「え、具合あんまりよくないの?大丈夫?」
南は彼女の顔色を窺った。
「・・少しつわりのような症状はあるんですけど。なんか、」
「ん?」
「あたし。 もちろん実家の援助や仕事でみなさんに助けてもらって・・のこととわかってたんですけど。 だんだんと・・なんだかすごく悪いことをしているみたいで、」
ゆうこは自分の心の内を南に打ち明けた。
「え、なんで? なんも悪くないやん、」
南は相変わらず不妊治療を続けている。
彼女は病気をして妊娠が難しい身体になってしまったけれど、少しずつ治療を始めて
なんとか妊娠を目指して頑張っている。
そんな南にこんなことを言うのも申し訳ない気持ちもあった。
「あ、あたしのこと気にしてる?」
勘のいい南はすぐにそう言った。
黙ってうつむくゆうこの腕をぽんと叩いて
「もー。 ゆうこ気にしすぎ。 あのね。 赤ちゃんってほんまに奇跡なんだよ?やることやってりゃすぐ子供できるって軽く考えてたけど。 あたしみたいに病気したりしてあっという間に難しくなる。でもゆうこはそうやって赤ちゃんを授かることができた。こんな幸せなことないよ。仕事なんかね。 どうにでもなる。それにちゃんと会社には産休も育休も規則で定められてるんやから。何の遠慮もすることない。ゆうこは実家のお母さんに任せられる環境で。 そういう人はね、どんどん子供産み育てるべきだよ。誰に悪いなんて思うことない、」
いつもの彼女らしく力強い言葉で励ました。
「南さん、」
「具合悪かったらね、無理しないで。」
「・・だいじょうぶです、」
ゆうこは少しだけ元気になった。
ところが。
つわりは日に日にひどくなる。
「だいじょぶか? 顔色真っ青やん・・。 今日は休んだ方がいい、」
出がけに志藤はトイレから出てきたゆうこの顔を見て言った。
「・・大丈夫です。 少し落ち着きました、」
全く落ち着いてないことが顔を見ただけでわかる。
志藤はひとつため息をついて、
「あかん。 そんな無理しても。 仕事にならん。 行くことだけで仕事果たせるわけやない、」
少し厳しく言った。
「そんな、」
ゆうこはそれに反発した。
「いや。 ゆうこは会社に行くことしか考えてへん。 社長について外出もあるやろ。 行っても何もできませんじゃ。余計にみんなに迷惑かける、」
その言葉にその場にぺたんと座り込んでしまった。
日に日にひどくなるつわり。ゆうこは現実を思い知ります…
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