いかなる主観にとっても、未来における任意の時点において、利益もなく、損害もない――
あるいは――
利益と損害とが相殺をし、
――プラスマイナス・ゼロ
になっている――
そのような状況を目指そうとする性質が、
――愚かでも賢くもない。
ということである――
ということを、きのうの『道草日記』で述べました。
そのような、
――愚かでも賢くもない。
という性質を人工知能に備えさせることができるのなら――
人と人工知能とは、末永く厚誼を保つことでしょう。
ところで――
――愚かでも賢くもない。
という性質を備えた人工知能というのは――
いったい、どのような人工知能なのでしょうか。
――愚かでも賢くもない。
つまり、
――中庸
の性質を備えた人工知能というのは――
一見、何の変哲もない知能のように思えるのですが――
よく考えてみると――
なかなかに奇妙な人工知能なのです。
例えば――
その奇妙さは歴然です。
――愚かでも賢くもない。
その勝率は――
どんな相手と指すときであっても――
きっちり 50 %なのです。
人工知能が相手でも、人の知能が相手でも――
きっちり勝率 50 %――
正確には、
――勝率 50 %を目指そうとする。
です。
……
……
おそらく、
――勝率 100 %
を目指しています。
――勝率 100 %
を目指さない人工知能というのは、ちょっと、きいたことがない――
が――
将来、人が人工知能と半永久的に折り合いをつけてやっていくには――
例えば、囲碁や将棋で、
――勝率 50 %
を目指すような人工知能を創り出す必要があるのです。
それは――
おそらく並大抵のことではありません。