嘘をつく、ということ。 | TimeShare~タイムシェア【恋愛小説集】

嘘をつく、ということ。

「嘘をついてはいけません」

幼い頃、親から、幼稚園の先生から、周りの大人たちから習ったこと。

人間であるなら、それは、当たり前のことだと思って生きてきた。


「嘘つきは泥棒のはじまり」

嘘ばかりついていると、結局は誰からも信用されず、世間で認められないような人間にしかなれませんよ。

そう、私は、嘘をつくのは、恥ずかしいことだと思って生きてきた。


「嘘も方便」

世の中には、ついていい嘘もある。

嘘をついたほうが、周りの誰も傷つかず、自分自身も守ってくれる、そんな魔法の呪文みたいな嘘も、確かに存在する。

けれど、嘘は、いつか必ずバレる時が来る。

その時、自分を守るために、また、人は嘘をつく。

嘘に嘘を重ね、ついには身動きがとれなくなってしまう。

だったら、はじめから嘘なんかつかなきゃいい。

けれど、それでも嘘をつく人もいる。

どうでもいい、ちっぽけな護身や、

ほんのちょっぴりの虚勢のために、

あるいは、誰かを陥れようとするために、

つい、嘘をついてしまう、そんな人間も、世の中には、確かに存在する。



もはや、私は、誰を信じていいのか、わからなくなってしまった。

嘘をつくのが、いいことなのか、悪いことなのか、それすらにも鈍感になっている自分がいる。



頭の中を真っ白にしたいと思う。

うるさい雑念を取り払って、いいこと、悪いこと、必要なもの、いらないもの、

まっさらな大学ノートに箇条書きにするように整理できたら、どんなに楽だろうと思う。

けれど、今の私には、それはとても難しいことのように思う。


「嘘をついてはいけません」

幼い日の、大人からの教えを、どうして人は忘れてしまうんだろうか。