター京都教室にて開催します。 詳細は、こちらへ。

Op.67、Op.68全曲と、サービス(!)で「幻想即興曲」を演奏。

特にOp.68-4のマズルカは、ショパン39年の生涯の一番最後に書いた曲。
ところどころ未完成の部分がある自筆譜が残っています。

従来のパデレフスキ版などではへ短調部分のみが印刷譜として出版されていましたが、
近年出版されたエキエル版では、解読しにくい中間部のヘ長調部分も掘り起こしており、
今回はそれを演奏します。

私もこの部分を弾くのは初めてなのですが、弾いてみてびっくり! 
4回繰り返される同じメロディに、4回とも異なったハーモニー(調)が……カラーが次々と変化してゆく……! 
今までのマズルカでも似たようなな部分はありましたが、この曲のハーモニーは、
ショパンのあらゆる曲の中で最も精妙で親密で香気があるというのか、ショパンの心臓と直結しているように思います。

フォンタナという、ショパンの友人兼マネジャー的な人が、
ショパンの遺言(出版していない作品はすべて廃棄する)を守らず、
結果的にはそれがよかった(?)とも言われますが、今回は、その一例として、
ショパンの意に反してですが「幻想即興曲」も演奏することにしました。

●●●✦✦✦……ここから追記です!

…その幻想即興曲、
やっぱりフォンタナが出版したの(一般に流布してる)とは別ヴァージョンがエキケル版に載っています。
で、従来の版は、フォンタナが勝手にショパンの死後に改変していたかと私は思ってたのですが
さにあらず!! 

実は、超ややこしい事情があったのです! 

私も今回初めて知りました(詳細は講座でお話します)。

そのことも含め、今回の「幻想即興曲」は、従来の版(ショパンの初稿?)ではなく、
エキエル版(ショパンの改訂稿)を演奏するつもりですが……。

私も今回それを弾くの初めてなので、ちょっとさらわなくっちゃ……。




マズルカ 生前最後に出版されたOp.63

2024-09-24 16:04:47 | ショパン


今度の土曜日(9/28)NHK文化センター京都教室にて「ショパン・マズルカ⑪」を開催します。

ショパンの生前に出版された最後のマズルカ OP.63全曲の他、バラード第1番も全曲演奏! 

次回の11/23(土)が第12回、最終回となります。


9/22「後期・岡井隆を語る」現代短歌シンポ in 京都

2024-09-18 22:48:21 | 短歌
9月22日(今度の日曜日)京都・四条烏丸の「経済センター・産業会館ホール」にて、
現代短歌のシンポジウムが開催(入場料1000円でどなたでも参加可能)されます。

現代短歌の巨人・岡井隆の後期作品について、さまざまな現代短歌作家たちが語り合う予定。

わたしも前半に出演し、1990年代後半から約10年ご一緒した京都での歌会のことなども交えながら
その作品の魅力をお話します。


9/7 アルティ15時 河野文昭 東京藝大退任記念演奏会 in 京都

2024-09-04 22:59:51 | 室内楽
いよいよ3日後に迫ってきました。

私はシューマンのトリオ2番を弾きます。
必ずしもポピュラーではないのですが、弾けば弾くほどいい曲! 
或る一人の室内楽愛好家は、あらゆる室内楽の中でこの2番トリオが最も好きな曲、と断言されました。
むべなるかな。

他にも、たぶん二度と開催できない超豪華メンバーによる、マニアックなプログラムによる室内楽。
…アルティ改装後の響きも楽しみです。


マズルカ Op.59 傑作の理由

2024-07-22 18:44:07 | 全曲演奏付き講演会
7月27日(土)13時30分「ショパン~マズルカ全曲⑩」
NHK文化センター京都教室にて開催します。

今回は、マズルカ全50数曲中のたぶん最高傑作であるOP.59の3曲、
それにバラード3番も演奏。

作品は最高。
しかし気温も最高(昨日38度)で、
その暑い中この名曲をどれだけの方が聞きに来て下さるか…?

…その心配をよそに練習していると、
この作品の、何物にもとらわれない即興的とも言える感興にほんと魅了されます。
ショパン自身が楽器を弾いていて、手と耳と音が混じり合いつつ音楽を誘導してゆくような…。
カラーがグラデーションのように自在に変化する…。

たとえば OP.59-1など、3分あまりの小曲なのに、なんと12の調が!
これで思い出すのはシューベルトの最後のソナタ変ロ長調第1楽章。
これには、たしか20を超える調が出てきたはず。

同じことはモーツァルトの晩年にも。
ロンド K.511 イ短調も小品ながら、約14の調が。
もひとつついでに言うと、アッポジャトゥーラの頻出!
ショパン、モーツァルトともに晩年に。
(他の作曲家も共通するのかもしれませんが、とりあえず私の気付く限りのことです)

…などと言いつつ、締切過ぎた10首もまだで…。

★この絵は、ジョルジュ・サンドが描いたショパン。
なんと書いてあるのか「?」なのですが、どなたか読めますか?

ショパンとモーツァルト

2024-06-19 19:35:43 | 全曲演奏付き講演会

今度の土曜日、マズルカ ⑨ やります!
今回はOp.56の3曲+「即興曲第2番」他。
6/22午後1時30分よりNHK文化センター京都教室にて。

ショパンさんもこのあたりになるとマズルカ集大成的な感じで書いている雰囲気。
プラス「1小節を100回書き直した」エピソード的な「こだわり」も。

今までの9回の講座で「ドローン」「教会旋法」「ポリフォニー」「ゼクエンツ」「ヘミオラ」などをお話しましたが、
今回の3曲はほとんどそれら総動員的?

また、同じメロディが異なった調で出てくる=色彩の変化、ということでは
「即興曲第2番」にも当てはまるので、それも弾くことに。

この即興曲、最後の32分音符のパッセージの曲線が魅力的なのですが、
音階の中の半音や全音が微妙(それが「味」)で意外に苦労する…。
モーツァルトのピアノ協奏曲群を思い出しました(全曲演奏会のとき苦労した)。

ショパンさんはモーツァルトのことを尊敬していたので、
きっとその協奏曲を弾きつつヒントをもらったのでしょうね。

アルティでシューマン弾きます

2024-06-11 00:40:30 | 室内楽
少し先ですが、9月7日(土)、京都府立府民ホール「アルティ」の演奏会です。
私はシューマンのピアノ三重奏曲第2番を弾きます!

詳細は、こちらへ。




マズルカ 30~32番他

2024-04-14 15:18:11 | 全曲演奏付き講演会
毎回土曜日開催のショパン「マズルカ」シリーズ。
今回のみ、金曜日の開催となります。

今までのマズルカは、必ず4曲がセットになっていたのですが、
このOp.50は3曲の構成。
それだけでも、今までのマズルカとは何か違う、と直感します。
特に第3番、嬰ハ短調は「新境地」と言っていいでしょう。

詳細は、講座で音を出しながらお話しますが、
ポリフォニーや、後半のめくるめく転調など
「マズルカ」とは称しながら、舞踏曲の範疇を越えたショパン独自の作品となっています。
ん~、すばらしい!

他に「ノートル・タン」と呼ばれるマズルカと、
今回はマヨルカ島でのショパンとジョルジュ・サンドとのエピソードもお話するので、
「前奏曲集Op.28」から〈雨だれ〉など数曲も演奏予定です。


マズルカ第22~25番

2024-01-13 18:08:44 | 全曲演奏付き講演会
1月20日(土)NHK文化センター京都教室にて、「マズルカ⑥」を開催します。

第22~25番(Op.33)全曲演奏の他、
今回はその時期のショパンの、叶わなかった恋の相手・マリア ヴォジンスカに関するお話と作品も。
ワルツOp.69-2(別れのワルツ)、
エチュードOP.25-2(ショパンが「マリアの魂の肖像」と語った)など。
ちょっと湿っぽくなってしまうので、華麗なるワルツ(第2番 Op.34-1)も弾きます。

前回の第18~21番のとき、
同じメロディが何度も繰り返される=エネルギーが少ない(いい意味でも良くない意味でも)ことや、
曲の終わり方がちょっと変わっている(終わりです! という感じではない)ことに気付きましたが、
今回も同様。

それは、一つにはマリアとの人間関係の心理的な翳りが影響しているのでは、と私は推察します。
ただ、その同じメロディを繰り返す時、
ハーモニーは変化していることや、
以前に頻出していたドローン(同音のバスが続く)の手法がソプラノに来ることなど、
作曲技法の新たな展開にもつながってるよう。

めちゃおもしろい!


河野文昭東京藝大退任記念演奏会

2023-12-25 16:04:06 | 室内楽
来年3月20日(水祝)「河野文昭東京藝術大学退任記念演奏会」が
東京藝大奏楽堂にて開催されます。

私も、シューマンの「ピアノトリオ第2番Op.80」という、ある意味マニアックな曲を演奏します!




ご来聴ご希望の方は、こちら からフォームでの申し込みが可能です。



省エネ? マズルカ⑤

2023-11-04 15:25:29 | 全曲演奏付き講演会
ショパン「マズルカ」⑤が、11月11日(土)午後1時30分よりNHK文化センター京都教室にて開催されます。

「マズルカ」第18~21番(Op.30-1~4)、「雨だれ」(前奏曲集より)「ノクターン 遺作 嬰ハ短調」他を演奏予定。

いつも、1曲ずつを解説しながら演奏して、お話もしたあと、
最後に再度そのマズルカ全4曲を通して演奏するのですが、アンケート回答に
「最後に全曲通して演奏されるときが、毎回至福の時間です」と書いてくださった方も。

お話については、
前回は「ヘミオラ」を、短歌や俳句の「句またがり」なども交えてお話しましたが、
今回はまず、当時のショパンの交友関係(主に作曲家)について、エピソードとともに。

それから、ちょっと賢くなって頂くために「ゼクエンツ」について。

今回の4曲には、ゼクエンツの他、同じ短いメロディを繰り返しつつ、
ハーモニーは変化する、みたいな箇所もあります。
それってめちゃ省エネ! 
つまり、少ない素材(メロディ)を、ハーモニーによって変化させる=省エネ。
だけど、聴く人を飽きさせないってことですよね。


マズルカ④ ヘミオラ

2023-09-28 01:04:14 | ショパン


今度の土曜(9/30)午後1時30分 NHK文化センター京都教室(四条柳馬場)にて
「マズルカ」シリーズ④を開催します。

今回は、Op.24の4曲。
毎回、取り上げるマズルカ全曲を演奏(解説も)しつつ、さらに何か1つのテーマを決めてお話するのですが、
今回は「ヘミオラ」。

ヘミオラと言えば、まずはバッハを思い出します。
3拍子のカデンツ部分に頻出しますが、あと、舞曲(クーラントなど)では、途中部分にも。
たとえば「フランス組曲第3番 h-moll」のクーラント(4分の6拍子)の後半では、
その6拍子がなんと、右手は2+2+2、左手は3+3(もちろん同時に!)という小節がいくつかあります。

ショパンのマズルカの場合、
作曲年代順に今まで演奏してきましたが、今回ほぼ初めてヘミオラが登場しました。

マズルカでは今回が初めてですが、
それに先立って、有名なワルツ(華麗なる大円舞曲)の冒頭、
これも「ヘミオラ」というんでしょうか。(今回この曲も演奏します)

このワルツ冒頭の場合、
「同じテンポで、3拍子から2拍子になることによって、
煽(あお)る感じ、とか、テンポが速くなる錯覚、とか・・」という解説があり、
なるほど、と思いましたが、
バッハとかブラームスのヘミオラはそれとは異なって、
がっちりと囲う、みたいな感覚があるんですけど。。。
(だからこそ、カデンツ部分=エネルギーが必要=に用いられる)

グローヴの事典も見てみましたが、たいした説明はありませんでした。。。

現代のヘミオラでは、「ウェストサイドストーリー」の「アメリカ」。
今回久しぶりに聞いてみましたが、
バーンスタインの音楽、めちゃ魅力的!


スティーヴン・ライヒ 日本公演

2023-09-25 03:41:34 | 室内楽
さきほど書いたBSの続き。

バッハコレギウムジャパン「ロ短調ミサ」の後に、
スティーヴン・ライヒ(ミニマルミュージック元祖)作品専門の演奏グループの日本公演録画。

・・・まずインタビューがあったのですが、
ライヒって、いま90歳近い(?)のにかわいいお帽子かぶってチャーミングなおじいちゃんでした。

東京オペラシティ(たぶん)が、ほぼ満席ということにびっくり。
今でこそ「現代音楽」ジャンルでは超有名作曲家というものの、ライヒのみの演奏会にこの数とは。
さすが東京。

しかも、最後の「18人の音楽家のための音楽」では、観客のほとんどがスタンディングオベーション。
日本人の、あんなに多くのスタンディングオベーションは、私は初めて見ました。

もちろん最後の「18人の・・」は、言いようのない高揚感というか、
いわゆるクラシック音楽の感動とは異なる、なんといったらいいのか、心を大いに動かされました。
そのこと自体も、自分でびっくり。

あと、2曲目の「トラベラーズ・プレイヤー」(日本初演)は、コロナ下での作品だそうで、
テキストとして旧約聖書など(歌+楽器アンサンブル)。
で、音程も「完全4度、5度。8度」が多用され、
もうそれはそのまま先ほどのバッハ「ロ短調ミサ」につながる。。。

おもしろーい!