NHK Dear ニッポンで繰り返し放送された

放牧酪農家の人生

吉川友二さん

NHKでこれほど2度も3度も再々放送されるには、何があるのか 

 

 

環境を守りたくて酪農家になった

 

北海道足寄町、ありがとう牧場を営む吉川友二​さんを訪ねたのは2019年8月。

吉川さんはご自分のことを、「農業とか酪農というよりは、耕作放棄地請負人か、環境保全活動家ですね」とおっしゃいました。

広大な草原に点在する牛たちを眺めながらわたしは 「ということは、牛の乳は副産物ということですか?」思わず尋ねると、吉川さんは、「そうです、そうです」と、目を細めて笑いました。

 

山の環境を、この土地を守るために牛を放つ。それは、吉川さんがたどり着いた一つの答えだったのです。

 

吉川さんは長野県生まれ。

環境問題に関心を持ち、北海道大学を卒業。ニュージーランドで4年間「集約放牧」を学び、2000年に足寄町で新規就農しました。

牧場の面積は80ヘクタールですが、搾乳牛は60頭。1頭当たりの年間乳量は5000キログラムと全国平均の6割未満です。

 

農家の利益を最大化したニュージーランド

放牧地では、牧区を40に分けています。

朝夕の搾乳ごとに違う牧区へ移動させ、20日間で一周します。購入飼料のコストを低減し、糞尿処理や機械設備費を抑え、低投入・低コストによる優良経営を実現しています。

さらに、搾乳する牛はすべて季節繁殖。12月末から一斉に乾乳し、3月に一斉分娩する繁殖計画で、1、2月は搾乳がないという働き方革命まで成し遂げています。

 

吉川さんが学んだニュージーランドでは、1頭当たりの乳量は4000kgと日本の半分ですが、生乳生産コストは日本の3分の1だそうです。土地の力と牛の力を生かし、農家の利益の最大化を目指した結果、NZは世界有数の酪農大国になった。

 

吉川さんの牧場には多くの研修生がやってきます。

研修を終えた若者は町内で新規就農して放牧をはじめ、その数は取材当時15組以上。

これにより地元小学校では児童数が増加し、町の人口増や活性化にまで貢献しています。

 

足寄町では2004年に「放牧酪農推進のまち」を宣言しました。

さらに、この放牧牛乳でチーズを作りたいとやってきた本間幸雄さんによる「しあわせチーズ工房」は、今や世界的なコンテストで入賞するほどです。

 

自然を敬い、土地と牛の力を引き出す

 

ありがとう牧場のHPより

 

「私の牧場は輪換放牧で、搾乳が終わる毎に、新しい草の生えた草地に行けるようにしている。牛たちはお腹を空かせて待っていて、搾乳に連れに行くとサッサとパーラーに歩いていく。搾乳が終わるとサッサと牧草地へと帰っていく。牛を追いに行くのは人間の仕事だが、牧草地に帰っていくのは牛たちの仕事だ。」

 

牧夫の精神ストックマンシップ

「家畜との良い関係を築き上げるために必要なものが、ストックマンシップ(牧夫の精神)である。

良きストックマンには、牛を尊敬するAttitude (姿勢や考え方)がある。放牧をして初めて、牛の本当の偉大さを感じ、知ることが出来る。牛たちは大地を踏みしめ、大地にふん尿を還し、生態系を変えて草地(自分たちの餌)という生態系を新たに造り出す。

 

自然と牛の循環に畏敬の念を抱くようになると、働く楽しさも生まれ、牛の生態をよく理解し、心得ていれば、家畜の健康と生産性が高まり、仕事の効率も上がります。

農業で一番大切なことは『自然の力を引き出すこと』である」

「土―草―牛」のサイクルがバランスよく回れば、自然が人間に恵みを与えてくれます。

 

書き足りませんがまた書きます

 

 

吉川さん、ありがとうございました。

 

ベジアナあゆみ