紹介文
大学出の伍長黒木は軍隊での落伍者という烙印を押されて満州の僻地へ追われた。太平洋戦争末期緊迫するソ満国境の落伍者集団が辿る狂気の世界。人間の宿舎、に続く著者の魂の叫び
この生々しさは戦争経験者にしか書けないだろうなぁと思いましたが、解説を読みますとまさに作者は主人公と同じく満州からソ連国境そしてそこからの逃避行を経験しているそうで。
もう、色々な凄惨なエピソードがてんこ盛りなんですがどれもこれも想像で書けるものではありませんよ、奥さん。
陰惨、凄惨、悲惨、いじめに体罰、支配。
・・軍隊って非人間的なところなんですね…
こんな世界、自分のおじいちゃんが経験したのかと思うとそりゃ、戦争から帰って人格変わってても仕方ないんじゃないかと思うわ…
だからって2次被害を受けた家族にしてみればたまったもんではないでしょうが。
主人公である黒木伍長は軍人としてやる気はないものの表明的にはうまくやり過ごしてなんとか生きて帰りたいと願う
ある意味とても普通の人。
その黒木伍長につけられたのは極限に置かれ欲望剥き出しの部下やいじめによって男性の大事なところに損傷を負った初年兵などなど。
その5人とソ連国境からの逃避行がメインの話ですがいろんなことがあっても結局皆帰れないんですね。
そう言った人、たくさんいたんだろうなぁ。
そして、今の日本はその上に成り立っているんだなぁ。
結構男性の性的な描写(BLとは違うけど)が多いのですがそれも読んでていやらしいとは思うよりも、男の人の自分のものに対する執着ってイコール生きる気力に直接繋がるほど大事なんだなぁとなんだかお気の毒になる程です。
もしかすると男性が読んだらトラウマになるくらいの本なのかも。
最期はちょっとあっけないくらいのバッドエンドですが、そのあっけなさがむしろ現実味を醸し出していると思います。