超高機動銀河恋愛黙示録モロッソスギャラクシー

美少年刑務所の名物所長チャキオと
小悪魔ボディの見習い天使アヴダビが激突する
モロッソスみそっみそっ創作宇宙

目次

3000-04-01 10:03:56 | 目次
バナー(ジンコ先生作)
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妖精大百科フェアリー・マンダーラ85(チャキオ@キンカン)

2012-06-05 02:52:17 | 妖精大百科フェアリー・マンダーラ
 85匹目「ハメットゴー」

「また出たぁ~!! もう勘弁してーっ!!」
 洋一郎之介は、半ベソになりました。いくら洋一郎之介が妖精慣れしているとはいえ、今まで見たことないほど、奴ら(クリーチャーズ)は、気持ち悪かったのです。
「おいおい。なんて言い様だい? 俺のようなイケズを掴まえて……」
 予想に反して、ソイツは低くて良い声をしていました。ちょっとしたイタリアあたりのイケメンを彷彿とさせます。
 ですが、洋一郎之介が顔を上げて見ても、シュモクザメ、チーター、鳥で形成された生き物をイケメンとはとても思えず、余計に悲しくなりました。
「泣くのはおよしよ、ハニー。君にそんな顔は似合わないよ。さあ、一緒にゲームでもしよう。俺の名前は、ハメットゴーさ。君の名は?」
 ハメットゴーは、髪があったなら、かきあげているようなポーズを取りました。もちろん、髪などありませんが。
「俺の名前は……洋一郎之介ってんだ……」
「ナイスな名前だね、ハニー」
 容姿とは裏腹に、こまっしゃくれたハメットゴーに、洋一郎之介は徐々に苛立ちを感じ始めました。
「気持ち悪いから、そのハニーってのやめてくれよ!」
「オップス!! 怖い怖い」
 ハメットゴーは、外人がよくやるアーハン?的なポーズでおどけて見せます。ますます苛立つ洋一郎之介。
「ねえねえ、ゲームやらないの?」
 そこに割って入ったのは、頭だけは可愛らしいチコニール。
「そうだそうだ。僕たちはゲームをやるために呼び出されたんだからね」
 と、オクパンハ。そして、お決まりのウインクをしてみせましたが、何度見ても好感度は1ミリたりとて上がりませんでした。

 二匹の意見に促されて、ハメットゴーは、居間からソファを引っ張りだし、そこに足を組んで座りました。若干、邪魔でしたが、誰も特に何も言いませんでした。

 マイペースに、オクパンハがカードを切って配ります。相変わらず手裏剣のようなカード裁きは見事でした。洋一郎之介がオクパンハに対して認めてもいいと思えるのは、その技だけでした。
 ハメットゴーは、配られたカードを上手にハンマーヘッドの上に並べました。
「さあて、男と男の勝負、はじめようか?」
 ハメットゴーは、パチンと指を鳴らしました。イケメン風情なハメットゴーに、心底イライラしていた洋一郎之介。一気に畳みかけてやる! と、息を巻きましたが、実際にはハメットゴーだけでなく、オクパンハやチコニールにまで、次々とクリーチャーを完成されてしまいます。

「ちくしょー! もう一度! 俺が勝つまでやる! 絶対に勝つまでやめないからなーっ!」
 いきり立つ洋一郎之介。しかしながら、何度やっても勝てずに、オクパンハ達が現れてから、もはや5時間ほど経ってしまいました。
 その頃には、クリーチャーたちの気持ち悪さも見慣れてしまい、何だか昔なじみのゲーム仲間のようになってきていました。

「お前らって、ホント良い奴だよな。俺、なんか超楽しいよ。何ての? 昔の友は今の友って感じ?」
 洋一郎之介の言葉に、オクパンハもチコニールもハメットゴーも嬉しそうでした。温かい空気が流れます。そう、これがマブダチってやつ?
 四人は顔を見合わせて笑いました。その時です。

「洋一郎之介! 何やってんの! ペットを飼っちゃいけないって言ったでしょ!」
 ヒステリックな声に振り返ると、そこには買い物袋をぶら下げた仁王立ちのお母さんがいました。
「ひーっ! ごめんなさい!! 違うんだ! コイツ等は、ペットじゃなくて……」
「言い訳は聞きません! 元の場所に返してきなさい! じゃないと、ご飯ありませんからね!」
 そう一方的に叱りつけて、お母さんは自分の部屋へ行ってしまいました。

 その場に残されて呆然とする三匹と洋一郎之介。しかし、意を決したようにオクパンハがポツリと呟きました。
「楽しかったよ……。洋一郎之介……」
 そして、お決まりのウインクをしました。今となっては、それも可愛く見えてくるから不思議です。
「僕……洋一郎之介のこと、忘れないよ」
 チコニールは、ベソをかきながらヌルッとした尻尾で洋一郎之介の手を取りました。握手のようなものです。
「ハニー。君と過ごしたひと時は、バラ色だったさ。ハニーに涙は似合わない。ずっと笑っていておくれ」
 ハメットゴーは最後まで、こまっしゃくれていましたが、今となっては苛立ちも失せ、恋愛シミュレーションにも1キャラくらいは、こんな奴がいるよな……というくらいの気持ちに変わっていました。

 そして、三匹は座布団をゲートにして、またしてもムムム……と光の奥に消えていきました。
 不思議なことに、真っ白なカードが9枚、座布団の上に並んでいました。さらに、捨て場にあったカードが「またね」と読めるように、上手いぐあいに散らばっていました。

 台所からは、美味しそうなシチューの匂いがしましたが、今日だけは少し寂しく感じた洋一郎之介でした。
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妖精大百科フェアリー・マンダーラ84(チャキオ@キンカン)

2012-05-29 01:25:42 | 妖精大百科フェアリー・マンダーラ
 84匹目「チコニール」

「ぎゃひーっ!! もういい加減にしてよっ! お前も、キモいよ!!」
 洋一郎之介は、現れたクリーチャーに怒鳴りつけます。
「オイラがキモいだなんて、失礼しちゃうな!」
 その謎の生命体は、予想以上に可愛い口調でした。頭がチーターなので、一瞬だと騙されそうになります。
 しかし、全体像を見ると腹立たしさも倍でした。だって、頭以下がニョロニョロでしたから……。
「オイラ、チコニールってんだ。呼び出してくれてありがとな!」
 チコニールは、ウフフと笑いました。ちょっと可愛い、確かにちょっと可愛いのですが、ウネウネした体が目に入ると、無性に罵倒したくなります。
「おめえ、何しにこんなトコにやってきたんだよ! 俺は、おめえみてえなキモい奴は、お断りなんだよ!」
「バカヤロウ!」
 洋一郎之介は腹に、ヌメッとした感触の頭突きを食らいました。そうです、オクパンハの頭突きでした。
「チコニールが君に何をしたってんだ! コイツは……君とカードゲームをしにやってきたってのに……」
「え!?」
 チコニールは、クスンクスンと鼻をすすって泣いていました。洋一郎之介の心にも罪悪感というものは少なからずあります。
「チコニール……。ゴメ……」
 しかし、その少ない罪悪感では拭いきれないチコニールの気持ち悪さに、謝る気は失せました。
「まあさあ、そう気を落とすなよ、チコニール。せっかくカードゲームをしにきたんなら、いっちょやってみようぜ!」
 洋一郎之介は、チコニールの体部分には触れないように近寄り、モフモフの頭を撫でました。オクパンハの頭だけは撫でる気にはなりませんでしたが。
「うん! やろうやろう!」
 チコニールは、嬉しそうに笑いました。とても可愛いのです。顔だけは。
 チコニールも、どこかから勝手に座布団を持ってきて、その上にトグロを巻いて座りました。
 そして、オクパンハが配ったカードを、チコニールは上手に口を使って揃えています。
「さあ! ゲームの始まりだで!」
 チコニールは変な言葉を使いました。こんな口調の奴になら勝てる! そう、洋一郎之介はほくそ笑みましたが、蓋を開けてみれば、オクパンハもチコニールも次々と簡単そうにクリーチャーを作り上げ、勝負をガンガン挑んできました。
 案の定、洋一郎之介は、いっこうにクリーチャーを作り上げることができません。防御もできない始末。またしても、ぶちぎれます。
「なんだよ! お前ら! グルかよ! 陰謀かよ! もうやめやめ!! はい、おしまい!」
 拗ねる洋一郎之介に、オクパンハもチコニールもあらら……という渋い表情です。その実、オクパンハの表情は余り変わっていませんが……。
 そして、またしてもオクパンハが洋一郎之介のカードをのぞき込みます。そして、
「ああ、ほら! ちゃんと揃ってるじゃないか! こんな良いカードが。これと、これと、これを場に出してみなよ。僕たち勝てないぜぇ~」
 言われるがままに、洋一郎之介は、場にカードを出します。
 それは、頭がシュモクザメ、体はチーター、お尻は鳥?のカードでした。
 そして、またしても座布団が光り、ムムム……と何かが現れたのです。
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マシュマロ☆ラブファイターしょうぎ

2012-05-27 20:33:35 | オリジナルグッズ
なんと!
あの「マシュマロ☆ラブファイター」がしょうぎになったとな!
ひやああーー!!

それでは早速見ていきましょう!
イラストはご存じ、ルチャ先生です!
どうぞ!


不破ふわり(ふわ・ふわり)
河合井中学の1年生。伊香須カゲキ君に夢中。
意気地がない。


ふわふわラブファイター・マシュマロン
トキメキカロリーが満タンになったふわりが乙女チック変化した姿。
メルヘンリンチ博士が送り込んでくるラブファントムを粉砕する力を持つ。


伊香須カゲキ(いかす・かげき)
ふわりの想い人。超イケメン男子。


ファーファ
ソフトタッチ星の革命運動家の娘。ふわりにマシュマロスーツを授ける。
トランペットが得意。


金剛丸華麗(こんごうまる・かれい)
ふわりの恋のライバル。
いつもクリームコロネのような髪型の少女と、クロワッサンのような髪型の少女を引き連れている。



これがしょうぎ盤だーー!
小松太陽(こまつ・たいよう)先生
国語教師で、ふわりの担任。
ホットパンツを好んで穿く。



スーパークールなゲームでヒートしようぜ!

ルールはどうぶつしょうぎと同じです。



盤は折り畳めるよ。
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妖精大百科フェアリー・マンダーラ83(チャキオ@キンカン)

2012-05-25 01:47:14 | 妖精大百科フェアリー・マンダーラ
 83匹目「オクパンハ」

 洋一郎之介は、今日も学校も行かずに、お婆ちゃんから買ってもらった謎のカードゲームを一人でプレイしていました。
「これでコンボだ! くらえぃ!」
 ビシッと場に捨てたカードは、動物の頭?と思われる不思議なものでした。

 それは巷では「クリーチャーズ」と呼ばれる、ちょっと変わり者が好んで遊びそうな楽しいカードゲームで、頭、胴、足の三枚のカードを組み合わせて珍妙な怪物を作ります。そして、出来上がったソイツを使って他のプレーヤーに勝負を挑み、他のプレーヤーは手持ちのカードの中からどうにか怪物を作り上げて防御します。誰もが防御できなければ、その怪物がナンバー1という、なかなか単純でありながら面白いゲームでした。

 しかし、洋一郎之介はルールを読まずに遊んでいたので、やり方が分かりません。適当に見よう見まねのカードバトル風に遊んでいたのです。
「はあ……。一人で遊んだって、何も面白くねえや。ババアの奴、なんでまた、こんなもん買ってきやがったんだよ。ちきしょう!」
 すっかり飽きてしまった洋一郎之介が、手持ちのカードをポイッと投げ散らかした時です。
 謎のカードの頭、胴、足が見事に並びました。すると、どうでしょう。
 カードの捨て場として用意していた座布団を魔界のゲートのようにして、何かがムムム……と現れたのです。

 頭はタコ、胴は獣、足は魚。あまりの気持ち悪さに、洋一郎之介は目を剥きました。
「ぎゃひーっ! なんだお前はーっ!」
「僕かい? 僕の名前はオクパンハってんだ。よろしくな!」
 オクパンハと自分を言い放った、その謎の生命体は小粋にウインクしました。よけいに気持ち悪く見えました。
 オクパンハは、何もしていないのに、ピチピチと体から奇妙な音をたてます。それも、ますます洋一郎之介をビビらすのでした。

「君さあ、このゲームの遊び方、間違ってるぜ。こんなんじゃ、僕たち出来上がらないよ」
 そう言ってオクパンハは、上手に両足でカードを切りました。カードの捨て場にしている座布団とは別のクッションを持ってきて、そこに腰を下ろします。すると、オクパンハの尾ひれが微妙に曲がってしまいました。洋一郎之介は気にしましたが、当の本人は全く気にするそぶりもなく、パッパッと手裏剣のようにカードを配りました。
「いいかい? こうやって、こうやって、こういう風に遊ぶのさ。どうだい? 分かったかい?」
 オクパンハは、バカでも分かるほど上手に洋一郎之介に説明しましたが、彼は分からないを表現するように顔の全パーツを3にしました。
 それを見て、まさにトホホ……という表情になったオクパンハ。とはいえ、その実、表情はあまり変わっていなく、終始憎たらしいほど間抜けな顔でした。

「とにかく、一度やってみれば分かるよ。さあ、ゲームのはじまりだ!」
 オクパンハは、どんどん洋一郎之介相手に自作のクリーチャー達を揃えて勝負を挑んできます。
「ちょっと、ちょっともう! もう少し手加減してくれよな! 俺は初めてやるんだぞ! こういうの!」
 すると、オクパンハはニヤリと笑いました。
「じゃあさ、例えばね、僕がこれとこれとこれでクリーチャーを作って君に勝負をかける。そしたら、君は……」
 言いながら、堂々とオクパンハは洋一郎之介のカードをのぞき込みました。そして、
「これと、これと、これで防御してごらんよ! ほら、出来上がってるじゃないか!」
「ホントだ! できてる! いざ、勝負!」
 洋一郎之介がオクパンハに言われるままに、捨て場にカードを揃えて出します。
 すると、どうでしょう。
 頭がチーター、胴が蛇、足が魚の気持ち悪い生き物が、またしてもムムム……と現れたのでした。
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妖精大百科フェアリー・マンダーラ82(チャキオ)

2012-05-17 01:41:43 | 妖精大百科フェアリー・マンダーラ
 82匹目「煙突掃除をしてくれる妖精 四四茶男(ししちゃお)」

 洋一郎之介は、今日も借りてきたDVDで子供のための名作劇場をシャカリキで見ていました。もちろん夏休みでも休日でもありません。その理由はと言いますと、お小遣いを浮かすために1週間レンタルにせず、1泊2日で5本もレンタルしてしまったからです。
 まるでノルマのようになってしまった名作劇場を頭に叩きつけていると、徐々に脳内がボーッとなってきました。目がロンパってることに気付いていません。昔のアニメなら、一人くらいはそんなキャラクターがいたものです。
 それはさておき、視界がグルグルとしてきた洋一郎之介は、アニメの中の煙突に吸い込まれてしまいました。(多分、そんな気になっただけですが……)

 真っ暗な中。
「おい! おい!」
 洋一郎之介を呼ぶ声がします。
「ぎゃひー! お助けあれ~」
 洋一郎之介は、お化けにはめっぽう弱かったので、暗い中の声と言ったら、もはやソレにしか思えなかったのです。
「お助けってさぁ、こっちが助けてもらいたいもんだね、まったく」
 その声は、思った以上に若々しく、子供のようでした。
 暗闇に目が慣れてきた洋一郎之介は、初めてその声の主を見ると、口元にマスクを着けて、掃除用具を手にした薄汚い子供がそこにいました。見るからに貧相で、弱々しく、これなら勝てる……そう思った洋一郎之介は、途端に強気に出ます。
「助けてって、何から助けて欲しいんだい? 俺が手を貸せることは何かあるかな? どれ、何でも言ってごらんよ」
 上から目線の洋一郎之介の問いかけに、少しムッとしたその少年は、ぶっきらぼうに答えました。
「労働……労働……。口を開けば、働け働けと。上の奴らは、オイラ達から搾取するだけ搾取して、何も与えてはくれないのさ」
 急に難しい話になり、洋一郎之介の目は3に、口元も何故か3になってしまいました。意味不明を顔で表す洋一郎之介に、その子供も唖然としました。
「お前……。もしかして、働いていないのか? 裕福な坊ちゃんなのかい?」
「働いてはいないけど、とりとめて裕福ではないね」
 洋一郎之介は、自分の家を想い浮かべ、きっぱりと言い切りました。
「裕福でもないのに働かないなんて、アンタすげえな」
 その子供は、急に尊敬のまなざしを見せました。気を良くした洋一郎之介は、誇らしげに言います。
「俺、深川洋一郎之介ってんだ。なんていうか、人生のモットーは“働いたら負け”だよ」
「“働いたら負け”か……。すごい思想だな。けど……なんか深いよ。僕は煙突掃除屋の四四茶男(ししちゃお)。煙突掃除だなんて、完全に負けてるよな……」
 四四茶男は、肩を落として切なく笑いました。顔に付いた煤が、哀愁を物語っています。
「おいおい、暗くなるなよ。働くのをやめたらいいことじゃないか」
 そう言って洋一郎之介は、能天気に四四茶男の肩をバシッと叩きました。
「そんなわけにはいかないのさ……。働かなきゃ食えないんだよ。家主のヤツは、働かねえヤツには、メシを食わせてくれねえんだ。それだって、満足じゃねえやい」
「そんな家、逃げちゃえばいいじゃん!」
「そういうけどよ、逃げたって同じことだろ? それに俺は契約の元にここにいるわけで……。故郷の両親や、妹、弟達が俺の金で暮らしてるわけだし……」
「え? 親? 働いてないの?」
 そう言うと、四四茶男は、カッとなり声を荒げました。
「働いているさ! 働いて……働いて……それでも俺達を育てるのに充分の金がないのさ。だから、俺がこうして……ここで……」
 四四茶男は、ホロリと涙を落としました。慌てて拭うと、手が煤だらけだったので、顔はより真っ黒になりました。
「なんか……色々と大変なんだな……」
 二人は、煙突の中でしーんとしました。しかし、四四茶男がポツリと呟きます。
「はたらいたら……負け……か……」
「そうだよ! 負けだよ!」
 洋一郎之介は意味なく励まします。
「よし、そうだな! おい、ちょっと来てみろよ!」
 四四茶男は、洋一郎之介を誘って、さっそうと煙突を登り始めました。洋一郎之介は、ビクビクと付いていきます。
 煙突を抜けると、美しい街並みが一気に視界に飛び込んできました。
「見ろよ! この景色! 俺は時々、働くのをやめて、この景色を眺めてんだ。街並みを見下ろすんだよ。一番高い場所でね」
 洋一郎之介の心でも、人並みに感動というものは得られるのです。言葉を失うほどの美しい景観に、思わず涙ぐみます。
「すごいや。心のブルースカイって感じだね。自由に飛びたくなるよ」
 洋一郎之介と四四茶男は、顔を見合わせてニッコリと笑いました。

 その時です。シューッという怪しい音が下の方から聞こえてきます。
「やばい! ボイラーの故障だ! 蒸気が噴き出しっ……」
 四四茶男の声と共に、下から駆けあがってきた熱風が洋一郎之介のすぐそばまで。
「あぁ……あつーいっ!」
 ドオオーーーーン
 爆風と共に、洋一郎之介は空中に高く吹き飛ばされました。見上げても見下ろしてもブルースカイの中、微かに見えた四四茶男の手を必死で掴むと……。
 そこは、いつもの洋一郎之介の部屋。ベッドの上でした。
「四四茶男……」
 洋一郎之介は、なぜか真っ黒になっていた自分の右手をじっと見つめました。
「はたらいたら……負け……だよ。四四茶男……」
 洋一郎之介は、力強く拳を握り、胸の前へと持っていきました。それは、どこかで見た誓いのポーズでした。
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マシュマロ☆ラブファイター 第六話(チャキオ)

2012-05-08 03:11:24 | マシュマロ☆ラブファイター
 第六話 「恋愛は爆発だ!」

 今日の不破ふわり(12)は、校庭の片隅で図工の時間の課題である写生にいそしんでいた。しかし、画用紙に描かれているのは、脳内のカゲキ君ばかりだった。
 覗き込んでは呆れるカッチン。
「もう、ふわり~。あんた、またカゲキ君の似顔絵になってるよ(あんま似てないけど)」
 ふわりはハッとする。
「いっけなーい。アタシったら、すぐこれだ」
 そう言って、ペロリと舌を出す。そんなふわりに、更に呆れ顔のカッチン。
「今日までに色塗りしなきゃいけないんだよ。分かってるの? ふわり」
「分かってるよぉ~。この場所がいけないんだよ。つまんないもん!」
「私、今更場所変えないからね。ここが嫌なら、ふわりが一人で探してきてよ」
「カッチンのケチ~。どうせカッチンだって、色塗りまで進んでないんでしょひーーーーっ!!!!」
 ふわりは、カッチンの画板を見て目を剥いた。彼女は既に色塗りもほとんど終わらせていたのだ。
「ずるい! カッチン! いつの間に! 私……もっと良い場所を探すもん! すぐに終わらせてやるんだからぁーっ!」
 そう言うや否や、ふわりは脱兎のごとく駆け出した。

 校舎の裏。とりとめて何も無い場所を選ぶふわり。
「ここを写生しよっと」
 ずぼらなふわりは、校舎の壁に向かって座る。
「壁を描けば、すぐに終わるもんね。きっと間に合うよ。見てろよ、カッチン!」
 ふわりが、いざ筆を手にすると、片隅からヒソヒソした声が聞こえた。気になったふわりが聞く耳をたてる。
「……好きです……。付き合ってください……」
 なぬ~! 12歳で付き合うだとぉ! まだ早いっ!
 と、いきり立つふわりだったが、もちろんそれは口には出さなかった。
「……でも……俺……君のこと、何も知らないし……」
 相手の男の子の声にピクリと反応するふわり。ま……まさか……。
 白目を剥きながら、そっと覗くと、そこにはまさにカゲキ君が、知らない女(ふわりも同じクラスだが、カゲキ君に夢中な為、目に入っていないのだ)から告白されているではないか!
「ちょっと待ったーーーーっ!」
 とは、言いだせないふわりは、一人立ち尽くす。
「どどど……どうしよう……。どうしたらいいの? 神様! ヘルプ!」
 その時。例のブツッという脳内ジャックの音が。そして、
『ふわり! 緊急指令! ファーファです』
「またあ!? 私、今それどころじゃないの! 一大事なのよ!」
『それはともかく、またあなたの傍にラブファントムが転送されているの。よろしく頼むわね』
「んもう! そんなこと言ったって、こんな傷心の状態じゃラブエナジーなんて出るわけ無いじゃない! どうすりゃいいのよ!」
 その時だった。
「俺……付き合うとかよく分かんねえから、ゴメンな」
 というカゲキ君の声。泣きながら走り去る少女。勝ち誇るふわり。
「カカカ……カゲキ君!! なんてダンディーなの! 一匹狼を貫くその精神!! 孤高の虎。クロコダイルダンディー! もうハンパないっつーの!!」
 ふわりがカゲキ君にドキュンとなったその時、トキメキカロリーが満タンとなった。と同時に、雲の隙間から謎の衛星が覗く。そして、怪しげな衛星からキラキラとしたまるで宝石のような光が降り注いだかと思うと、ふわりを包み込む! すると、ふわりの体がパーンと弾けて……。
「オトメスオトメスきゅんるるる~ん! ふわふわラブファイター、マシュマロン! 乙女チック変化!」
 ふわりの乙女チック変化が完了したと同時に、別の衛星からどす黒いビームが流れ落ちてきた。
 それこそ、メルヘンリンチ博士が送り込んできた謎の生命体。そうラブファントムだったのだ! カゲキ君が危ない! ふわりは咄嗟に動き出していた。
「カゲキ君に告っていいのは、クロコダイルと私だけよーっ!」
 ふわりの体はミエナイチカラによって動かされ、指で空中にハートマークを描いていた。そこから色とりどりの絵具を散りばめたようなハートが飛び出していき、ラブファントムにビチャビチャと振りかかる。そのペイントを受けたラブファントムは、ドロドロに溶けていった。

 カゲキ君が近づいてくる。
「ハッ! どうしよう、ふわり! これはまさに告白タイムよ! 名高い画家達が、私とカゲキ君をモデルに不変の愛を描いて応援しているもの! ファイト!」
 と、自分を鼓舞してみたものの、
「シャイでセンチな私には告白なんてとても無理!」
と、その場を一目散に逃げ出す始末。

「こんな洗いそびれてガビガビになった筆先のようなハートじゃダメよね……」
 貯水槽に映る自分に溜め息。その時、いつもの自分の姿じゃないことにやっと気付いたふわり。
「キャッ! こんな格好じゃ、告白どころか課題の提出もできないじゃない!」
 すると、水面がもや~と揺れて、ファーファの姿が映し出される。
『ふわり。御苦労さま。今日もパブロ・ディエーゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピーン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソの絵のように鮮やかな勝利だったわね! その真っ白なキャンバスにあなたはどんな未来を描くのかしら?』
 そう言うとファーファは、お得意のラッパを持ち出し、ゴッドファーザーの愛のテーマをかき鳴らして、消えた。そこにはいつものふわりの姿が。
「私の白いキャンバスに描かれるのは、きっとカゲキ君との幸せな老後ね! 今に見てろよぉ!」
 そしてふわりは、校舎の壁を描いていたはずの画用紙に、意気揚々とカゲキ君の似顔絵を描き始めた。
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妖精大百科フェアリー・マンダーラ81(チャキオ)

2012-01-22 03:56:04 | 妖精大百科フェアリー・マンダーラ
 81匹目「話し出したら止まらない妖精 よしこさん」

 今日も洋一郎之介は昼前にやっとこさ起きて、髪型が個性的な女性のトーク番組に夢中になっていました。
テツコの相手に有無も言わせないほどの司会進行ぶりに感激していました。
「すごいなあ……テツコ。俺もトーク番組の司会者になって、次から次へと襲いくる刺客をコテンパにしたいなぁ……」
 洋一郎之介は早速リビングのソファに座って、トーク番組のように自分でテーマソングを歌ってみました。
「ルールル……ルルル……」
 すると、洋一郎之介の対のソファに見慣れないオバサンが突然現れたのです。
「ギャアッ! あ……あんた、誰?」
「あたし? あたしの名前はねえ……。あたしの名前はよしこってんだよ。ええ、あのサリーちゃんの可愛くない友達と同じね。意地悪ばあさんのお嫁さんもよしこだったわね。最近はよしこだなんて、オーソドックスな名前はなかなか聞かないけど、良い名前なのよぉ。なんたって『良子』ですからね。良い子ってことよ。すごいわよね。褒めすぎよ……」
 よしこは、洋一郎之介の質問の十倍ほどある返しをしてきました。洋一郎之介もタジタジです。しかし、唐突に現れる存在に対しては、手慣れたもんです。すぐに聞き返します。
「アンタ……もしかして妖精?」
 すると、よしこさんはカッと目を見開きました。
「ええ……ええ……そうですよ。あたしは妖精。何の妖精か分かるかしら? そうよ、当ててごらんなさい! ハイ。ブブーッ。時間切れ! 正解は……」
 よしこさんは、洋一郎之介が何も答えていないのに、問題と、そしてあまつさえ答えすら言おうとしました。
「ちょっと! ちょっと! おばさん! 喋り過ぎだよ! 俺にトークの主導権を握らせろよ!」
 洋一郎之介の剣幕に、よしこさんは一瞬驚いた表情を見せましたが、ニッコリと微笑んで、口を開きます。
「ああ……。はいはい。どうぞ、お坊ちゃん。お好きなだけお喋りなさいな。あたしはね、聞き役だってできるのよ。知ってる? 聞き役ってのはね、一番好かれるのよ。そりゃ、そうじゃない。皆、話したい盛りなんですから。あたしは聞き役も上手にできるの。そうじゃなきゃ、商売やってらんないわよ。ねえ? そう思うでしょ?」
「あ……はい……」
「トークってのは、聞き役あってのものですからね。タモさんも、ホラ、聞き上手じゃない? 毎日、毎日よく分からないタレント相手にすごいわよねえ。感心しちゃうわぁ……。おばさんも一度、あの番組に出てみたいわよ~。あ、そうそう。坊や、知ってる?」
「はい?」
「あの番組、一度だけ一般人に友達の輪が繋がっちゃったことがあるんですって。それを考えるとあたしもいずれ……」
 おばさん(よしこさん)は、怒濤のごとく話まくります。洋一郎之介は困り果ててしまいました。このうるさいおばさんを帰すには、いったい何をすればいいのか……。
 洋一郎之介が頭を悩ませている間も、よしこさんはエンドレス・トーキングです。トーク終了の合図とは、いったい何か……。その時、洋一郎之介の頭に一つの滅びの呪文が浮かびました。
 これさえ言えば、全ての世界は平和になる。ラピタは空に帰るんだ! 洋一郎之介はゆっくりと口を開きました。
「明日もまた見てくれるかな?」
「いーともー!」
 その言葉と共に、おばさん妖精はドロンと消え去りました。
 洋一郎之介の予想通りの展開になりましたが、一抹の不安を覚えます。明日、また来るのではないか……と。恐れをなした洋一郎之介は、家じゅうのグラサンを叩き割りました。帰って来たお母さんにこっぴどく叱られましたが、洋一郎之介自身は、安堵の表情だったと言います。
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妖精大百科フェアリー・マンダーラ 80 (チャキオ)

2012-01-09 03:39:59 | 妖精大百科フェアリー・マンダーラ
 80匹目「はんなりしてくる妖精 どすゑ」

 洋一郎之介は、今日もお昼から家でテレビを見ていました。ワイドショーの特集は、『古都、京都を巡るロマンティック調査隊』というものでした。
 見たこともない美しい街並み。そして舞妓はん。洋一郎之介の目には、全てが夢世界に映りました。
「ああ~。俺も舞妓はんと、ドスエドスエとか言い合ってみたいな~」
 洋一郎之介が、儚い願いを頭に描いていた、その時。さっきテレビで見たような白塗りの女性が背後に立っていたのです。
「ぎゃあぁーーーー!!」
 洋一郎之介は、ソレを幽霊だと見間違えました。
「ななな……南無阿弥陀~! オーマイゴット! 心頭滅却! ウショイダキガンアイジャハレーオ!」
 思いつく限りの除霊を試みるも、ソレは消えないどころか、洋一郎之介にクネクネと近づいてきます。
「ぎゃあっ! 殺さないで~!」
「殺しなんてしまへんえ」
 白塗りのソレは、穏やかな口調で語りかけます。恐る恐る目を開けると、そこにはしなやかな女性……そうです。テレビで見たままの存在。まさに舞妓はんが立っていたのです。
「わあお! ままま……舞子はーーーーん!!!」
 洋一郎之介は嬉しさのあまり、思い余って飛びつこうとしました。しかしソレは、はんなりと避けました。洋一郎之介はソファに激突してしまいました。
「いててて……。何すんだよ~!」
「ほほほ……。いやどすえ。わては、どすゑどす。はんなりする妖精なんどすえ」
「妖精……?」
 結局それかよ……と、洋一郎之介はガッカリしました。しかし、見た目は舞妓はんのどすゑには興味があります。
「ねえねえ、どすゑ! その頭、どうなってんの? ちょっと見せて!」
「ほほほ……。いやどすえ」
 またどすゑに、はんなりとかわされて、勢い余った洋一郎之介は、襖に激突しました。さすがの洋一郎之介も徐々にイライラしてきました。
「このアマーッ! 着物に触らせろ~!」
「おほほ……。堪忍しておくれやす」
 またしても、どすゑにはんなりとかわされて、テーブルに体当たりをしました。
 その後も、洋一郎之介が勢いをつければつけるほど、どすゑにはんなりとかわされてしまうというやり取りを繰り返しました。
 しかし、ついに洋一郎之介はどすゑを捕えることができました。激闘の末に乱れてしまったどすゑの着物の帯を、キャッチしたのです。
「わはは! これでもう、お前はお終いだ! 堪忍しやがれ! そーれ!」
 洋一郎之介は、テレビの時代劇を見て、お代官様スキルを身につけていました。勢いよく帯を引きます。
「あーーーーれーーーー!」
 と、どすゑ。
 どすゑは帯と共にグルグル回転し始めました。勢いが増して、高速スピンになっています。まさにフィギュアスケーターのソレです。
 徐々に竜巻のように細く長くなり、いずれ帯だけがハラリと落ちると、どすゑの姿は跡かたもなく消えていました。
「どすゑ……。【はんなり】って……どういうことなの……?」
 その問いも虚しく、後に残ったのは、どすゑの回転に巻き込まれムチャクチャになった家と、洋一郎之介の手に残る帯だけでした。
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ポエム『非常時以外リンメイ厳禁』

2011-08-22 00:03:52 | 短編
ポエム『非常時以外リンメイ厳禁』(合作)

エマージェンシー! ほらほらアイツが迫ってきたよ
非情なアイツが扉をあけて こちらの世界へやってくる!
STOP! 止まらないと撃つぞ! なんて言えたらなあ
いつもこう すぐピンチ 誰か助けて! HELP ME!

クレイジー! だめだめあの人普通じゃないの
こちらの常識通じない 言葉だって聞いちゃいないよ
Please! こんな時こそ アイツの出番さ
さあ行け リンメイ 私を助けろ! GOING ON!

スマイリー! ニヤニヤ笑いがはじまっちゃった
非常時だけどアイツに会える! 言えない全てをさらけ出す!
COME ON! 壁に手をつけ! さあショータイムさ
これを待ってた さすがだね 私もアイツも! BIG BANG!


(アヴダビ、リンメイ、チャキオ、アンディ)
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妖精大百科フェアリー・マンダーラ79(チャキオ)

2011-04-16 02:12:41 | 妖精大百科フェアリー・マンダーラ
 79匹目「消費カロリーを気にする精 ドス子」

 今日も洋一郎之介は、遅めの朝食をとりに、やっと起きてきました。もちろん休日ではありません。そんなことはお構いなしの洋一郎之介。
 しかし、ヨタヨタと眠い目を擦りキッチンまできて、唖然としました。いつもはお母さんが、簡単な朝食セットを置いてくれているのですが、今日は何もないのです。
「ど……どういうことだっ!」
 すっかり目覚めた洋一郎之介は、慌てて探しまわりました。台所だけではなく、全ての場所(主にお母さんの部屋)をしらみつぶしに。
 すると、お母さんの部屋に、ヒントが落とされていました。
『食べた分だけ動けば痩せる』という本が、これみよがしに落ちていたのです。しかも、読んでましたと言わんばかりに、ページが開きっぱなしでした。
「これ……か……。ヤツの暗号は……」
 洋一郎之介は、まるで自分が探偵にでもなったかのように、そのページを読み込みました。
『朝、ちょっとだけ早く起きて、ひと駅歩こう』
 お母さんは、その記事を忠実に実行すべく、ご飯を作るのも忘れて、出て行ってしまったのです。
 洋一郎之介は、そんな母の行動を、すかさずに読み取りました。食べ物に関しての思考は実によく冴えています。
「バカヤロウが! 人は食わなきゃ生きていけねえんだよ! 食わなきゃ働かねえんだよ! くそっ!」
 自分を棚に上げ、とんでもない暴言です。

 洋一郎之介が、腹立たしさのあまり、地団駄を踏んでいると、突然その振動が激しくなりました。
 ズダン……ズダン……
 かなり大きめの音です。洋一郎之介がハッとして振り返ると、そこには胸元にデジタル表示板を付けた相撲取りがいました。
「ぎゃぁ! おおお……お相撲さんだぁ!」
 洋一郎之介は、後ずさりをしつつも、そっと色紙を手に取りました。そして、朱肉も。あわよくば手形を取ろうとしていたのでした。
 しかし、その相撲取りは、手形どころか、一心不乱に四股を踏んでいて、洋一郎之介には目もくれません。
 痺れを切らした洋一郎之介は、その辺にあった座布団を投げてみました。すると、どうでしょう。その相撲取りは「ああ……いやぁーーーーっ!」と、思いのほか可愛らしい声を上げました。
 洋一郎之介は、頭を捻りました。相撲取りって、もっと皺枯れた声で、何を言ってんのか分からないくらい息を吐き出しながら喋るものなのに……と、テレビ中継時のそれとオーバーラップさせては、悩んでしまうのでした。

「あなた、急に何するのよ!」
 そう言ったのは相撲取りです。予想外のオネエ口調に、ますます洋一郎之介は混乱しました。
「あの……あなたは……?」
「四股踏み、消費カロリー45kcal。ざっとこんなものかしらね」
 洋一郎之介の問いかけは完全に無視でした。軽く癇癪持ちの洋一郎之介ですので、もう一度座布団を投げてみました。
 すると、また「ああーーーーっ! やめてぇーーーーっ!」と必要以上に大声を上げる相撲取り。
「大声での発声。消費カロリー3kcal」
 そして、何かするたびに、謎の暗号をボソボソ呟いています。不思議なことに胸元の表示板の数字が、少しずつカウントダウンされているのです。
「だから、アンタ、いったい何なんさ! 相撲取りじゃないの?」
 すると、相撲取りはキッと洋一郎之介を睨みつけました。
「アンタ! 失礼しちゃう! アタシはドス子。消費カロリーを気にする花も恥じらう乙女妖精よ!」
 そう言って、ドス子は地団駄なのか、四股なのか分からない振動を辺りに振りまきました。
「ああ、ちょっと! やめてよ! 体に響くよ」
 洋一郎之介は、ドス子の激しい攻撃に足元がフラつきます。
「ケッ。そんな細っこい体してっから、そうなるんだ! アンタみたいなヒョロヒョロ野郎にアタシの苦労が分かるもんかい!」
 そう言って、やさぐれたように、ドス子は胡坐をかいて、どっかりと座りました。
「なんでそんなに消費カロリーなんて気にするのさ。人間は、食べなきゃ生きていけないんだぜ!」
「そんなセリフは太ってから言いな! アタシたちはねえ、いつ太ったか分からないのに、気付いたら痩せろ痩せろって言われてんのさ。いいかい? この地獄が分かるかい?」
「よく……分からない……」
 確かに洋一郎之介は、生まれてこのかた太ったためしがありません。こんなに毎日をグウタラして過ごしているのに……です。
「ケーーッ! こういうクソ野郎共のせいでアタシらは、酷い目にあってんだ。痩せる努力もしないヤツが痩せてて、必死に調整してるアタイらが太る。そんなクソったれの世の中なんだよ! 今は!」
「あ……ああ……はい……」
「痩せてたら何だってんだい! デブの国があったらなあ、痩せてる方が恥ずかしいんだよ!」
「あ、まあ……そうですね……」
「痩せろ痩せろって、全員が全員痩せたら、デブって体脂肪率何%からかい? BMI値がいくつになったら、デブになんのかい? ええ?」
「よく……分かりません……」
「全員が痩せてたら、誰がキャッチャーやるんだ!? 誰がおっちょこちょいキャラをやるんだ? 誰がカレーが好きな力自慢をやるんだよ! なあ!?」
 ドス子の口調は荒々しくなっていきます。洋一郎之介は、強い口調にすこぶる弱いので、もう恐ろしくて仕方ありません。相槌も打てなくなっていました。しかし、ドス子は容赦ありません。
「逆に痩せてる奴らが全員死ねばいいのになあ! お前を殺せば何カロリー消費するかのう? ああん?」
 徐々にヒートアップしていくドス子。漲るエネルギーが、カロリーとなって消費されていきます。もはや洋一郎之介は、ガタガタと震え、目もひん剥いてしまっています。
 その時、チーンという謎の音が辺りに響きました。ついに、ドス子の胸についているデジタルが0になりました。
「おっしゃ! 設定値クリア! 今日のトレ終了~」
 ドス子はパチーンと勢いよく手を叩きました。まるで、相撲取りの気合注入のように……。そして、
「焼き肉食いに行ってきまーす!」
 と、心の底から幸せそうな声を上げて、去って行きました。

 洋一郎之介は、その後ろ姿を見送っては、太ってはいけないな……と、心に誓いました。
 食べる気になれなくなった洋一郎之介は、動く気にもならないので、そのまま布団に入り、一日中ダラダラしていたそうな。
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妖精大百科フェアリー・マンダーラ78 (チャキオ)

2011-03-21 03:19:02 | 妖精大百科フェアリー・マンダーラ
 78匹目「薄着の精 マーキュリー、再び」

「ああ……もう寒い寒い……。だから冬って嫌なんだ……」
 洋一郎之介は、根性無しなので極度の寒がりです。今も、ちょっと肌寒い程度なのに、電気毛布を体に巻き、電気ストーブをつけ、こたつに入っていました。
 その時です。イリュージョンショーのように各部屋の電気がパチ、パチ、と消えていきました。更には、ストーブもこたつも順々に消えていくのです。
「わわっ!? 何? 怪奇現象? こわいーっ!」
 洋一郎之介が泣き叫ぶと、こたつの上をステージのようにして、バッチリとポーズを決めて立っている何者かが現れていました。ガッチリとした体の男性です。不思議な模様が描かれたジャケットを肌の上から直接羽織っています。ピッタリとした白いズボンに、キュッと上がったヒップライン。厚い胸板に生い茂る胸毛。漲る汗。見覚えがあります。そう、薄着の精、マーキュリーです。
「ままま……マーキュリー! 生きていたんだね!」
 洋一郎之介は、手を叩いて喜びました。
「私のラバーボーイ。電気を無駄にしてはいけない。その気になれば、人は自身で発電できるのさ」
「え……? どういうことだい?」
 洋一郎之介が尋ねると同時でした。マーキュリーの全身が、仄白く光りはじめたのです。よく見ると、小刻みに震えているのでした。
「私の愛が放出を待っている。いいかい、ボーイ。愛の力で人は発光、発熱できるのだよ。見ててごらん」
 言うや否や、マーキュリーは弾け飛びました。マーキュリーから溢れ出したエネルギーが、流星となり、次々と空に放たれていきます。
「どどど……どうなってんの!?」
 唐突すぎるマーキュリーの行動に唖然としながらも、洋一郎之介は、ダダをこねて買ってもらった割には一度も使ったことがなかった天体望遠鏡を、慌てて覗きこみました。
「あっ……あれは!」
 飛んで行った星の筋をよく見ると、それぞれに小さなマーキュリーが、まるで魔女っ子のように乗っているではありませんか。分裂したのかな?
 そして、それぞれのマーキュリー達が、星の筋をステージのようにして高らかに歌っているのです。不思議と歌声が洋一郎之介の耳にも届いてきます。宇宙のテレパシーとなっているのです!


    「ラブ&マジック ~愛は永遠の輝き~」

   僕の愛が見えるかい? そうだ見えるだろう 目を凝らさなくたって
   君にその準備ができていれば いつだって僕は光を放てるのさ
   さあ受け入れておくれ 他に何もいらないよ 
   僕は君が望む分しか与えられないのだから

   おお、僕の恋人たち 今は目を閉じていたとしても
   瞼の上からでも光を照らすよ
   おお、僕の恋人たち 今は暗闇に身を置いていても
   光の眩しさを忘れないように
   
   僕の愛が聞こえるかい? そうだ分かるだろう 耳を澄まさなくたって
   ノイズだらけの繁華街でも 静寂の森の中でも
   君が聞きたい声だけ 送っているのさ
   僕はそのためなら 魔法も覚えられるんだ
   
   届いておくれ 僕のラブモールスを
   トントンツツー ツーツートン
   愛は光となり 音となるのさ
   そう 君も同じさ イッツマジック


「ああ……俺にも聞こえる……。マーキュリーの力強い歌声。愛の歌が……耳をハンマーで打たれたように響いてくるよ!」
 洋一郎之介は、もう天体望遠鏡を見なくても、マーキュリーの姿が見えます。拳を突き上げてクルッと華麗にターンをしている何人ものマーキュリーの姿が……。
「分かるだろう? ラバーボーイ。この魂が。温かいだろう? 電気がなくたって、人を温めることができるのさ。ボーイの心がけが、どこかの人々の心を温める。それってベリーアメージングだろう?」
「うん。マーキュリー! 本当だね。俺……今、ベリーホットだよ。もう、こんなの着てられないくらい!」
 洋一郎之介は、手始めに厚ぼったい半纏を脱ぎました。
「一枚ずつ剥ぎ取ってごらん。熱くなるのさ! もっともっと! さあ!」
 マーキュリーの方は、いつの間にか上半身ハダカで、ホットパンツに裸足であるにも関わらず、首元にはしっかりと赤いバンダナを巻いているという奇天烈な格好になっていました。
 が、洋一郎之介も負けてはいません。いつ脱いだのでしょう。白ブリーフ一枚で、まるでマーキュリーそのもののように、拳を高らかに突き上げ、クルクルと華麗にターンを決めていたのでした。
「マーキュリー……。温かいよ。愛って温かいんだね」
「ボーイ。それでいい。今は、それで……」
 そう呟いた声が、洋一郎之介に聞こえたマーキュリーの最後の声でした。そのままマーキュリーの乗った星の筋は、いっそう輝きを増して彼方へと飛んで行き、そして見えなくなりました。きっとどこかのラバーボーイを温めているのでしょう。洋一郎之介は、そう思って涙ぐみました。

 あなたが心の底からそれを望めば、いつでもマーキュリーに会えるといいます。耳を澄まさなくても、目を凝らさなくても……。
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マシュマロ☆ラブファイター 第5話(チャキオ)

2011-01-23 02:42:39 | マシュマロ☆ラブファイター
 第五話「少し遅れて来た男」

 不破ふわり(12)は、今日も校庭でサッカーに興じる伊香須カゲキ君をロックオン。熱いまなざしで見つめていたのだが……。今日はギャラリーがいつもに増して多い気がしていた。
「キャーッ! ステキ~!」
 聞こえる黄色い声に、ふわりはキッと睨みつける。
「な……何よお! カゲキ君のステキは、今に始まったことじゃないのにぃ!」
 ふわりは、その場で何度も足を踏みならした。しかし、草木に優しい乙女であるふわりは、雑草も踏まない。見事に避けきっているのだった。だが、命ある物は踏まずとも、命なきものは踏んでしまうタイプのふわり。しっかりと靴の裏には画鋲が刺さっているのだった。
「ふわりったら、何、1人で興奮してんの?」
 ふわりの友人である故知勝子(こちかちこ)、通称カッチンが呆れたように声を掛けてきた。
「カッチン! 見てよ、このギャラリー!」
 鼻息を荒くして、ふわりが叫ぶと、納得したようにカッチンは頷いた。
「ああ~。今、一番人気の影郎先輩がサッカーしてるんだよ」
「え? カゲロウ……先輩?」
 ふわりは、もう一度グラウンドを見た。カゲキ君以外見えないタイプのふわりの目にも、ようやく1人の人物が止まった。
「あの人……確か、転校生だっけ?」
「ふわりって、ホント興味ないことには無頓着だね。水島影郎先輩って言ったら、今、飛ぶ鳥落とす勢いで女子の憧れナンバー1じゃない。超イケメンなうえに帰国子女で語学も堪能。サッカーもプロ並みとか? で、更には休日には恵まれない子供たちに自分の読んできた絵本を届けたり。超良い人みたいだよ。何か文才もあるらしいし……。ステキよねえ……」
 カッチンも、うっとりした表情で先輩を見ていた。
「カッチンも、そんなのにキョーミあるんだね。なんか意外だなあ……」
「意外なのはふわりの方だよ。アンタなんか、すぐにイケメンに飛びつくタイプだと思ってたのに」
「アタシはカゲキ君さえいれば……」
 その時。ふわりの足元にサッカーボールが転がってきた。
「おーい。そのボール、取ってくれないか~?」
「ハッ! あの声は……カゲキ君! 私に……お願いしてる! 私を強く求めてる……。そんな……。ダメよ。まだ早すぎるわよ!」
 ふわりは1人で身をくねらせた。なかなか動かないふわりに痺れを切らし駆け寄ってきたのは、なんと水島影郎先輩だった。
「君、ボールを渡してくれないかな?」
 影郎先輩は、柔らかそうな髪をファサッとして美しく輝く白い歯を見せる。その都度、女子生徒が「キャー」と言っては、倒れていった。
「あ、スミマセン!」
 ふわりが慌てて、ボールを蹴り上げたその時だった。その足をグッと影郎先輩に掴まれてしまった。
「ヒイィッ! やめてください!」
 ふわりは叫ぶ。ギャラリーも叫ぶ。
「君、靴の裏に……画鋲がたくさん刺さっているよ。痛くないのかい?」
 影郎先輩が心配げに、ふわりの靴の裏を見つめていたが、ふわりの目には呆れたように見つめるカゲキ君の姿がニュース速報のように飛び込んできた。
「や……やめてください! 変態! 誰か(主にカゲキ君)……誰か助けてぇっ!」
 その時、ふわりの耳に例の脳内ジャックの声が響く。
『ふわり! 緊急指令! ファーファです!』
「またぁっ! 今はそんな平和な状況じゃないのよぉ!」
『それはさておき、ラブファントムがまた送られてるみたいなの! 今回はタイプの違うラブファントムみたいだから、充分気を付けて! 今、マシュマロスーツを転送したから、あとはお願いね!』
「そんなこと言っても……こんな乙女のピンチに、どうすりゃいいのよぉ!」
 その時だった。
「影郎先輩! 何してんですか~? 早くサッカーしましょうよ!」
「キャッ! カゲキ君……。ヒロインのピンチに合わせて、満を持しての登場ってことなのね! んもう、憎い演出家! 全米を泣かせるヒーローっぷり! ああ、もう、ハンパないっつーの!」
 ふわりがカゲキ君にドキュンとなったその時、トキメキカロリーが満タンとなった。と同時に、雲の隙間から謎の衛星が覗く。そして、怪しげな衛星からキラキラとしたまるで宝石のような光が降り注いだかと思うと、ふわりを包み込む! すると、ふわりの体がパーンと弾けて……。
「オトメスオトメスきゅんるるる~ん! ふわふわラブファイター、マシュマロン! 乙女チック変化!」
 ふわりの乙女チック変化が完了したと同時に、別の衛星からどす黒いビームが流れ落ちてきた。それは何と、水島影郎先輩に注がれていった。
「え……。ま……まさか……」
 すると、唐突にファーファの声が。
『その通り! ご名答よ、ふわり。あなた達が水島影郎先輩だと思ってるその人が、何とメルヘンリンチ博士が作りだした謎の生命体、ラブファントムのサイボーグバージョン、PO+(ピーオープラス)。通称ポ・プラよ。後のことは頼んだわね!』
 水島影郎先輩の影も形もなくなってしまったラブファントムが、ダラダラとカゲキ君に近づいていた。カゲキ君が危ない! ふわりは咄嗟に動き出していた。
「カゲキ君を追っていいのは、2000万円と私だけよーーーーっ!」
 またしても、ふわりの体がミエナイチカラによって動かされ、空中に五芒星を指で描いていた。すると、そこから5つの星が飛び出し、次々とラブファントム目掛けて落ちていった。それをまともに受けたラブファントムは爆発音と共に木っ端微塵に砕け散っていった。
 カゲキ君が近づいてくる。
「ハッ! ふわり。これはまたとない告白のチャンスよ。たくさんの評論家が私たちの紡ぎ出す恋愛小説に5つ星を付けてお祝いしてるもの! ファイト!」
 と、自分を鼓舞してみたものの、「シャイでセンチな私には告白なんてとても無理!」と、その場を一目散に逃げ出す始末。
「こんな気抜けの炭酸飲料みたいなハートじゃダメよね……」
 と、玄関に置いてある卒業生寄贈の鏡に映る自分にため息。その時、いつもの自分の姿じゃないことに、やっと気付いたふわり。
「キャッ。 こんな格好じゃ、告白どころか午後の授業も出れないじゃない」
 すると、鏡の中のふわりがもやもや~となって、そこにはファーファの姿が。
『ふわり! 御苦労さま。今回は手ごわい相手だったけど、ふわりのラブパワーは着実に腕を上げているわ! いつかふわりのお話もナントカ大賞を取れるといいわね!』
 そう言うと、ファーファは例のトランペットで、何かで優勝した時にかかる音楽を吹いてから消えた。鏡にはいつものふわりの姿が映っていた。
「そうね! 私の乙女チック小説で新人ナントカ賞も夢じゃないって気がしてきたぁ! よーし、書いちゃおっかなぁ!」
 そう言うと、ふわりは文房具屋を目掛けて駆け出していった。
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妖精大百科フェアリー・マンダーラ77(チャキオ)

2010-11-28 14:57:06 | 妖精大百科フェアリー・マンダーラ
 77匹目「朝、歌って起こしてくれる妖精 ヌッツォ」

 昨夜のことです。洋一郎之介にステキなサプライズがありました。それは、朝の目覚めが異常に悪い洋一郎之介の為に、お母さんが“タフ&ヘビー絶叫目覚まし時計”をプレゼントしてくれたのです。もう洋一郎之介は嬉しくて堪りません。さっそくウキウキで目覚ましをセットしました。
 明日こそは、時間どおりに起きて、登校時刻に教室に入り、奴ら(洋一郎之介のクラスメイトですね)にひと泡吹かせてやろうと、ほくそ笑んでいたのです。……が。
 案の定、今朝、タフ&ヘビーの絶叫が鳴り響いた途端、ビビって目覚ましを思い切り壁に投げつけ、大破させてしまったのです。
 そして、洋一郎之介は平穏な睡眠時間を取り戻し、ぬくぬくと布団に包まれて、幸せな午前中を送ろうとしていました。しかし、夢かうつつか、どこからともなくテノールの歌声(良い声)が聞こえてきて、至福の二度寝を邪魔してくるのです。

 ライライライララララーーーーー

「うう……。何だよぉ……」
 ラララーーーーラーーーーララララーーーー

 その歌声は、徐々に近づいてきます。洋一郎之介には、何かお侍の軍団が向こうから駆け寄ってきているような気持ちになりました。そうです。浅黄色の段だらの一団です。

 ライライライララララーーーーラララーーラーーラーーラーーララーーーー

 歌声は、いい声なのですが、とても大きく、且つ朗々としています。洋一郎之介はとても大人しく眠ってなんかいられません。
「ああ、もう! うるさいな!」
 ガバァと起き上がると、そこにはイタリア人(?)のような雰囲気の、かなり濃い顔のおじさんが、ポージングも決まって立派に歌っていたのです。顎はもちろんのこと割れています。白い爽やかなシャツは、朝の光のように眩しく輝いています。
「何だお前はーっ!」
 洋一郎之介は、朝一の寝ぼけ眼を、何度も擦りました。
「わたし~は~妖精~~の~~ヌッツォ~~~~。君を~~起こしに~~やってきたぁ~~~~~あ~~~あ~~~~!」
 歌いながら、メロディアスに喋るヌッツォは、さながらミュージカルのようでした。
「お……起こしにくる妖精?」
 洋一郎之介は、戸惑いました。かねてから意味不明の妖精には、数々会ってきましたが、5本の指に入るほど意味不明の妖精がまだいたことに、驚いていたのです。
 ヌッツォは、そんな洋一郎之介にはお構いなしに、今度はハミングを駆使し、緩急をつけます。

 ムーームーームーームムムムーームーームーームーームムムムーームムーー

 もはやヌッツォのショータイムと化した、洋一郎之介のベッドサイド。ヌッツォの歌声を聞いていると、何だか全てがどうでも良くなっていきます。
 タフ&ヘビーの目覚ましを壊してしまったこと……びっくりした時、若干チビってしまったこと……浅黄色の侍たちのこと……源さんが死んだ回だけマトリックスのようだったこと……ヌッツォが何の妖精だったか……ヌッツォがいったい何をしでかしちゃったのか……ヌッツォの存在自体……。
 それらの想いが、ヌッツォの歌声とミックスされていきます。

「いとしき~~~~友は~~~~」

 ……あれ……? 俺には愛しい友っていたっけ? どこにいるんだっけ? ああ、そっか。俺には友達なんて、いないんだったよね。そうだよ、俺の友達は学校になんかいない。そうさ、ここで起きて学校に行かなくったって、俺は、俺には誠の旗に夢を描けば、それで良いんだよ……。

 ヌッツォがフルコーラスを歌いきった頃には、洋一郎之介は、新たな眠りに落ちていました。
 そして、一曲歌い終えたヌッツォの方も、満足げにほほ笑んで、消えて行きました。洋一郎之介が次に目覚めたのは、すっかり夕方。もうヌッツォは起こしに来てくれませんでした。
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マジモ第36話「夢少年」(アヴダビ)

2010-10-30 09:10:38 | マジカル・モッピング
 気が付くとそこは、見たこともない素敵な場所だった。
 キラキラと輝く波の打ち寄せる砂浜。その砂はとても細かくやわらかで、足の裏で、絹のように滑らかに流れてゆく。
 ようこそここへ。
 どこかから、優しい声が聞こえた。
 そうか、ここがパラダイスなんだ。モップは薄ぼんやりと思った。
「ワイら、夢の島に来たんとちゃう?」
 凸凹モヒカンの片割れが叫んでいた。見ると、もう一人のモヒと、アクロンもいた。爺さんの姿は無かった。
 ワイパーとワックスはなんかもうやたらと嬉しそうだった。
「遊ぼうよ!」
「はしゃごうよ!」
 二人できゃっきゃ言いながら駆けまわっている。
 二人を尻目に、モップはイオンを探した。
「どこだいイオンちゃん。無事なのか……」
 そんなモップの手を掴む者があった。アクロンだ。
「寂しそうだね、その瞳。ついておいで!」
 アクロンは強引にモップを引っ張り、凸凹モヒ兄弟に追いついた。四人は手を繋いで、輪になって踊った。
 いつしかモップの心にも温かいものが復活していた。まるで、胸のリンゴが剥けるように……。
 そん平和な気持ちを引き裂くものが。
「な、なんじゃオドレら!?」
 突然、見知らぬ少年達が現れたのだ。少年達はスケボーに乗って、わざと四人のネットワークダンスを邪魔するように、ウロチョロと走り回った。
「邪魔! 邪魔だっつーの!」
 モヒ・ブラザーズが両手を振り回して追っ払おうとしても、スケボー小僧達はニヤニヤするばかりだった。
 その時、アクロンがポツリと言った。
「無駄だよ……。もう、僕らの時代は終わったんだ……」
 何か言い返そうと、モップがアクロンを振り返った時。横合いから、色の黒い少年が乗ったオートレース用のバイクが突っ込んできた。
 モップは空高く跳ね飛ばされた。それから地面に激突した……。

 気が付くとそこは、もとの公園(だっけ?)に戻っていた。
 モップの周りでは、アクロン、ワイパー、ワックスの三人が、地面にへたり込んでメソメソと泣いていた。皆、悪夢にうなされているようだった。
 モップは頭を振って、意識をはっきりさせる。おそらく、発動中の魔法をいきなり切り替えたことで(「ソウル・トレイン・タイガー・バター・ドーナッツ・車輪」から「ギンガリアン・パラダイス」へ)、制御しきれなくなった一部のマジカルなエネルギーが、四人の意識を夢空間に飛ばしてしまったのだろう。たまにある事故だ。
「モップ……」
 聞きなれた、妙に懐かしい声。モップは顔を上げた。ティージホーキーが立っていた。
「ああ、先生……」
 ティージホーキーはいつ着替えたのか、久々に魔法使いらしい服装、ローブを着ていた。いや、よく見ると違う。やけに裾が短い。それはローブではなく、パーカーなのだった。
 パーカーのフードを目深にかぶり、ティージホーキーはボソボソと歌いだした。
「元気出せ……よ……。ほら……。元気……出せ……」
 それは、少し不貞腐れたような、掠れた、軋んだ歌声だった。とても元気になれそうもない。
 爺さんはボソボソ歌いながら、へこたれているアクロン達の間を周り、肩を揺すったりしている。
 奴らはどうでもいい。それよりもイオンちゃんは……。焦るモップの耳に、少女のすすり泣く声が聞こえた。驚いてそちらを見る。
 イオンではなかった。カラブキ書記が、号泣していた。ティージホーキーの歌に聞き惚れて。

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