境界 BORDER vol.4 [ 崎山ひろみ ]
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新年早々、忌避すべきこととは思うが、まずは2024年を総括することから新しい年を歩んでいきたい。
2024年は愛犬と愛猫を喪った。天寿をまっとうした年齢であったのだから、ある意味では喜ぶべきことではあるのだろうが、そう冷静に割り切れるものではない。自分の家が広くなったような感じがして空間もどこかぼやけたものになってしまった。
2024年は歩行困難の兆しから始まった。春先には100メートルも歩けば足が前に出なくなった。どんどん悪くなって総合病院で診てもらい「脊柱管狭窄症」と診断されて8月に手術をした。今はどうにか歩けるくらいにはなったが、好不調の波があるのか、足が痺れて転倒するときもある。
昨年末に脊柱管狭窄症の手術をして寝たきりになった人のニュースを見て驚いた。
私の場合、「術後すぐに歩ける」と聞いたので軽い気持ちで同意書にサインをした。実際は術後すぐには歩けるどころか身体を動かすことにも難儀して、「これは歩けるようになるのか…」と不安にかられたのだが、人の身体の回復力は自分の予測以上のものがあるのか、10日間の入院でなんとか自宅療養できるくらいにはなった。
今どきの医療では脊柱管狭窄症の手術で失敗することはないと信じていたのだが、件のニュースに接して「おいおい」となった。その執刀医は過去、「8件の手術で医療事故があり、患者2人が死亡、6人に障害が残った」とのこと。そんな医師に命を預けることが、現在の総合病院であるのかという驚き。これは他人事ではない。患者さんは私と同じように医師の説明に手術については楽観視していたのだと思う。それが術後は奈落に落とされたような心境であろう。患者はある意味では医師を選べない。患者が善良であればあるほど、医師を敬い信頼を寄せるのではないか。しかも町医者の紹介状をもって診てもらうことになった総合病院の医師ならなおさらである。
もちろん、何事にも失敗はつきものだ。だから、同意書があるのだろうけど、「患者2人が死亡、6人に障害が残った」を知っていたら、きっとその病院で手術を受けなかっただろう。それがちゃんとした総合病院での出来事であることを知ったとき、日本の社会そのものも同じような状況にあり、我々は薄氷の上に立っているのではないかと恐怖にも似た気持ちに陥った。
このブログを始めたのは2009年であった。まだ50歳の手前であった私だが、今年は65歳となる。
以前に比べて身体が劣化したのは歴然としている。気力も維持できていないと思う。しかし、生きている限りは前を向いて一歩でも前進していきたい。
ここ数年、戦争体験者の手記集「境界」の刊行に力を注いできた。
昨年10月に刊行した「境界」の第4集に収録した「忘れられない幼い浮浪児たちの目」の著者・杉本孝一郎さんは私の母校・新潟県立村上高校の大先輩である。
今年は戦後80年の節目の年である。私は杉本さんの講演会を企画した。母校同窓会の主催で2月1日に東京新潟県人会館ホール(台東区上野)で開催することになった。関心のある方はぜひご来場いただきたい。
それが私の2025年の第一歩でもある。