源氏物語イラスト訳【末摘花122】出立
命婦は、「いかならむ」と、目覚めて、聞き臥せりけれど、「知り顔ならじ」とて、「御送りに」とも、声づくらず。君も、やをら忍びて出でたまひにけり。
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君の噂を聞いた光源氏は、「零落した悲劇の姫」という設定に憧れと好奇心を抱き、乳母子の大輔命婦の手引きにより、ようやく逢瀬を迎えました。
源氏物語イラスト訳
命婦は、「いかならむ」と、目覚めて、聞き臥せりけれど、
訳)大輔命婦は、「どうであろうか」と、目を覚まして、横になって聞き耳を立てていたけれど、
「知り顔ならじ」とて、「御送りに」とも、声づくらず。
訳)「いかにも知っているような顔ではいるまい」と思って、「お見送りに」と、声で合図もしない。
君も、やをら忍びて出でたまひにけり。
訳)源氏の君も、そっと人目を避けて出立なさったのであった。
【古文】
命婦は、「いかならむ」と、目覚めて、聞き臥せりけれど、「知り顔ならじ」とて、「御送りに」とも、声づくらず。君も、やをら忍びて出でたまひにけり。
【訳】
大輔命婦は、「どうであろうか」と、目を覚まして、横になって聞き耳を立てていたけれど、「いかにも知っているような顔ではいるまい」と思って、「お見送りに」と、声で合図もしない。源氏の君も、そっと人目を避けて出立なさったのであった。
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■【命婦(みょうぶ)】…大輔命婦。光源氏の乳母子
■【は】…取り立ての係助詞
■【いかならむ】…どうであろうか
■【と】…引用の格助詞
■【目覚め】…マ行下二段動詞「目覚む」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【聞き臥せ】…サ行四段動詞「聞き臥す」已然形
※【聞き臥(ふ)す】…横になって聞く
■【り】…完了の助動詞「り」連用形
■【けれ】…過去の助動詞「けり」の已然形
■【ど】…逆接の接続助詞
■【知り顔】…いかにも知っているような顔
■【なら】…断定の助動詞「なり」未然形
■【じ】…打消意志の助動詞「じ」終止形
■【とて】…~と思って
※【と】…引用の格助詞
※【て】…単純接続の接続助詞
■【御―】…尊敬の接頭語(命婦⇒光源氏)
■【送り】…見送り
■【に】…目的の格助詞
■【と】…引用の格助詞
■【も】…強意の係助詞
■【声(こわ)づくる)…声で合図する
■【ず】…打消の助動詞「ず」終止形
■【君】…源氏の君。光源氏
■【も】…列挙の係助詞
■【やをら】…そっと
■【忍ぶ】…人目を避ける
■【て】…単純接続の接続助詞
■【出で】…ダ行下二段動詞「出づ」連用形
■【たまひ】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【に】…完了の助動詞「ぬ」連用形
■【けり】…過去の助動詞「けり」終止形
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【本日の源氏物語】
光源氏、出立の場面です。
せっかく、末摘花との初夜を迎えたのに、
ちょっと思っていたより良くなかったようですね。
ため息をつきながら、光源氏はそっと帰ろうとします。本来ならば、明け方に帰っていくはずですが、夜深いうちに、そっと出立するようです。
大輔命婦も、素知らぬふりをして、お見送りにも出てこなかったみたいですね。
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