レッドブル・ホンダ F1分析:フェルスタッペの輝きに賭けたタイヤ戦略 / F1アメリカGP 決勝
F1アメリカGPのファイナルラップで、マックス・フェルスタッペンは、ルイス・ハミルトンよりも8周古いタイヤで最後の輝きをみせた。

レッドブル・ホンダにとって、スタートでルイス・ハミルトンの前に出たれたことでレースプランは大きく狂った。マシンもタイヤも優れていたが、コース上で抜くことは困難だった。

サーキット・オブ・ジ・アメリカズでオーバーテイクを完了されるには『1.2秒』のペース差が必要となる。そして、このペース差が最後の最後で勝敗を分けることになる。

スタートでトップに立ったルイス・ハミルトンは、クリーンエアのなかでリアタイヤのオーバーヒートを抑えることができた。そして、メルセデスのストレートスピードはマックス・フェルスタッペンを抑えるには十分だった。

自分たちよりもペースが遅いマシンがレースをリードしている状況で、レッドブル・ホンダは勝利への道を切り開こうとする。答えは、大胆な戦略を採り、あとはマックス・フェルスタッペンの能力に委ねることだ。

レッドブル・ホンダは、10周目にアンダーカットを狙ってマックス・フェルスタッペンをピットインさせる。だが、そこには大きなリスクがあった。5番手のダニエル・リカルド(マクラーレン)をアウトラップで抜き、4番手のシャルル・ルクレールのピットウインドウから外さなければならなかった(運よくピットインしてくれた)。

この時点で残り46周。タイヤデグラデーションの高いサーキット。理想的には第1スティントをできるだけ伸ばし、残りのスティントで新しいタイヤのグリップを最大限に生かしたいもの。それはメルセデスが望んだ戦略だ。

ここでセルジオ・ペレスが登場する。ポール争いにも絡んだペレスは、マックス・フェルスタッペンのピットイン後、ルイス・ハミルトンに十分に近づいた。そして、アンダーカットのプレッシャーをかけ、13周目にハミルトンをピットインに誘発した。

これでマックス・フェルスタッペンの頭痛の種はひとつ解消された。タイヤには厳しいが、タイヤのオフセットは3周に制限された。

だが、マックス・フェルスタッペンはアウトラップでダニエル・リカルドを抜かなければならなかった。1.2秒のパフォーマンス差は新品のタイヤでもほぼ不可能だ。だが、フェルスタッペンは、後にタイヤを痛めないよう走行したルイス・ハミルトンよりも2.5秒速いアウトアップでリカルドをパスする。これが一つ目のポイントだ。

当然ながら、マックス・フェルスタッペンのハードタイヤは早くに限界に近づいた。ゆっくりとリフト&コーストをしながらタイヤにスイッチが入るのを待ったルイス・ハミルトンは、第2スティントのスタートで6.7秒あった差を28周目までに3.2秒まで縮めた。

レッドブル・ホンダは、手遅れになる前にマックス・フェルスタッペンをピットに入れた。19周しかしていないタイヤを捨て、最終スティントは27周を走らなければならなかった。

残念ながら、今回はセルジオ・ペレスはアンダーカットのプレッシャーをかけられる距離にはいなかった。ペレスは中古のミディアムと新品のハードしかなく、第2スティントはアウトラップのパフォーマンスで中古のミディアムを選んだ。

メルセデスは、できる限りルイス・ハミルトの第2スティントを伸ばした。それによって、最終スティントでフェルスタッペンに対するグリップのアドバンテージを最大化した。

ルイス・ハミルトンはさらに8周長く走り、8.8秒遅れでコースに復帰。残り19周。タイヤは理論上では0.8秒速く、19周×0.8秒=15.2秒。計算上では勝っていた。そして、オーバーテイクに必要な1.2秒のペースアドバンテージも手に入れた。だが、もちろん、それほど単純には進まない。

ルイス・ハミルトンは、ハードタイヤの熱入れのフェーズを終わらせると41周目に1.9秒、42周目に1.4秒、その後も0.5秒ずつ差を縮めていく。その間にはファステストラップも記録した。

マックス・フェルスタッペンは、逆のゲームをプレイしていた。0.6秒を犠牲にしながらリフト&コースと繰り返しハミルトンが到着するまでにタイヤが1.2秒遅くならないようにナーシングしていた。フェルスタッペンとハミルトンのレースは逆転していた。

最悪の事態はバックマーカーだった。マックス・フェルスタッペンはミック・シューマッハ(ハース)に前を塞がれ、最後から2周目に入るときにルイス・ハミルトンは0.8秒背後に迫っていた。ターン10~11のDRS検知ポイントでそれを維持すれば、バックストレートで勝利を手にする準備をしてターン12に入ることができる。

だが、ここでマックス・フェルスタッペンは、ミック・シューマッハのDRSを使えるという幸運にも恵まれ、セクター1のファステストラップを出す。そして、ハミルトンをDRS圏外に追い出した。

「彼は最後に僕たちを翻弄した。結局、今週末は彼らの方が上手だった」とルイス・ハミルトンは語った。

「そして、僕たちはこれ以上は求められなかった。彼らの方が週末を通して速かった。バーレーンと同じように熱さのなかで彼は本当に強い」

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カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1