映画監督の

アラン・パーカー氏が

亡くなりました

 

私が学生だった頃は

『ミッドナイト・エクスプレス』の

監督として有名だったのですが

今は『エビータ』のほうが

世に知られた作品扱いでしょうか。

 

 

 

 

 

私が最初に観た

パーカー作品は

『バーディ』でした。

 

 

 

 

私はそれまで映画のことを

演出だのカメラワークだので

語る人々のことを

ちょっと軽侮していて

難しいこたあいいんだよ!

話のつじつまが合っていて

役者が大根じゃなくて

2時間前後を楽しませてくれたら

それで問題ないんだ、

だって映画は娯楽なんだから!

みたいな感じであったのが

・・・『バーディ』を観終わった後の

あの衝撃的な虚脱感。

 

「私は今・・・なんというか

非常に美しい経験をさせて

いただきました・・・」という・・・

 

正直腰が抜けた。

 

いや、抜けた・

抜かれたのは度肝かな?

 

半開きの口元から

漏れ出た私の魂を

パーカー監督(笑顔)が

鷲掴みにし容赦なく

揺さぶってくれたような?

 

私はあの映画で

マシュー・モディーンの贔屓になり

ピーター・ガブリエルを聴くようになり

 

 

あ!ニコラス・ケイジのことを

『ハリウッドの闇を象徴する

力技ハンサム枠扱い俳優』とか

嗤っている人たち、

是非この時のニコラスを観て!

 

この映画のニコラスは文句なしの

『癖のある、でも繊細な美男子』!

 

そして『バーディ』を何度も

観返しているうちに(私は

当時から一度好きになると

しつこい)気が付いたのが

その画面の安定感。

 

どの場面を切り取っても

その一瞬一瞬のバランスが完璧。

 

すべての瞬間が『絵になる』。

 

そして映画を観る人間の

視線の動きを完全に

見切ったうえでの

場面・場面のつなぎ方。

 

故に観客は

いたずらに疲労することなく

物語に陶酔できる。

 

派手なアクションも

大袈裟な効果音も

パーカー監督には必要ない。

 

そんなものを使わないでも

人の心をつかむ方法を

この映画の魔術師は知っていた。

 

ちなみに私は

こんなことを言っておきながら

『アンジェラの灰』を

パーカー作品であると知らずに

劇場に観に行った馬鹿者です。

 

 

 

 

しかし映画が始まって

15分くらいのところで

「・・・この画面の感じ・・・

ものすごくパーカーっぽい・・・!

監督がパーカーさんの

弟子とか・・・?いや、これは

パーカー先生の映画だ!」

 

タイトルロールで

『監督:アラン・パーカー』が

表示されたときの

あの孤独な勝利の喜び。

 

パーカー作品独特の

律義さが構図にあるんです。

 

『バーディ』を

まだ観ていないアナタ、

こういう映画が

好きか嫌いかはともかく、

120分を費やす価値は

きっとある作品です。

 

筋立てもいい、役者もいい、

音楽も(とてつもなく)いい、

そして何より

監督がアラン・パーカー。

 

ハズレなわけがないだろう・・・!

 

アラン・パーカーは私にとって

「映画の映像美とは何か」を

教えてくれた人でした。

 

ご冥福をお祈りします。

 

 

映像美で陶酔するような

快感を私に与えてくれるのは

パーカー監督と北野監督、

このおふたりが両巨頭ですね

 

 

 

 

あれは不思議なもので

クロサワ作品とか観ていて

「あー、これが後進の

監督たちが揃って学んだという

構図・コマ割りの妙技かあ、

うん、確かにカメラワーク

すごく上手だし、その結果として

観ていてとても気持ちいいよね」

という気持ちにはなるのですが、

パーカー作品や北野作品の持つ

痺れるような魔力は

私にとっては特にない

 

 

 

 

映画としては

滅茶苦茶に面白いんですよ!

 

黒澤映画を

軽視したいわけではなくて!

 

たぶんですね、私とは逆に

黒澤作品に強烈な陶酔を感じ

「北野?パーカー?うーん・・・

計算しているのはわかるけど・・・」

という人も存在するのでは

 

それはもう個人の好きずき、

「チャイコフスキーと

ストラヴィンスキーと

どっちが好きか」みたいな

話なのではないかと

 

 

 

 

 

まあとにかく

『バーディ』はいい映画で

アラン・パーカーは

いい監督であったのです

 

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