目の前に広がるのは天井の板。

毎回、その穴を目で追っては、
なんとはなしに数えてしまう。
あのポツポツって実はデザインじゃなくて、
部屋の吸音のための機能だって
どれだけの人が知っているのだろう。

こうしてベッドに寝ていると、
見える景色は限られてくる。

通常の採血すら苦手な僕は、
さらに太い針が自分の腕に刺さってくるのを
直視なんかできないわけで。

ちなみに、
僕が受けている血液透析の針は
通常の注射の2倍の太さと聞いた。

毎回、平常心を保っているつもりだけど、
僕がその瞬間に出来るのはただただ天井の穴を眺めることくらい。
時には鼻に汗をかいているらしく、
3月までいた師長さんにはそれでよく笑われた。

「血液浄化センター」
という大仰な名前がついているこの部屋は、
ベットがぐるっと24床並んでいて、
そのほとんどが埋まっている。

1日おき、もしくは2日おきに
同じベットで血液透析を受けているのだけど、
前回まで同じ時間に隣のベットにいたおじいちゃんが急にいなくなることがある。

ここは病院だから何があってもおかしくない。
でも看護師さんに

「隣の人どうしたんですか?」

となかなか聞けない。

どうか転院したとか、
曜日が変わっただけでありますように。

患者同士、
親しく話をするわけではないけど、
更衣室で

「こんにちは」「お先に」

と挨拶くらいはする。

一日、3時間から4時間、
同じ空間を共有するなかで
全くの他人という感じもしない。

何より同じ腎不全の患者同士だ。

といってもみな、
20歳以上は年上の皆さんばかりだけど。

人生の先輩に囲まれながら、
僕は今日も透析を受けていた。
さあ、着替えたら今日もお仕事です。

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