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責任を持って応援してくれる人

「担当した記事が載ってるので、よかったら雑誌買ってみてください」と伝えたところで、99.9%の人は買ってくれない。99.9%は誇張表現にしても、「よかったら買ってね」で実際に買ってくれる人はほとんどいない。そりゃそうだ。知り合いの文章が載っているというだけの1000円近い雑誌を買うくらいなら、好きなラーメンやらスタバの新作を食べるほうが幸せだし映える。5000円近い書籍を買うくらいなら、近場の温泉まで日帰り旅行したほうが幸福度は高い。かくいう自分ですら、知人や友人が開催したライブ、展示会、オンラインイベントなど全てに参加できているわけではないし、正直そこまで親しくない人から誘われた上に内容も興味をそそられないイベントに参加するくらいなら、家で本でも読んでいたほうがマシだと考えてしまう。

口先だけなら「応援してます」と言うのは簡単だ。むしろ真っ当な社会性がある人ならば、他人の趣味なり仕事なりに対して「別に興味ないし、応援してません」と直接伝えることはほぼあり得ない。雑談における「応援してます」には本当に当人を応援したいという意思は含まれておらず「あなたに敵意はないですよ」という意思表示でしかない。要は「いいお天気ですね」程度の意味合いしかないということだ。

仮に応援する気持ちがあったとして、だ。やはり「責任を持って応援してくれる人」と「言葉だけの人」は違う。応援してくれるだけでありがたいという気持ちはありつつも、ミュージシャンならサブスクで聴くだけの人よりもCDを買ったりライブに足を運んでくれたりするファンのほうが嬉しいだろうし、デザイナーなら「Twitterにアップしてるイラスト、本当に好きです!」とコメントだけするファンよりもSUZURIに出品しているグッズを買ってくれたり、有償イラストの依頼をしてくれるファンのほうが大事にしたいものだと思う。仕事だってそうだ。「いつか面白いことやりたいっすね」と、ふわっとした中身のない打ち合わせばかり続くクライアントよりも、「少なくてすみません」と言いつつも細々と小さな案件を振り続けてくれるクライアントのほうがありがたいし、大事にしたい。

だからこそ自分たち(あえて“たち”と表現する)は、「責任を持って応援してくれる人」を大切にしなければならないし、恩に報いなければならない。たとえ僅かばかりであったとしても、それぞれが持つ有限の時間やお金を自分や自分の生み出したコンテンツに使ってくれる人は稀有なのだから、真摯に向かい合わなければならないと思う。

先日、大学時代の友人と会った時に会話の流れで「こんな雑誌で記事を書いてて……テーマに興味があったら買ってみてよ」と伝えたところ、「予約購入したよ」とメッセージをもらった。SNSで「この雑誌に記事を書きました」と宣伝したところで「いいね!」はそれなりにつけど、本当に買ってくれる人は今までいなかったから、冗談じゃなく本当に驚いた。この仕事をしていると「何十万、何百万の人に記事が読まれた」と数字では理解できても、(特にウェブはその傾向が顕著だが)話題の入れ替わりが物凄く早く、生の声やフィードバックを貰うことがあまりない。読者不在のまま壁打ちしているような感覚になってしまうので、かなり久しぶりに「一読者」を意識した出来事だった。

こういう人がいるのだから、真摯に筆をとらなければいけないなと、改めて感じた出来事だった。という、備忘録。

by innocentl | 2022-06-20 22:39 | 日常 | Trackback | Comments(0)


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