広島市内のこども園で、子育て通信「えがおがいっぱい」を発信しています。その第19号（2021年8月号）は、「体罰」です。
体罰はなぜ禁止されたのですか？ 虐待はあってはなりませんが、体罰は、時と場合によっては必要だと思います。
2020年4月に、親による体罰を禁止する法律が施行されました。体罰は、虐待の言い訳になったり、虐待にエスカレートするからという理由だけで禁止されたのではありません。たとえ、真に「しつけ」のためであっても、良い結果をもたらさないからです。
「体罰」は、子どもが悪いことをしたと親が判断した時、子どもに反省させるために痛い目に合わせることです。ということは、「相手が悪いとあなたが思ったら、相手をなぐっていいんだよ」と、教えることになってしまいます。子どもは、嫌な相手や、気に入らいない相手に、暴力を振うようになります。
また、体罰を受けた子は深い屈辱感を味わいます。そして、「自分は殴られて当然の子だ」と、自己否定感を持つようになります。体罰を加える親は、「強くなって欲しい」と思っているのですが、逆の結果をもたらすのです。
中には、「くそっ、見返してやる！」と、屈辱感を憎しみや怒りに変えて頑張る子もいます。でも、憎しみや怒りで頑張った後に、喜びや満足感はありません。
薬に例えるなら、体罰には危険な副作用があることが分かってきたのです。ですから、「体罰」という薬は禁止しましょうということです。
他の子に暴力を振るう子どもに対して、「叩かれた痛みを分からせるため」に叩く親がいます。これも逆効果です。その子は、叩かれる痛みを知っています。自分の心の痛みを、他の子にも思い知らせようと叩いているのです。
スポーツ界でも、選手のモチベーションを上げ、科学的にトレーニングする方が、体罰よりはるかに効果的であることが分かってきました。
家庭だけでなく、学校や競技団体などのあらゆる場面で「体罰」という指導方法がなくなり、子どもたちが自分を大切にし、まわりの人も大切にする社会になるといいですね。
◆ もしあなたが、親から受けた体罰に感謝しているなら、愛を感じられるしかり方をしてくれた親を、誇りに思っていいと思います。ただご自身は、「体罰」という危険な"薬"に頼るのではなく、安全で効果の高い"薬"で、喜びのある子育てや指導をしてください。
◆ もしあなたが、これまで「体罰」という"薬"に頼っていたとしても、そこに愛があったなら、ご自身を恥じたり、責めたりする必要はありません。今回その"薬"の使用が禁止されたわけですから、安全で効果の高い他の"薬"に変えてください。
◆ もしあなたが、叩いてはいけないと思っていながら、つい手が出てしまうなら、それはあなた自身が発するＳＯＳです。あなたは、ダメな親でも悪い親でもありません。「助けが必要な親」です。一人で頑張らずに、まわりに助けを求めてください。
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（「子育て通信19」完）
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