バッハを演奏するホグウッド、エンシェント室内管弦楽団。古楽による管弦楽組曲の全曲です。85~88年録音。第2番で活躍するフルートはリザ・ベズノシウク。ホグウッドのバッハ。たとえばブランデンブルク協奏曲では第5番を短い第1稿を採用するなど、早いテンポ、清新な感覚で進行する現代的なバッハとなっています。当初はフランス風の序曲を筆頭に編まれた舞曲集であり、単に組曲だったわけですが、バッハ自身は「序曲」と呼称していました。交響曲の起源の一つともいえる管弦楽によるまとまった編成の音楽集となっています。オワリゾールには偉大なJ.S.バッハだけでなくJ.C.バッハをはじめ、J.C.E.バッハの息子たちの組曲集も収録。すでにフランスを起源とする舞曲は、ここにきて舞踏という身体を超えて、音楽という抽象的なものの抽出の精華ともいえるものとなりました。、ホグウッドの大バッハ、あるいはその息子たちの管弦楽組曲を通して、古典の時代に連なる様式の変化をも確認することができるのです。今日では管弦楽組曲には収録されない第5番はフリーデマン・バッハの作品でした。バッハ一族の音楽的資産。器楽曲の量産の時期のケーテン、それ以前のヴァイマル時代の作品と考えられますが、作品に求められる編成は大きく、ここにライプツィヒでの加筆が考えられます。単なる序曲が「管弦楽」組曲と管弦楽と呼称されるために、本来の編成を超えて大きくなっていった経緯があります。第3番の3本のトランペットの響きなど、他を圧しない響きを見出したのは古楽の登場からでした。編成には謎を残し、通奏に用いる楽器も奏者の裁量に委ねられます。ホグウッドの響きは、モダンの室内管弦楽からすると、室内楽的編成に近いもので、弦のアタックをはじめ細部をも聞き取れるもの。レーベル、オワゾリールのとりあげてきた雅美に寄せたものとなっています。これは時代楽器であっても、求められる音量のバランス、テンポなどの裁量があり、適宜対応しているからです。ダブルリード、通奏にはファゴットも加わり、それぞれの声部が生き生きと活躍しています。

ケーテンの宮廷楽団は、ヴァイオリン2、チェロ1、ヴィオラ・ダ・ガンバ1、オーボエ1、ファゴット1、フルート2の宮廷音楽家に加え、弦楽合奏の4名の音楽家、2名のトランペット、1名のティンパニといった編成でした。ここにヴィオラがないのは、アンサンブルでは好んでヴィオラを弾いたバッハがあったからかもしれません。モダン、時代楽器に限らず、バッハの時代とは異なるものでした。先述のように、管弦楽という後世の人々が組曲に付加したものがいつの間にか響きを壮麗なものとしていった経緯は否めません。ホグウッドの響きが小さいものとなっていても、本質をとらえバッハ的な響きを創出しています。

 


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