レオパレス21、米ファンドが支援 ファンド傘下も再建険しく 賃貸市場は過剰 |  NPO法人日本住宅性能検査協会 建築・不動産ADR総合研究所(AAI)

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レオパレス、米ファンドが支援 債務超過解消へ

レオパレス、ファンド傘下も再建険しく 賃貸市場は過剰

 

(日経新聞)2020.10.1

 

経営再建中のレオパレス21は30日、米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループから支援を受け入れると発表した。出資と融資で合わせて572億円の資金を得る。レオパレスは施工不良問題が響き6月末時点で118億円の債務超過に陥ったが、資金調達により解消する見通し。不動産分野に強みを持つファンドの資金やノウハウを活用し、経営の立て直しを目指す。

 

11月にファンドに普通株や優先株を割り当てるほか、新株予約権付融資を受ける。実施後はフォートレス系企業がレオパレス株の25.71%を持つ筆頭株主になる。補修工事に伴う入居率低迷に備え現金を積み増す。フォートレスはソフトバンクグループ傘下にある。

 

レオパレスは施工不良問題や新型コロナウイルス禍による経済活動の停滞で、アパートのオーナーから借り上げて転貸するサブリース事業が低迷している。同日発表した2020年4~6月期連結決算は、最終損益が141億円の赤字(前年同期は57億円の赤字)だった。5月以降、入居率が損益分岐点である80%を下回っている。

 

8月にはコスト削減のため1000人超の希望退職を実施したが、コロナ禍で不透明な経営環境が続いている。このため国内外の投資ファンドなどからスポンサー選定を進めていた。

 

フォートレスは米国に拠点を置く投資ファンド。不動産分野に強みを持ち、18年には三菱マテリアルの不動産子会社を買収した。「ビレッジハウス」のブランド名で、全国で賃貸住宅も運営している。レオパレスは賃貸住宅分野での協業も視野に入れているとみられる。

 

フォートレスは17年にソフトバンクGの傘下に入った。米国の規制により、ソフトバンクGはフォートレスの投資方針などに介入できない。

 

同社は11日に予定していた4~6月期の決算発表を「希望退職募集で決算業務に関わる従業員が想定以上に退職した」として再延期したが、額面通りに受け取る人は少なかった。実際、債務超過の解消に向け、火中の栗を拾うスポンサー候補と交渉するための猶予期間の意味もあったようだ。

 

再建の方向性を巡り今年2月にかけ、大株主だった旧村上ファンド系の投資会社レノ(東京・渋谷)と経営権を争った。新たな取締役の選任といった提案は株主総会で退けたものの、新型コロナウイルスの感染で入居が落ち込んだ。改修工事で現金も流出し、生き残りへスポンサー選びに着手せざるを得なかった。

「信用リスクや業績悪化懸念が拭えない」(国内証券アナリスト)状況のなか、国内運用会社アルデシアインベストメントや事業会社などの名前が浮かんでは消えた。フォートレスは8月時点で3社残っていた候補のうちの1社だった。自ら運営する賃貸住宅のブランド名「ビレッジハウス」で、協業も視野に入れているもようだ。

 

ひとまず債務超過を解消する見通しになったレオパレスだが、資金流出のリスクは続く。現預金は6月末で420億円あり、当面の運転資金は確保しているとみられる。ただ、この1年で現預金は約290億円減少。銀行借り入れは少ないものの、施工不良を改善する補修工事の引当金は6月末で544億円に達し、重荷となっている。

 

投資ファンドの支援を受けても、再生が順調に進むかは見通しにくい。本業である賃貸アパートの利用が低迷しているためだ。2年前は9割を超えた入居率は新型コロナによる企業活動の停滞もあり、5月以降は損益分岐点の80%を切る状況が続く。会社側は「8月から改善に向かう」と予想していたが、78.18%と過去最低の水準だった。

 

レオパレスなど賃貸アパート経営各社は、郊外などの地主(オーナー)らに相続税が軽減されるとしてアパート経営を提案。地主らが銀行などから融資を受けて物件を建て、不動産会社が長期間借り上げて毎月一定の家賃を保証する「サブリース」の仕組みをとる。

 

 

ただ調査会社の東京カンテイ(東京・品川)の井出武上席主任研究員は賃貸アパート市場について、「人口減が続く地方などで無理に作れば供給過剰が強まる」と指摘する。入居が想定に達しなければ、地主への賃料を維持できなくなる。賃料水準が説明なく減額されたりと、一部でトラブルが起きている。

 

シェアハウス運営業者破綻などもあり、金融機関からの融資が厳格化された。建築ペースは落ち込み、19年度で前年比14%減の33万4509戸と3年連続で減った。

 

同業大手の業績は振るわない。大東建託の21年3月期の連結業績は売上高が前期比7%減の1兆4800億円、純利益が38%減の560億円を見込む。新型コロナでサブリース物件の入居者あっせんの営業が停滞したことなどが響く。

 

レオパレスもコストカットへ「不動産を貸しているオーナーとの交渉が焦点になる」(業界関係者)。全国の約2万8千人のオーナーからアパート用地を借りており、経費圧縮には保証した賃料の水準見直しも避けられないもようだ。交渉内容によってはオーナーの反発を招きかねない。

 

宮尾文也社長は「アパート運営を安定させることが使命」と繰り返し話してきた。一度傷ついた建造物への信用を取り戻すのは容易ではない。米ファンドの力を借りたブランド力の構築など、本業の再建へ課題は多い。

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