もう20年以上も前のことですのでようすは変わっているのかもしれませんけれど、
マレーシアのあるビーチリゾートで、ホテルの庭の手入れをしている方々がのんびりと仕事をしていたのですなあ。
なにしろ暑いですし、決して否定的な意味合いではありませんが、ともかくあくせくしていないことに
むしろ好感を持ったといいましょうか。
たぶん生活的には楽とはいえないようにも想像するところながら、かといって全くかつかつというわけでもない。
今はとにかくホテルの庭を丁寧にきちんとすればそれでよし、あくせくすることもない。
ま、あくせくしたからといって給料が増えることもないのでもありましょうけれど。
うわべだけ見た憶測を語るのは適当ではないとは思いつつも、
いっときリゾートホテルで贅沢なのんびりに身を浸しても、日常に帰ればあくせくが続く旅行客の側からすれば、
あのおだやかなテンポをむしろ羨ましくも思えたりしたものなのでありますよ。
暖かいところではあくせくしない方が体にいいでしょうから、理に適ってもおりましょうし、
あくせく感が無いということはもしかすると競争に弱いということになったりしましょうか。
もちろん一概には言えませんけれどね。
先にバナナの本を読んだとき、原産地は東南アジアと南太平洋の各所とあったような。
つまりはここで触れたマレーシアのある東南アジアと南太平洋の島々は
バナナが育つという気候的な環境では似たところがある…ということは暑いであろうと。
ですからそこではやはりあくせく感があまり無い…そんなことが関わりあるのかどうか、
長い前振りのわりに判然とはしませんけれど、映画「ネクスト・ゴール!」を見ていて思い出したりしていたという。
副題が「世界最弱のサッカー代表チーム0対31からの挑戦」、あくせくしてないチームだからこそなのとも。
ちなみにアメリカ領サモアのチームのお話でありますよ。
されどそうはいっても得点勝負の競技に挑む以上、米領サモア・チームの面々にも当然にして負けたくはない。
映画の副題にもありますように、2001年のオーストラリア戦では31失点で得点は無し。
これがトラウマとも踏み台ともなって、ネクスト・ゴールを、つまりはまず1点を狙いに掛かるのですよね。
米領サモアも地域を挙げて応援しておりますから、本国?のアメリカからコーチや監督を招き入れ、
これまでにないトレーニングに励むことになるのでありました…と言いますと、
思い出されるのはかつて日本にたくさんあった「スポ根マンガ」、へたれチームがひたすら練習に励み、
試合ではよもやの快進撃を続けるという。まさに根性があれば「なせばなる」てな具合の。
ですがスポ根にありがちなのは、あらゆることを犠牲にしてチームの勝利を目指すといった点で
個々の犠牲やむなしと見るところ。さりながら、サモアにはサモアの文化があり、またメンバーそれぞれにも
大事にしていることがあって、外から来た監督も最初はとまどうにしても、そうしたことを尊重しつつ、
チームに適った形で練習を進めていくのですな。
なにもワールドカップ優勝を目指しているわけではありませんので、
華麗なプレーに「おお!」となることは無いとしても、メンバーそれぞれのひたむきさには
打たれるところはありますですね。人間本来の心性に訴えかけるところなのかも。
そんなことを考えますと、試合は勝負ですので勝ち負けにはこだわるものの、勝ち負けは結果なのですよね。
負けたら「無」であるとの言い方もありましょうけれど(勝つための心意気でもありましょうが)
実のところ試合に参加するどのチームも、どの選手も勝つことを目指して励むということが大切な点でしょうか。
オリンピックは「参加することに意義がある」という言葉で知られますが、クーベルタンが言った趣旨としては
オリンピックに参加するに至る過程の努力にこそ意義があるということのようでありますね。
ともすると選手の側も応援する側も、結果としての勝敗の方にばかり目を向けてしまいがちながら、
一方で米領サモアの頑張りとその試合ぶり(結果はともあれ、映画でご覧ください)には
爽やかな気分となるところもあるわけで、そうしたことを忘れてはいかんのだなあと思ったものでありますよ。