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異性の歌を歌う

 異性の歌を歌うとは…男性なのに女性視点の歌を歌う、または女性なのに男性視点の歌を歌うことです。

 なんか違和感があるんだよね。

 私が子どもの頃は、演歌とかムード歌謡ってのが流行っていて、そのジャンルでは男性歌手がよく女性視点の歌詞の歌を歌っていました。立派で渋い大人の男が、女言葉で歌っているのを聞いて、なんとも居心地の悪さを感じていました。逆もしかりで、可愛い女の子が、乱暴な口調で男性視線の歌を歌っているのを聞いても、やはり何ともイヤな気分になったものです。

 「LGBTに対する偏見をなくそう!」なんて言わなきゃいけない今の御時世に何を言っているだとお叱りを受けそうだけれど、でもやっぱり、男性が人前で女性言葉を使っているのを見聞きすると、居心地の悪さを感じるし、女性が乱暴に男性言葉を使っているのを聞くと、違和感を感じます。

 ごめん、私はそういう偏見主義者です。

 オカマさんとかビアンな人が嫌いなんじゃなくて、ただ単純に、異性の言葉で歌を歌っているのを聞くのが生理的に受け付けないだけなんです。

 日本語だと、歌詞に付随している性的な視点がダイレクト伝わるからなあ。そこへいくと、外国語の歌は、外国語が苦手な事もあって、男性の歌、女性の歌という区別が日本語の歌と比べると分かりづらいですし、異性が歌っていても嫌悪感を感じません…ってか、分かりません。

 分からないからOKなのかと言われると…やっぱり、そこは避けるべきなんじゃないかと、個人的には(たとえ偏見混じりと言われようと)思うわけです。

 具体的に言っちゃえば、男声が「アヴェ・マリア」を歌うのは、いかがなものかと思うし、女声で「セレナーデ」を歌うのも、どうなの?って思うのです。これらに限らず、歌詞の主人公と歌う歌手の性別が一致しない歌は“異性の歌”と認識してしまいます。

 あと、現実問題として、異性の歌は歌いづらいという印象もあります。

 クラシック声楽だと、女性視点の歌詞は女性歌手が歌うという前提で作曲されているケースが多く、その多くは女声に合わせて書かれています。ですから、女声を前提にして書かれている歌を男声である私が歌うと…

 「音域が広くて、つらい」
 「高音域が連続して出てきて、つらい」
 「細かな音形がたくさんあって、つらい」
 「声を聞かせる歌手が少なくて、残念」

 という感じになります。ざっくり言っちゃうと、つらいばかりで、男声としての旨味がほぼ無い…って印象です。

 オペラのアリアは、性別がはっきりしているから良いのですが、歌曲はそこのところが曖昧だったり、多少音域が合わなくても移調して歌ってしまうので、これらが分かりづらいのです。実際、歌曲は歌詞の主人公と歌手の性別が異なっていても平気で歌ってしまうケースもたくさんあることは知っていますが、私は個人的には…少なくとも人前では、異性の歌を歌うのは避けようと思っています。

 私はテノールなので、テノールに向けて書かれた歌を歌っていればいいやと思っていますし、幸いなことに、テノールに向けて書かれた歌って、歌いきれないほどたくさんあるしね、何も好んでソプラノの歌を歌わなくてもいいや…と思っているわけです。

 そんな事を考えている、昨今の私だったりします。

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コメント

  1. 如月青 より:

    >アヴェ・マリア
    シューベルトはもろに「ソプラノ」仕様の歌詞なので、男性にはムリと思いますが、
    「Ave Maria Gratia Plena」のグノーやアルカデルトなら、讃美歌なので両性で良いのでは?

    そういえば、「イタリア古典歌曲集」って振られ男の視点のものが多いですよね。
    女声も平気で発表会で「Piacer d’amor」とかやりますが、イタリア人はどう思うでしょう?

    私の好きな歌曲は圧倒的に「男声向き」、それも渋いバリトン向けが多かったりします。
    「ズボン役」を気取っても(トシ行き過ぎてますが)重みが足りない。
    でも好きは好き、で勝手に歌ってしまいます。
    「女声向け」の歌曲って詩の内容が決まりきっていてつまらないです...

  2. すとん より:

    如月青さん

     そもそも、マリア信仰って女性向けの信仰なのですよ。なので、男性でマリア信仰ってなると…よほどの事情が無い限り「?」って思われるものなのです。なので、男性が歌ってはいけないモノではないでしょうが、怪訝に思われると思います。

     イタリア古典歌曲は悩ましいわけで、多くの曲が、そもそもカストラート向けだったりするのです。つまり、歌詞の内容は男性向けだけれど、声は女性向け…なんですわ。とは言え、やはり歌詞の内容は男性向けですから女性が歌った場合「イタリア人はどう思う」でしょうね?

    >勝手に歌ってしまいます。

     好きな曲は好きに歌えばいいと思います。要は人前を気にするかどうかですよ。

     聖子ちゃんファンの男性が、カラオケで聖子ちゃんの歌を歌うのは全然問題ないと思いますが、それを人前で(例えばのど自慢大会とかで)シナを作りながら歌ったら、やっぱり変でしょ?って話なんですわ。

  3. 如月青 より:

    >マリア信仰は女性向き
    そういえば、「マリア様」は母親の象徴でしたね。
    劇やオペラで「マリア様!」と叫ぶ男性はいない...か。
    ただ、私が大好きなDebussy「フランソワ・ヴィヨンの詩による3つのバラッド」の2番目の
    「母の望みにより聖母に捧ぐ」はもろバリトン向けです。
    読み書きのできない老母に代わって息子が母の祈りを書きとった、という体裁で、
    女声でもよさそうな気がしますが、自分で歌ってみるとやはり変な気がします。
    (音域がすごく低い、聞かせどころが低いほうのcからgなので、多分自分の
    声だと広いところでは聞こえない...)
    ↓はご参考まで。

    https://youtu.be/myCL5CRPkyY

    >人前で(例えばのど自慢大会とかで)シナを作りながら歌ったら、やっぱり変でしょ?
    今の教室で2度発表会に出ましたが、自由曲は2回ともシューベルトの若い男性の歌です...
    先生がイタリアオペラの人なので、発音は厳しくても歌詞の内容には言及しなかったのが
    幸いでした。
    が、歌詞の背景を知っている人が聞いたらやはり変だったかも。

  4. すとん より:

    如月青さん

     所詮、外国語の歌を歌う場合、歌詞の内容は歌っている人にも聞いている観客にも分からないのだから、気にする必要は無いのかもしれません。所詮は自己満足レベルの問題なのかもしれません。

     ただ、メロディに関しては、男性向け、女性向けはあると思います。私が異性の歌を回避する理由の一つは、そこでもあります。やはり女性向けのメロディは、私が歌うには無理があると感じます。

     結局、歌ってみたい曲と効果的に歌える曲は違う…って事になるのかな?って思ってます。

     なので、自分と近い声質のプロ歌手が歌っているアルバムの曲からの選曲ってのが、無難なのかもしれません。まあ、声質が同じでも、歌えるとは限りませんが(笑)

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