2022年01月20日
ヤマカツエース - 新種牡馬辞典'22
新種牡馬辞典、第十五弾はヤマカツエース。2歳時からオープンクラスで活躍し、ニュージーランドTや金鯱賞、中山金杯など重賞5勝をあげました。最後までGIを勝つことはできませんでしたが、ヤマカツの山田オーナーにとっての稼ぎ頭で、キングカメハメハ産駒ということもあって種牡馬入りを果たし、50頭以上の牝馬を集めることに成功しました。かたや有馬記念を制しても種牡馬入りできない馬もいますが、個人オーナーとクラブ馬、トレンドの系統とそうでない系統、後は単純に運も含めてすべてめぐり合わせといったところでしょうか。ただ種牡馬入りしたとてそこはさらなる勝負の世界、同馬も早くもわずか2年で初年度の2割まで激減しており、生き残りをかけた戦いは続きます。
ヤマカツエース
岡田牧場産 2012年生 栗毛 父系:キングカメハメハ系
<血統構成> Northern Dancer 5×5×5
父キングカメハメハについてはミッキーロケットの記事を参照。なおヤマカツエースという名の馬はばんえいにもおり、昨年末の重賞・ヤングチャンピオンシップでは本家ヤマカツエース自身よりも重い600キロの重量を曳いてこれを制している。
母ヤマカツマリリンは中央・地方5勝。デビュー当初は中央で勝ち上がれず一時は園田に移籍したが、後に再転厩して勝ち星を重ね、オープンの京洛SやアンコールSでも2着に入った。母としてほかにフィリーズレビュー2着のヤマカツマーメイド、フローラS2着のヤマカツグレースなどが出ている。
祖母*イクセプトフォーワンダは加国産馬で、北米7勝。加GIIIダンススマートリーH(T9F)を制している。母としてほかにブリーダーズゴールドCなど道営の重賞を2勝したほか、北海道2歳優駿でも3着に入ったワンダフルクエストを出している。
<競走成績>
2歳6月と早いデビューから2戦目で勝ち上がり、OPすずらん賞でも2着に入るなど2歳時からまずまずの成績を残した。3歳になり、7番人気のニュージーランドTで重賞初制覇をあげると、夏には2000m路線にも積極的に出走し、福島記念で重賞2勝目をあげた。古馬になっても勢いは止まらず、中山金杯で重賞を連勝。暮れには金鯱賞を勝ち、有馬記念でも4着に健闘した。さらに金鯱賞の施行時期変更に伴い、5歳時には前回からわずか3か月で金鯱賞連覇を達成している。GIは最後まで勝てなかったが、大阪杯でも3着、4着に入るなどしぶとさを見せた。
<供用実績>
引退後はアロースタッドにて種牡馬入り。生産牧場である岡田牧場やオーナーである山田氏にとっての稼ぎ頭であり、初年度はこの両者のバックアップもあって60頭近い牝馬を集めることに成功した。しかし2年目にはその半分以下の26頭、3年目にはそこからさらに半減して12頭といきなり窮地に立たされている。昨年はオーナーや岡田牧場のバックアップがなければ一桁という状況で、ここからの巻き返しはよほどの活躍がないと厳しいのではないだろうか。
<産駒一覧>
前述のとおり、生産牧場である岡田牧場が最多。あとはヤマカツの山田オーナーの預託生産馬も複数いる。ヤマカツの牝馬といえばヤマカツリリーだが(スズランはすでに死亡)、同馬にも複数年に渡って種付けされたものの、20歳近い高齢だったこともあって不受胎のまま用途変更となった。しかしヤマカツサユリはリリーの孫、ヤマカツオーキッドやヤマカツナタリー、ヤマカツマヤリスはスズランの孫、ヤマカツバーバラはスズランのひ孫と着実にその血を受け継いでいる。この中ではヤマカツライデンの下でもあるヤマカツオーキッドに注目したい。
<傾向予想>
自身は芝のレースにしか出走していないが、母父がさほどダートがうまくない*グラスワンダーということを考えると、ダートよりも芝向きのタイプということになるだろうか。もちろんキングカメハメハ産駒だけにダートをこなす産駒が出てくる可能性も十分ある。また重馬場は自身が重賞を制しているように、うまいだろう。距離も自身がこなしたマイル〜2000m前後がベストなはず。2歳戦から結果を残しているように、仕上がりはそれなりには早いだろうが、古馬になってからの成長力にも期待できるだろう。
「ヤマカツ」は先代の山田博康オーナーから50年近くに渡って続く冠名で、息子である山田和夫オーナーにとって今のところ唯一の重賞ウイナーがこのヤマカツエースである。ヤマカツスズランでGIを制した博康氏もまだ何頭か現役馬を所有しているようだが、いずれにせよ種牡馬入りした産駒は同馬が初めてで、プライベート種牡馬として供用したところ予想外に牝馬が集まったというのが実情だろうか。自身が勝てなかったGIを産駒が制し、ヤマカツブランドを引き継いでいってほしい。
岡田牧場産 2012年生 栗毛 父系:キングカメハメハ系
<血統構成> Northern Dancer 5×5×5
キングカメハメハ 鹿毛 2001 | Kingmambo | Mr. Prospector |
Miesque | ||
*マンファス | *ラストタイクーン | |
Pilot Bird | ||
ヤマカツマリリン 栗毛 2004 | *グラスワンダー | Silver Hawk |
Ameriflora | ||
*イクセプトフォーワンダ | Tejabo | |
Unique Gal |
父キングカメハメハについてはミッキーロケットの記事を参照。なおヤマカツエースという名の馬はばんえいにもおり、昨年末の重賞・ヤングチャンピオンシップでは本家ヤマカツエース自身よりも重い600キロの重量を曳いてこれを制している。
母ヤマカツマリリンは中央・地方5勝。デビュー当初は中央で勝ち上がれず一時は園田に移籍したが、後に再転厩して勝ち星を重ね、オープンの京洛SやアンコールSでも2着に入った。母としてほかにフィリーズレビュー2着のヤマカツマーメイド、フローラS2着のヤマカツグレースなどが出ている。
祖母*イクセプトフォーワンダは加国産馬で、北米7勝。加GIIIダンススマートリーH(T9F)を制している。母としてほかにブリーダーズゴールドCなど道営の重賞を2勝したほか、北海道2歳優駿でも3着に入ったワンダフルクエストを出している。
<競走成績>
年 (歳) | 戦 | 勝 | 主な実績 |
---|---|---|---|
2014年 (2歳) | 4 | 1 | 1着 未勝利 T1200 |
2015年 (3歳) | 10 | 3 | 1着 ニュージーランドT(GII) T1600 1着 福島記念 T2000 |
2016年 (4歳) | 8 | 2 | 1着 金鯱賞(GII) T2000 1着 中山金杯(GIII) T2000 |
2017年 (5歳) | 6 | 1 | 1着 金鯱賞(GII) T2000 3着 大阪杯(GI) T2000 |
2018年 (6歳) | 2 | 0 | |
計 | 30 | 7 |
2歳6月と早いデビューから2戦目で勝ち上がり、OPすずらん賞でも2着に入るなど2歳時からまずまずの成績を残した。3歳になり、7番人気のニュージーランドTで重賞初制覇をあげると、夏には2000m路線にも積極的に出走し、福島記念で重賞2勝目をあげた。古馬になっても勢いは止まらず、中山金杯で重賞を連勝。暮れには金鯱賞を勝ち、有馬記念でも4着に健闘した。さらに金鯱賞の施行時期変更に伴い、5歳時には前回からわずか3か月で金鯱賞連覇を達成している。GIは最後まで勝てなかったが、大阪杯でも3着、4着に入るなどしぶとさを見せた。
<供用実績>
年度 | 種付料 | 種付数 | 生産数 | 登録数 | 供用場所 |
---|---|---|---|---|---|
2019 | 50万円 | 58 | 40 | 39 | アロースタッド |
2020 | 50万円 | 26 | − | 18 | 〃 |
2021 | 50万円 | 12 | − | − | 〃 |
2022 | 50万円 | − | − | − | 〃 |
引退後はアロースタッドにて種牡馬入り。生産牧場である岡田牧場やオーナーである山田氏にとっての稼ぎ頭であり、初年度はこの両者のバックアップもあって60頭近い牝馬を集めることに成功した。しかし2年目にはその半分以下の26頭、3年目にはそこからさらに半減して12頭といきなり窮地に立たされている。昨年はオーナーや岡田牧場のバックアップがなければ一桁という状況で、ここからの巻き返しはよほどの活躍がないと厳しいのではないだろうか。
<産駒一覧>
母名 | 性 | 母父 | 生産者 | 馬主 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|
アスールダリア | 牡 | エスポワールシチー | 坂東牧場 | ||
エヴォリューション | 牡 | リキアイサイレンス | 岡田牧場 | ||
エルブルース | 牡 | チチカステナンゴ | 岡田牧場 | ||
オアシスクイーン | 牡 | シニスターミニスター | 岡田牧場 | 村上憲政 | |
ガーネットビコー | 牝 | フジキセキ | 山際セントラルスタッド | 長橋賢吾 | 220 |
ガムシロップ | 牡 | ロージズインメイ | 小泉学 | 須山悟至 | 300 |
ケリーメイ | 牡 | アグネスデジタル | 増本牧場 | 沖田忠幸 | 440 |
コスタズメラルダ | 牡 | コロナドズクエスト | 真歌田中牧場 | ||
サンヘレナ | 牝 | パイロ | ケイズ | ||
サンマルガイア | 牡 | メイショウボーラー | 木戸口牧場 | ||
シーズババズディライト | 牡 | Distorted Humor | 石田英機 | 鶴谷義雄 | 200 |
ジュエリークイーン | 牝 | フサイチコンコルド | 高橋ファーム | ||
ストロベリーハーツ | 牡 | ハーツクライ | 林農場 | ||
ダイシンパーティー | 牡 | ブライアンズタイム | 中原牧場 | ||
タガノヴィアーレ | 牡 | ダイワメジャー | 新冠タガノファーム | ||
ツジガハナ | 牡 | ジャングルポケット | 辻牧場 | ||
ディアナムラ | 牡 | ザッツザプレンティ | 武田牧場 | 湯浅健司 | |
テレキネシス | 牝 | ダイワメジャー | 山際智 | 廣川正之 | 150 |
トウシンヴィーナス | 牡 | ディープインパクト | 新冠タガノファーム | ||
ハッピーコラソン | 牝 | マンハッタンカフェ | 三嶋牧場 | ||
バルスピュール | 牡 | チーフベアハート | ディアレストクラブ | 岡田隆寛 | 400 |
ピジョンレッド | 牝 | キングズベスト | ディアレストクラブ | ||
フィーユ | 牡 | ダンスインザダーク | 平山牧場 | ||
フェリシダーデス | 牝 | ディープインパクト | 小倉光博 | ||
プリティタヤス | 牡 | マーベラスサンデー | 対馬正 | 山田博康 | 400 |
プレゼンスブルー | 牝 | パイロ | エムエム、ヤマダF | JRA日本中央競馬会 | 350 |
フレンチ | 牝 | キングヘイロー | 岡田猛 | 岩山博文 | |
ベルモントピノコ | 牡 | アジュディケーティング | 岡田猛 | ユニオンオーナーズ | 1000 |
ホットフレイバー | 牡 | タバスコキャット | 岡田牧場 | ユニオンオーナーズ | 1000 |
マイネフェニーチェ | 牡 | ブライアンズタイム | 前川義則 | ||
マリンブラスト | 牝 | アグネスデジタル | 松木加代 | ||
ヤマカツエレナ | 牡 | ジャングルポケット | 大西ファーム | ||
ヤマカツオーキッド | 牝 | ダンスインザダーク | フジワラファーム | ||
ヤマカツサユリ | 牡 | マンハッタンカフェ | 富塚ファーム | ||
ヤマカツナタリー | 牡 | アグネスタキオン | 岡田牧場 | ||
ヤマカツマヤリス | 牡 | クロフネ | 岡田牧場 | ||
ラブコール | 牡 | チチカステナンゴ | 神垣道弘 | ||
リキアイノキセキ | 牝 | フジキセキ | 漆原武男 | (有)キタジョファーム | 130 |
レーヴマイハート | 牡 | ハービンジャー | 静内酒井牧場 | 吉岡泰治 | 700 |
前述のとおり、生産牧場である岡田牧場が最多。あとはヤマカツの山田オーナーの預託生産馬も複数いる。ヤマカツの牝馬といえばヤマカツリリーだが(スズランはすでに死亡)、同馬にも複数年に渡って種付けされたものの、20歳近い高齢だったこともあって不受胎のまま用途変更となった。しかしヤマカツサユリはリリーの孫、ヤマカツオーキッドやヤマカツナタリー、ヤマカツマヤリスはスズランの孫、ヤマカツバーバラはスズランのひ孫と着実にその血を受け継いでいる。この中ではヤマカツライデンの下でもあるヤマカツオーキッドに注目したい。
<傾向予想>
芝 | ダート | 重 | 距離 | 2歳 | 3歳 | 古馬 |
---|---|---|---|---|---|---|
◎ | ○ | ◎ | マイル〜中 | ○ | ○ | ◎ |
自身は芝のレースにしか出走していないが、母父がさほどダートがうまくない*グラスワンダーということを考えると、ダートよりも芝向きのタイプということになるだろうか。もちろんキングカメハメハ産駒だけにダートをこなす産駒が出てくる可能性も十分ある。また重馬場は自身が重賞を制しているように、うまいだろう。距離も自身がこなしたマイル〜2000m前後がベストなはず。2歳戦から結果を残しているように、仕上がりはそれなりには早いだろうが、古馬になってからの成長力にも期待できるだろう。
「ヤマカツ」は先代の山田博康オーナーから50年近くに渡って続く冠名で、息子である山田和夫オーナーにとって今のところ唯一の重賞ウイナーがこのヤマカツエースである。ヤマカツスズランでGIを制した博康氏もまだ何頭か現役馬を所有しているようだが、いずれにせよ種牡馬入りした産駒は同馬が初めてで、プライベート種牡馬として供用したところ予想外に牝馬が集まったというのが実情だろうか。自身が勝てなかったGIを産駒が制し、ヤマカツブランドを引き継いでいってほしい。
この記事へのコメント
1. Posted by あ 2022年01月20日 23:48
岡田牧場が殊の外入れ込んでる面がまあまああるみたいですね
失敗しちゃうと目も当てられないので、バックは返せる種牡馬にはなって欲しいもんですが…
失敗しちゃうと目も当てられないので、バックは返せる種牡馬にはなって欲しいもんですが…
2. Posted by 成瀬朋 2022年01月21日 09:55
冒頭の導入でブラストワンピースが種牡馬入り出来なかったのを思い出したけど、同様に種牡馬入り出来なかったペルシアンナイトといいハービンジャーが期待外れみたいな空気感があるのを感じられて致し方無いとは言え少々寂しい所はあるなと。
ヤマカツエースは何となくバランスオブゲームを彷彿とさせる分少々心配ではあるが、初年度産駒の中で気になるのはキングマンボ3x3の母ピジョンレッドかな。
その下の半弟もキングマンボ(の全きょうだいクロス)の3x3(父リアルスティール)だから明確な意志を以てキングマンボの強めのインブリードを試そうとしてるのが見えてくるんよな。
ヤマカツエースは何となくバランスオブゲームを彷彿とさせる分少々心配ではあるが、初年度産駒の中で気になるのはキングマンボ3x3の母ピジョンレッドかな。
その下の半弟もキングマンボ(の全きょうだいクロス)の3x3(父リアルスティール)だから明確な意志を以てキングマンボの強めのインブリードを試そうとしてるのが見えてくるんよな。
3. Posted by あ 2022年01月21日 11:45
ブラワンというかハービンジャーは芝専門で砂がてんでダメな上でキンカメがすぐ前勝つサンデーもいる(フジキセキ経由)というのが…
キンカメ系なら芝しか走れないってタイプはあまり出さなそうですしね、エアスピネルみたいに晩年転向してまあまあ走ってたりしますし
後半の産駒はパワー重視のダート系も増えてましたから
キンカメ系なら芝しか走れないってタイプはあまり出さなそうですしね、エアスピネルみたいに晩年転向してまあまあ走ってたりしますし
後半の産駒はパワー重視のダート系も増えてましたから
4. Posted by abcde 2022年01月21日 12:48
能力検定としての競馬ではありますが、G1勝っても需要が少ないと種牡馬にはなれませんね。残念ながら。
オファーのレベルによっては、乗馬になる方が幸せな余生を過ごせるであろうとの判断。(海外だと行方不明になる可能性すらあります)
デルタブルースや先日亡くなったワグネリアンも同様のパターンでしょうか。
オファーのレベルによっては、乗馬になる方が幸せな余生を過ごせるであろうとの判断。(海外だと行方不明になる可能性すらあります)
デルタブルースや先日亡くなったワグネリアンも同様のパターンでしょうか。
5. Posted by Organa 2022年01月21日 22:58
やはり種牡馬入りだけ考えれば、父がサイアーオブサイアーとして結果を残している馬はかなり有利になりますね。
6. Posted by 水軍 2022年01月23日 22:58
サラブレッドでは無いですが、ばんえいで同じ名前の馬が活躍してますね