陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

Bing Image Createrを使ってみたけれど

2023-05-21 | 芸術・文化・科学・歴史

AIで描画や文章作成ができるサービスが登場し、話題になっています。
有料だったり、対応言語が英語に限るなどで、使用のハードルが高いと思われていましたが。なんとWindowsの標準ブラウザであるMicrosf Edgeで、簡単に誰でも使えることができると知り、さっそく試してみました。

ちなみにこの事実を今まで知らなかったのは。
ブラウザをMicrosf Edge以外にしていたから。MEにあるAI絵画作成ツールのBing Image Createrは、MEのアカウントを取得さえすればOK!  

私がもくろんでいたのは、現在拙ブログ上で公開中の二次創作小説の挿絵を自分で描けるのかどうか、ということ。作品名やキャラ名を入れたり、髪や瞳の色を指定したりしてみましたが、残念ながら思ったとおりの仕上がりにはなりませんでした。

巫女といれても、なにか不思議な和風っぽい衣裳を着た女の子しか出てこない。
しかも東南アジア風だったり、黒人と白人のペアだったりもする。コスプレした画像みたいにもなるし、いつも猫耳がついていたり、不思議な突起物が頭部にあったり。意味不明な金キラキンのアクセサリーやらを身に着けていたりする。

英語指定のはずですが、近日、日本語対応したのこと。正直、日本語入力のほうがまだましで。
イラスト風のキャラ絵にしても、どうみても、ウェブ上でわんさかいらっしゃる実在の絵師さんのほうが確実にお上手ですよ、これは。

というか、作品名やキャラ名を入れて、その原作者さんやアニメの絵がまんま出てこられても困りますし、それだとふつうにググったり、買った漫画の表紙をスキャンしてるのと変わらないですから。誰かが描いた二次絵をひっぱってこられてもマズいです。だから、まあ、この仕様は仕方がないのかもしれない。でも、「巫女」でも「Miko」でも「shirine maiden」でも巫女装束の女の子が出てこず。白衣に紅袴とわざわざ書いても、へんな着物をきた気味の悪い女性しか誕生しません。ハガレンのエルリック兄弟が母親を錬成して失敗したあのときの気持ちがわかろうかというもの。人間が生命を産み落とすという神秘は、やはり魔術でも科学も不可能なのです。

人物絵はひょっとしたら、何回も読み込ませて、学習させたほうがいいのかもしれません。
でも、絵柄がなんとなくいつも同じ感じで、代わり映えがしないというか。正直、言葉を入力→やり直しを繰り返すことに飽きて、嫌になります。言葉の表現力の問題なのかもしれませんが、自分の脳の中にあるぴったしのイメージを現前化させてくれない、というこの事態にかなり苛立ちます。自分で絵を描いて、その下手くそさに絶望したことがあるひとほど、そうではないでしょうか。


それに、ブログに添える画像が欲しいなら、センスのいい人が描いた投稿サイトを利用したほうが安上がりですむでしょう。小説書きが挿絵が欲しいならば、しっかりと技能がある絵師さんに依頼した方がいいですし、自分の注文に応えてくれる絵師さんならば、お互いにWin‐Winの関係にもなれます。AIと人間のあいだでは、こうした創作を通じた交流がまず不可能です。

ふつうに絵描きを楽しむ方ならば、ぜったいに自分で描く過程を工夫しながらやったほうが断然楽しいでしょうし。それに観ている方も、どこのAIがくれた絵よりも、人間の絵のほうが安心感があるんじゃないでしょうかね。

ひとつAI描画が勝っているとしたら。
それは感情のこもらないような物体を描くことで。要するに有機物にしても、猫だの、犬だののように、形状が共通認識として学習しやすいものに限られるということですね。いちばんいいのは細密な風景画で。中国で大量のゲームクリエイターが解雇されているという事態は、3Dの背景を描くような絵師に限定されている、ということではないでしょうか。漫画家さんでいえば、お話づくりやキャラを生み出す原作者ではなくて、お手伝いのアシスタントさんが不要になるといった程度の。

この記事のトップ画像は、「月の社」と入力して出したもの。
幻想的な雰囲気がありますが、鳥居以外に左右に得体のしれないものがありますし、それに角度も真正面すぎて趣きがありません。「神殿」とするとへんちくりんな建物が出現しますし、「巫女」も入れたら不気味なクリーチャーが生まれるので、もうこのBing Image Createrで、人間を描きたくはないです。いやいやそもそも描くなんて行為じゃないな、これは。

このAI絵師、著作権のある作品を食わせて、素人が自作のように発表し利益を得る行為がネット上で物議を醸し、ピクシブでは規約変更で禁止されているという知らせも。
別にAIに描かせなくとも、それはもちろんアウト。絵師本人が自作をAIに読み込ませて、創作の作業時間を大幅に節約できたりすることには効果がありそうですね。効果をつけるとか、作風を部分的に変えるとか。でもそれって、これまでのillustratorやPhotoshopでもできたことですよね。正直、既存の下絵をフォトショとかで加工していじって遊んでいるほうがまだ楽しいです。食材をすべて畑からつくらないまでも、買ってきたもので料理するのは楽しいが、レトルト食品をレンジでチンだとなんだか虚しい、というあの感覚と似ています。つくる楽しさがないですよね、これ。

私の考えとしては。
たとえば、いらすとやの無料配布イラストみたいな、企業やらお役所やらの広報誌だとか書籍のあいまの、ものすごくシンプルなわかりやすいテイストの挿絵だったらとって代わられそうですが。漫画家さんみたいに絵に物語性を加えることがきるなり、、かなり特殊な画風を確立しているなりのイラストレイター(わたせせいぞう並みに絵をみただけでパッと名前が浮かぶぐらいの)であれば、AI創作を脅威にするほどではないのでは、と思います。イチから新しいイメージを生み出すのは苦手みたいですしね。

その創作者のネームバリューが商品ブランドに欲しくて、お金を出すクライアントさんもいると思いますし。
たとえば、マリア様がみてるという百合作品とお菓子がコラボしたとして。絵柄のパッケージはやはり、あの絵柄の絵師さんに任せたいと思うし、消費者もそれを望む、になるのではないでしょうか。作家の誰それさんのだから、その人の生き様の証明だから、味わいのある個性が発揮されているから、という信頼感がAIにはないのだと。AIには人生がないからなのです。

私が心配なのは。
こうしたのっぺりしたデジタルな絵に慣れることによって。
人間が自分で絵具をこねたり、ペンで線を引く、染みができ、にじみが飛ぶといった偶然のいたずらできる描画の面白さを忘れてしまい、手間がかかり汚れ作業でもある手仕事の醍醐味を失ってしまうのではないか、絵の中に魂がこもらないはりぼてのような絵がばかリが散乱して、それが崇められてしまう未来になるのではないかという危惧です。

AI創作の描画の精度はあがっていくでしょうが、だからといって有史以来の芸術文化の価値がすぐさま全否定されるわけではない。それは写真が登場して写実主義から絵画が離脱したのと同じで、創造するという行為もより違った方向をたどると思うのです。それをプロの生活の糧にするのはやや厳しくはなりそうですが、アマチュアニズムとして楽しむには、この道具の進化は喜ばしいものになるかもしれないということです。

この記事がブログ上で公開される頃には、ひょっとしたら、Bing Image Createrでは、おそらしく画像生成のレベルが上がっているのかもしれませんけどね。現時点では、他のサービスをわざわざ時間とお金をかけて使いたいとまでは思わないです。

(2023/05/07)




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