夫(英国人)が定期的に

服用している薬は

GP(かかりつけ医)に

処方箋を出して

貰わねばならないのです。

 

手持ちの在庫が

少なくなってきたので

診療所に連絡を入れたところ、

やはり現在医療機関は

コロナの影響で忙しいのでしょう、

折り返しの連絡がまったくなく。

 

1週間ほど待ってから夫は

あらためて診療所に電話をし

「処方箋どうなっていますか」

「・・・えーと、薬局にすでに

出してあります!その旨

連絡しなくてごめんなさい!

でももう薬局のほうに

お薬は準備できています、

いつでも取りに行ってください」

 

そう言われた翌日、夫は

朝早くに家を出て薬局へ。

 

「ついでに手紙も

出してきてくれるか」

 

「・・・僕、9時半までに

家に戻りたいんですけど」

 

「大丈夫大丈夫、郵便局は

薬局のすぐ近くだし。あ、ついでに

スーパーにもよってもらえる?」

 

「僕、9時半からオンラインで

会議に出なくちゃなんですけど!」

 

しかし夫は無事に

9時20分に帰宅、

しかし表情がどうも暗く

「・・・あー・・・なんかごめん、

郵便局とスーパー、混んでた?」

 

「いえ、郵便局とスーパーは

問題ありませんでした。

問題があったのは薬局です。

薬が準備できていないって

言われて帰されたんです」

 

「えっ?処方箋、診療所から

薬局のほうに

届いていなかったの?」

 

「薬局の人曰く、処方箋が

届いたのが昨日の夕方5時過ぎで、

その場合薬が準備できるのは

翌日、つまり

今日の5時以降なんだそうです」

 

「う・・・でも診療所に君が

電話をしたのは

昨日の5時前じゃないか、

あの時点で処方箋は

出ていたんだから・・・あ、でも

『蕎麦屋の出前』の

可能性もあるか・・・しかし・・・」

 

「これがコロナ禍でないなら

クレームのひとつも

入れたいところなんですが、

でも今は医療関係者は

本当に大変ですからね・・・」

 

「えらい。そこでそう言えるのは

えらい。それにあれだな、

考えようによっては私が

郵便局とスーパーの用を

頼んでいてよかったな、少なくとも

街まで出かけたドライブが

完全に無駄ではなかったわけで・・・」

 

「今日の夕方、5時以降に

君、薬局に行ってくれますか?

僕、その時間忙しいんですよ」

 

えっ、そんな面倒くさい、と

思いつつもしかし郵便と買い物を

頼んでしまった引け目もあって

私は夕方に外出準備をし

「でもこれでまた薬の準備が

出来ていなかったら腹が立つから

念のため薬局に電話を入れて

そこのところ確認しようぜ」

 

しかし当然のごとく

薬局の電話はお話し中で。

 

「安全策で明日の朝行くんじゃ駄目か。

あ、でも明日は君も私も忙しいんだよな」

 

仕方ないので街まで車を出し

件の薬局に到着したのが5時半過ぎ。

 

「こんにちは、処方箋薬の

受け取りに参りました」

 

「はい、では処方箋の

受取人のお名前を教えてください・・・

はいはいなるほど・・・あ、

これはですね、明日の5時以降に

お薬が準備できる予定ですね」

 

・・・えっ?

 

「明日じゃなくて今日の

間違いじゃありませんか?」

 

「いえ!明日です。ですから

明日の午後5時以降にまた

こちらまでお出でください」

 

実は家を出る時に私は

夫に頼まれていたのです、

もし万が一、薬の準備が

出来ていなかったら、そこで

恨み言の一つも言ってくれ、と。

 

政府・医療関係者が口をそろえて

『感染リスクの低い生活を』と

提唱する中、我々はその通り

山奥から出ず、人に会わない

生活をしている、そんな我々が

山を越えて街に出て薬局に来る、

そんなリスクを背負った行動を

あえてしたのにこの仕打ち、

それはないんじゃございません?と。

 

・・・でもさ、それはさ・・・

 

この状況で『薬局で働く』、

そういう高リスクを伴うお仕事を

世のため人のために

してくれている方に

そういうことはなかなか・・・

 

それにこれは確かに薬局および

診療所内の何かのミスではあるけれど、

今、私の担当をしてくれている

この人がその責任を

負うべきかといったら・・・ねえ・・・?

 

よし!ここは『北風と太陽』作戦だ!と

 

 

 

 

私は春のお日様のような

笑顔と明るさで朗らかに

「ところがですね!私の夫が

今朝、この薬局に実際に

足を運んでおりまして、

その時に受付の方に

『今日の5時』と確かに

言われたんだそうでございます!

それはもう間違いなく!

だから今私がこうしてここに

来ているわけなんでございます!」

 

「今朝・・・ですか?」

 

「そうです、なんでも今朝のこちらの

2番目の客がわが夫だったらしいです。

その時にですね、受付の方は

やはり今のアナタと同じように

そちらのPCで何やら調べて、で、

処方箋は昨日の午後に届いている、

しかし準備に時間がかかるので

受け取りは本日5時以降に、と

おっしゃったらしいんですよ!

今朝、お店が開いてすぐの

出来事だったそうです。その時

そう受付の方がおっしゃったなら

絶対にその時間に準備が

出来ていると思うんですよねえ・・・

ほら、こちらのお店はそういう点

非常にしっかりしていらっしゃるから・・・」

 

と、ここで突然受付横のドアが開き

そこからスタスタと

マネージャーっぽい女性が出てきて

「お客様、お話聞いておりました、

うちの者が今朝、

そう申したんですね?」

 

「そうです、時間で言うと9時2分とか

そこらへんのことだと思います、

ほら、このお店、時間に正確ですから、

開店時間直後の話ですから!

・・・診療所から処方箋が届いたのか

どうも遅かったみたいなんです、

でもそれを夕方までには

こちらの薬局のほうでなんとか

してくださるって・・・もう本当お優しくて

職務熱心でいらっしゃいますよね・・・」

 

「少々お待ちください、今、

バックヤードを確認してまいります」

 

「え!そんな、お手間をおかけして・・・

ありがとうございます!ああ、やっぱり

この薬局の方たちはご親切!」

 

我ながら自分のこういう

欺瞞ギリギリの行動の

倫理的な是非について

考えてしまうところは

多少あるんですが

しかし結果として

薬は30秒後に出てきました。

 

もうそこからは

パントマイムまで駆使しての

「まあ、本当にありがとう!

私、この薬局、大好き!」の

熱演ですよ。

 

しかし本当に不思議なのは

・・・英国の医療機関には

私も散々お世話になっているので

悪口だけは言いたくないんですが、

でもこういう詰めの甘さ

こちらの病院・薬局で時に・・・

たまに・・・割とよく・・・あること・・・で、

・・・何故これでコロナワクチンの

接種が英国内では神速をもって

展開されているのかしら?

 

いや、私、正直、接種プログラムは

開始1週間目くらいで滞ると

予測していたんですよね。

 

ところがどっこい

怒涛の快進撃ですよ。

 

まあそんなわけで夫は無事に

お薬を手に入れることが出来たのです。

 

 

よかったよかった。

 

 

私の薬局での善戦ぶりを伝えると

夫は喜んではくれたものの

「それ・・・もしかして朝の段階で

僕がもう少し粘っていれば

バックヤードにすでに薬が

あった可能性もありますかね・・・」

 

いやそれは・・・

 

でもこんなこと書いていますけど

薬局の受付の人って基本的に

アタリが柔らかくて親切で

でも同時に「ご安心ください、

私はプロです」みたいな

印象があって、あれは育成過程で

そういう教育を受けるんですかね?

 

『病者・弱者に対する

正しい印象の与え方』みたいな

 

そんなわけで私の賞賛の言葉に

嘘はないんでございます、嘘は

 

薬局にはお世話になっているアナタも

薬とは無縁の健康人生闊歩中のあなたも

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