英国王室のフィリップ殿下

訃報を受け様々な人が

『お悔やみの言葉』を述べ

それがニュースになりましたが、

その中で私が一番

印象に残ったのは

「そりゃ自分は左派・

共和主義・王室廃止

政治信条としておりますが、

それとこれとは話が別で、

私はフィリップ殿下の長年の

見事なお仕事ぶりを心から

尊敬しておりました。心より

哀悼の意を表明いたします」と

述べた政治家の・・・あれは

どなただったのでしょう、

英国で長年王室廃止運動を

率いてきた立場の方であると

お見受けというか

お聞き受けしたのですが、

ラジオでお声は聞けたのですが

お名前のところを聞き逃してしまい。

 

ただこの方だけでなく英国の

並み居る共和派重鎮はおしなべて

このたび弔意を示している模様です。

 

勿論どなたかの死に際して

これを好機と悪口を言うような人は

洋の東西を問わず軽蔑されるので

政治家たるものそこは

美辞麗句で表面を取り繕うのは

当然と言えば当然、

しかしこのラジオで流れた

『長年の王室廃止論者』の声には

「わが敵は天晴な人間でありました!」

という悔しさ半分悲しさ半分の

「私がここで殿下を悪く言うとでも

思ったか?言うわけないだろ、

わが宿敵に!私の

戦った相手はな、それはそれは

立派な人物だったんだ!」

みたいな感情が滲み出ていて

・・・あれ?これは私、結果的に

王室廃止論者氏の

舌に丸め込まれた・・・?

 

いやいやいや。

 

 

というわけで毀誉褒貶の多い

人生を送られた

フィリップ殿下でありましたが、

私があの方のことを

考えるたびに思い出すのが

シュテファン・ツヴァイクの名著

『マリー・アントワネット』。

 

 

 

 

 

その中の一挿話に、

フランス女王になった

アントワネットが

友人にあてた手紙の中で

夫であるフランス国王

ルイ16世のことを

『かわいそうな人』と書き、

これを知ったアントワネットの母、

オーストリアの女帝

マリア・テレジアがまさに

怒髪天を衝く勢いの

叱責の手紙を

アントワネットに出す、

という場面があるのですが、

つまり王政の基本というのは

『王と臣民』、

王は臣民を愛し、対して

臣民は王を敬愛する。

 

王の配偶者は

臣民の第一たるもの、

故にいついかなる場合も

『王に対する尊敬』を

公に示さねばならない。

 

王の配偶者が王に対し

軽侮の態度を示したら、

他の臣民の王政に対する

信頼が揺らぐ。

 

それは最終的に

王政そのものをも揺らがせる。

 

アントワネットは結果的に

怒涛の王政崩壊を招きましたが、

その崩壊の途上において

多くの貴族が今度は

『王と王女を軽侮する』側に回った。

 

そこからの流れは我々が

歴史の授業で習った通りで

今度は『市民』が『貴族』を

尊敬することを止め

多くの貴族が

ギロチンにかけられた。

 

・・・で、この記述を踏まえて、

女王陛下が王位に就かれて以来の

フィリップ殿下の陛下に対する

ご態度を思い出すと・・・

 

そりゃフランス革命当時の

フランスの絶対王政と

現在の英国の立憲君主制は

基本の部分がかなり異なりますが、

あの方はご自身の立場の

重要性というものを本当に

他の誰よりも深く理解なさって

いらしたのだな、という感慨が・・・

 

常に、いついかなる場合も

「私は陛下を敬愛しております」

という姿勢を上っ面だけの

言葉ではなく態度・人生で示し、

そうすることで王室の存在を

安定させるという

非常に難しい役割を

果たしていらしたのだと思います。

 

これ、簡単なようですけど

同時にフィリップ殿下の人格というか

人品も問われるお仕事ですからね。

 

これでフィリップ殿下が

真に大衆に尊敬されない

ご性質の持ち主だったら

「そんな人にそんなこと言われても」

という雰囲気が絶対に出てしまう。

 

ネットでもありますでしょ、

普段下卑た中傷を周囲に

散々まき散らしているような人が

突然キリッと『私は愛国者です』とか

言い出すのを見た時のこっちの

「うわあ」っていうあの気持ち。

 

その点フィリップ殿下は

見事に身を処され

・・・わかる、私がもしも

王室廃止論者だったら

「我は好敵手を得たり!

これは挑み甲斐がある!」

という気持ちになるだろうし、

故に今回の訃報に接したら

「・・・しばらく戦う気力がわきません」

と壁に向かって体育座りを

してしまいたくなる。

 

そんなわけでフィリップ殿下は

まさにお見事でいらしたのです。

 

 

・・・で、ここからちょっと

話はゴシップ方面に

行ってしまうのですが、

そんなフィリップ殿下は

最近のハリー王子の言動

どう思われていたんでしょうね。

 

フィリップ殿下が人生をかけて

守ろうとした価値観を放棄し

新たな道を目指して進む。

 

これはこれでやりようによっては

「流石わが孫、

主義信条は異なれど

その勇気はわが血筋!」という

ご納得にお至りに

なられたかもしれませんが・・・

 

私が考えるに

ハリー王子の選べた最善策は

英国王室のことを

何も悪く言わずに

ただ公務から身を引き、

その後も黙してひたすら

『新しい人生』を模索すること。

 

いや!新しい人生を進むにあたり

これまでの自分の生き方を

振り返って、私はどうしても王室を

批判せねばならないのです!

というならそれもそれでよし、

我々は言論の自由が

保障された社会に住まう人間、

元・王子殿下といえども

「父(チャールズ皇太子)と

兄(ウィリアム王子)は王室に

閉じ込められている」だの

「英国には人種差別がある」だの

主張する権利はあるのです!

 

ただ、そうやって勇気ある

敵対の道、それまで自分も

所属していた集団の価値を

損なう発言を自らの意志で

表明しながら同時に

「王室が我々への財政支援を

止めるなんてひどい」と

言ってしまうのはそれは・・・

 

あの・・・王子、あなたのことを

財政的に支援するためには

あなたのお父様やお兄様は

あなたの言うところの

『英国王室というシステム』を

今後も無事に稼働させ続けなくては

ならないのですよ・・・?

 

英国王室の座右の銘は

『文句を言うな、言い訳するな

(Never Complain, Never Explain)』

であると言われています。

 

フィリップ殿下は

それをご体現なさった。

 

女王陛下もきっと

このご家訓を全うされる。

 

しかし近頃のハリー王子は

その逆を目指して

いらっしゃるように見える。

 

誰もがフィリップ殿下のように

強く生きられるわけではない、

それは当然のことにしても、

私はここに悲劇を感じてしまうのです。

 

 

『文句を言うな、言い訳するな』は

英国王室の誇る

最強処世術のような気もします

 

何を言っても悪く取られる時は

悪く取られる、ならば

黙して態度・行動で示すのみ、

みたいな覚悟だけが

最終的に大衆を動かす、というか

 

最近ではアンドリュー王子

この家訓を忘れて大怪我を

していらっしゃいましたね

 

さてこの記事を書くにあたって

私は割とたくさんの

王室関係記事を読み

すっかりゴシップ通に

なってしまった感が

あるのですが

皆様はいかがですか

 

王室ネタがお好きなアナタも

いやいや、たまたまNorizoさんが

こういう記事を書いているから

その参考文献的にそういう話を

読み漁ってしまっただけでそんな

王室ゴシップなんてそんな・・・と

つい早口になってしまったあなたも

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