今年は3年ぶりの行動制限のない夏休みとなりましたが、コロナ感染の第7波により過去最高の感染者数となっています。
そのためテーマパークなどの人の集まる場所を避け、思い切り息をして身体を解放できることがないかと考えてみると、今こそ以前より思い描いていた「親子でしまなみ海道を自転車で渡りたい」という夢を叶える時だと思ったのでした。
《8月23日》
準備がまた楽しいんだよね。
次女が長女に書いてあげた持ち物メモ。
迷ったけれど、やっぱりこれ持っていこう。「しまなみ島走BOOK」
《8月24日》
午前中に仕事を済ませ、昼食後に我が家を出ます。
しゅっぱ~つ、進行!
明日なるべく早くにある体験のスタートが切れるように、近場にチェックインします。
尾道ロイヤルホテルです。
和室に布団も落ち着きます。
子供たちはYoutubeが見れると喜んでいました。
おい、それじゃうちと変わらないじゃないか。
やっぱり尾道ラーメンでしょ。ってことでなんとか探しついた「潮らーめんデンヤス」へ。
うわ~、ここ当たりだわ。美味しかった~。
尾道の夜。
ケーキを買ってご満悦。
部屋から見える千光寺。
今回は無理だけど、またの機会に行きたいね。
明日に備えて早く寝よう。
《8月25日》
おはよう。朝からしっかり食べて力を蓄えておいてね。
やってきたのは「しまなみレンタサイクル」ができる『しまなみジャパン』の尾道港湾駐車場ターミナルです。
一ヶ月ほど前から予約してあったんです。
用意されていた自転車のサドル調整をして、ヘルメットを自由に選びます。
どきどきわくわくのサイクリングの旅スタートです。お天気にも恵まれてラッキー!
まずは尾道港から向島にフェリーで渡るのが正規のコースです。
①の尾道港ターミナルをスタートして、目標は⑩の今治駅前か⑨のサンライズ糸山です。とにかく本州から四国へと渡り切りたいと思っていました。
とはいえ、どこでリタイアしてもいいというのが安心材料です。
フェリーに乗りました~。料金は船内で支払いです。
渡船時間はわずか五分程度。まもなく到着です。
向島(むかいしま)に着きました。さ~行こう!
出だしは順調。
平坦な道をサイクリングコースを示した「ブルーライン」に沿ってすいすいと走っていきます。
向島は造船業も盛んで、けっこう大きな町だといいます。車の往来も多かったです。
僕は三女を乗せて、ママチャリでいきます。ほんとはクロスバイクがよかったんだけど・・・。
変速も2段階しかありません(泣)
自動販売機から飲み物を買うため、最初の休憩です。
海岸沿いを進んでいくと、向島と岩子島を繋ぐ「向島大橋」が見えてきました。
本来はサイクリングロードから外れる岩子島に行くことはありません。
でもどうしても厳島神社(いつくしまじんじゃ)に行きたくて、寄り道しちゃうことにしました。
岩子島に上陸し、海岸沿いを走ります。
「いわこじま」と僕が言っていたら、妻から「いわしじま」って読みが書いてあるよとツッコミが入りました。
さっきは「むこうじま」って言う妻に、「むかいしま」だと偉そうげに教えたところでしたから、ちっちゃくなりました(笑)
予想もしていなかった結構な山越えがあって、みんながもうへばってます。
寄り道しなきゃよかったんじゃ・・・と僕。
いきなりの試練だった厳島神社。到着しました。
とはいえ鳥居に打ち寄せる波が素敵な場所に大満足。
お賽銭して、みんなでしっかりとお参りしました
「疲れたけど、なにか感じる場所なので来てよかった」と妻も言ってくれたのでよかったです。
来た道を戻るのは案外つらいもの。
そんな中を意外にも逞しい長女の走りを見ることができてびっくりしています。
次女の笑顔にも余裕が感じられて、へばってそうだったけど、まだまだいけるなって確信しました。
また向島大橋を渡って岩子島から向島に。
再びサイクリングコースにもどったら足もどこか軽くなり、多少のアップダウンも快走。
向島休憩所で一休み。
飲み物が早くも切れたので、また補給です。
たくさんカフェに寄るからお茶にしとこうという作戦でしたが、これが失敗だったかも。
これからことごとくカフェや食事処を取り逃していってしまいます。
僕と三女は二人で一本を回し飲み。今回ますます絆が深まる予感。
素敵なしまなみの風景。今度はあの橋を渡るんだろうな~。
自転車専用道路入り口の少し先に直進するとカフェがあると下調べしていたのに、標識につられてついつい左折し、専用道路に引き込まれてしまいました。
しばらくしてうっかりに気付きますが後の祭り。
高所に設置されている橋への自転車乗り口を目指して、1キロ以上の登りが続くのです。
立ち漕ぎでどんどん登っていく長女。
僕らはみんな自転車を降りて押しています。
インドア派で運動が苦手なはずの長女にこんなパワーがあったのかと、その姿に感心している僕と妻でした。。
いよいよ合流地点。橋を通って海の上を渡るのです。
ですが向島と因島(いんのしま)を結ぶ「因島大橋」は、車道の地下を進むので海の上という実感があまりしなかったです。
因島に入りました。
長女が普段なら興味を示しそうな恐竜の巨大オブジェも、一瞥しただけで通り過ぎていきます。
「景色を楽しむ余裕がない」と妻に言わせちゃうくらい、目標地点めがけて頑張らせちゃったのかもしれません。
水分補給地として予定していた『後藤鉱泉所』のラムネも、『70Cafe』の自家製ジュースも飲み損ね、昼食予定の『菜のはな』へは岩子島へ寄ったため時間的に辿り着くことができず、急遽変更した『六大陸』という食事処は見逃し通過してしまうという、グダグダな先導者でした。
はっさく大福で有名な菓子処「中島」まで閉まっています。
結局ローソンで昼食することに。
コンビニの外でおにぎり。腰を落としてクーラーで身体を冷やしたかった妻にはほんとにごめんねとしか言えません。
しんどかったと思います。
それでも子供たちが、これも思い出に残ってよかったよと言ってくれたのが救いでした。
びっくりしたのが、長女の足が食事後立ち上がった時に「しびれてる」と言ったことです。
しばらくして治まったみたいですが、お茶ではなくスポーツドリンクにして塩分と糖分をしっかり補給しなきゃと思いました。
「足、大丈夫?」
「うん」
だんだんとお尻が痛くなってきました。
これは僕だけでなく、妻も長女も次女もでした。
固いサドルにまたがりつづけることによるお尻へのダメージは、サイクリングのリタイアの一つの理由ともなるといいますので馬鹿にできません。
これもだいじょうぶかな・・・。
橋に乗るための自転車専用道路に入ります。
ここもやっぱりダラダラとした登り坂が続いていて、ママチャリ組にはかなり大変でした。
リュックの重みも肩に食い込んでくるよね。
歩みの遅い僕たちを待つ二人。
次女も長女を追いかけて、すごく頑張ってたね。
因島から生口島(いくちじま)へ繋ぐ「生口橋」です。「気持ちいい~」
「しまなみ最高!」
生口島に上陸です。
上りのしんどさとは一転、下りは超爽快!
こまめな給水は欠かせません。
石畳の道に変わり、気分も変わります。
「よし、ここで休憩しよう!」
15時に、ようやく『しまなみドルチェ瀬戸田本店』に到着。
女子たちには長らくお待たせしまった待望のカフェです。
やっと涼しい場所に腰を下ろして休憩できました。
熱くなった身体に染みわたって、格別に美味しく感じたよね。
僕は瀬戸田のデコみかんジュースに瀬戸田レモンのジェラートをトッピング。
めちゃめちゃ美味しかったです!
有名人のサインがたくさんありました。
さ~、重い腰をあげて痛い尻を我慢して再出発。
後部シートで後ろの状況を逐一教えてくれる三女。
一人疲れ知らずで、おしゃべりも絶好調。
瀬戸田の町中にやってきました。
観光第一弾。「西の日光」とも呼ばれる『耕三寺』に参拝しました。
様々な建物が他の有名寺院のコピー建築だということですが、この本堂は「平等院鳳凰堂」を真似ているそうです。
エレベーターに乗って、伽藍の奥へ進んでいきます。
そこには大理石で創られた『未来心の丘」が広がっていて圧巻です。
実はこの直前に次女が自転車から落ちて擦り傷を負ってしまいました。グローブをし忘れていて、手が滑ってしまい落輪したそうです。
とはいえたまたま草むらの方に投げ出されたため軽傷ですんだと、本人がお守りの御利益を語っていました。
聞いてびっくりしましたが、本当に大事にならなくてよかったです。
登って遊ぶ長女と三女。
頂上にある一番の写真スポットに来た時には、あれほどたくさんあった雲が逃げて行きました。
わ~い。
孝養門は日光東照宮のコピー。
見どころ満載の、すごいところでした。
もう今日は十分すぎるほど自転車で走ったので、宿泊所までの道のりは、ネット情報「レスキュータクシー 一覧」を見て自転車も積み込めるタクシーを呼ぼうと電話したのですが、なんとお断りされてしまいました。
仕方なく、みんなに重い足をもうひと踏ん張りしてもらい、生口島のど真ん中を走る山越えの道を進むことを決断します。
耕三寺を出たのは16時半過ぎ。
日暮れの心細さもちらつく中での道のりでした。
しばらく平坦路を北方面に戻ります。
来た道と同じ道を戻ると子供たちの気持ちが下がるといけないので、町中の違う道をチョイスして走りました。
ちょっと自信はないけれど、ガイド本の地図を片手に走ります。
「御寺」行きの看板を見て、山側へ右折しました。
ダラダラと続く登り坂ですが、長女と次女は立ち漕ぎで頑張っています。
とはいえ先の見えない坂道に、僕と妻はそうそうに自転車を降りて押していましたし、やがて長女と次女もそうなりました。三女も降ろして歩いてもらっています。
道もほんとに合ってるか確信がもてなくて、いったいいつ辿り着けるかわからない中、疲労困憊の僕たちはひたすら自転車を押して登り続けました。
「まだ~?」
「あとどれくらい?」
子どもたちは同じセリフを何度も繰り返しながら、うんざりした表情。
僕はそれにややイラっとしながら、「あともうちょっとだよ」と同じセリフを繰り返します。
ガイド本を何度も何度も確認しながら、子どもたちや妻、なにより道が間違ってないかという疑念が湧き上がってきた自分に「大丈夫」と言い聞かせていました。
長女はこのまま野宿かと思うほどの不安感を感じていたたみたいです。
「トンネルが来たら、一気に下り坂になるから。そこまで頑張ろう。」
それでもなかなか見えて来ない峠のトンネル。
元気なはずの三女がどんどん歩みが遅れはじめるました。
長女も次女も妻も不安そうになんとか力を振り絞っています。
早くトンネルを見つけたい僕との距離がだんだん開いていっていました。
その先に道が吸い込まれていくブラックホールを見つけたときには、ルートが合ってたんだと確信して弾んだ声で後ろに叫びます。
「トンネルが見えたよ~!」
トンネルは狭いのに案外交通量が多いので、車が途切れた時に急いで進みます。
今日一番に危険だと思った場所でした。
車が来ないうちにみんなが渡り切れますようにと願いながらいきました。
結果何事もなく車が来る前に通り過ぎることができたのですが、トンネルの向こう側で急停止した次女にぶつかりそうになって、「あぶないだろ」と怒ってしまいました。
いつもなら怒ることもなく諭してくれるはずのお父ちゃんに怒られ、「あの時、お父ちゃんはちょっと怖かった」と次女が後でポツリ。
危険な場所で神経とがらせていたこともあるけれど、僕自身の余裕がなかったのだなと反省。次女をはじめ、みんなごめんね。
やりたいことをやることも大事だけれど、詰め込み過ぎで頑張り過ぎてしまったことも課題で、もっとゆるゆるな設定でいきたいなと思いました。
そこからはかなりの斜度の下り坂でした。
「みんなに自分のペースでおいで」とだけ伝えて、僕が最初に飛び出しました。。
ブレーキを必要以上に効かせながらも、あっという間に坂道を下っていきます。僕も三女も「気持ちいい」と叫びながら風を切って走りました。
さぞかしみんな気持ちよく下ってくるだろうと分岐点で待っていたのですが、妻からだいぶ遅れて辿り着いた子供たちが、追いつくやいなやものすごい剣幕で怒りをぶつけています。
「待ってっていったのに!」
「裏切り者!」
妻は妻で後ろを振り返る余裕がないことはわかります。
この時の僕には、しっかりと話して伝えようと思う余裕が戻ってきていたのだと思います。
「お母ちゃんもね、重い荷物をもっていて少しでも速く進みたい気持ちがあるんだよ。見えなくなっても待ってるんだから、みんなが自分のペースで来てくれればいいんだよ」と。
次女が返します。
「そんなこと言ったって、真っ直ぐじゃなく曲がっていってしまったらどうするの!? 置いていかれちゃうじゃないか!」
「絶対そんなことはないよ。父ちゃんと母ちゃんがあなたたちのことをどれだけ大切に思ってるか知ってるよね。絶対置いて行ったりしない。曲がる場合には必ずそこで待ってる。だから安心して来てほしい。そして母ちゃんは母ちゃんのペースで進むことを許してほしいんだよ。」
次女は、怒りをおさめて、小さな声で「うん、わかった」と答えました。驚くほど素直な反応でした。
そうかそれが怖かったのか。見知らぬ土地で親の背中が見えなくなるんだもの。不安に決まってるよね。
そのうえでちゃんとこちらの思いも伝わり、わかりあえたことがとても嬉しかったです。
下りきってしばらく海岸線を走ると、思ったより早く宿泊地のグランドームが見えてきました。
よかった~と、心から安堵しました。
到着時刻はちょうど18時でびっくり。もっと時間がかかるような気がしてたので。
チェックインして、「ライム」という部屋名のドームテントへ向かいます。
うわ~☆
テンション下がってたみんなも、ドームテントに入った瞬間から一気に上がりまくりです。
よかったよかった。
30分ほど休んで、夕食の準備。
今回の旅では「食事作りで母ちゃんを休ませてあげたい」という企画でもあったので、僕と子供たちでやります。とっても疲れてるだろうに、お手伝いしてくれてありがとう。
みんな~、ほんとによく頑張ったよね。お疲れ~。
バーベキューで鯛を焼いて食べたんだけど、これがみんなに大好評。
長女と次女は、片付けまでしっかりとやってくれました。
歯磨きに行くだけでも、ランタン持ってちょっとした冒険気分。
たいしてゆっくりする間もなく、夜が更けていきます。
ほんとになかなかハードな一日だったと僕の身体も訴えています。
それ以上にみんなの疲労度を見ていると、明日はもうちょっと本気で軽減方法を考えないとなと思い、朝からサイクルタクシーへ連絡しておきました。
みんな、おやすみ。ぐっすり寝てね。
疲れすぎたのかなかなか僕は眠れなくて、何度も翌日のシュミレーションをしていました。
たまたまお友達からお葬式のやり方についての相談があったので、それに乗ったりしていたら、いつの間にか寝ていました。
つづく
(後編はこちら)