Eテレ・おはなしのくにスペシャル「幸せとは」 | よっ、大統領!

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てきとーなこと書いてます。

おはなしのくに「幸せとは」。

 

安藤サクラ・古川雄大、Eテレ「おはなしのくにスペシャル」で“幸せ”問うおはなし

 

オーヘンリー『賢者のおくりもの』とオスカーワイルドの『幸福の王子』の二本立て。

『賢者のおくりもの』は安藤サクラさん、『幸福の王子』は古川雄大さんが一人で演じる。

 

***

 

子供の頃、子供向けに書かれた『幸福の王子』を読んだことがある。

当時はピンとこず、一度読んでそれっきりだった。

でも、大人になってから偶然もう一度読んで、

涙がとまらないほど感動した。

 

貧しい人たちに自分が持っている宝の全てを与えた王子に感動!

―ではなく。

 

王子のために渡りをやめ、寒い国に一人(一羽)残って、

ひたすら王子に尽くし続けた挙句、

死んでしまった渡り鳥!

―に感動した。

 

作者がどういうつもりで書いたのかは知らんけど、

私にとって『幸福の王子』は

報われない恋の物語だ。

カテゴライズ的には『人魚姫』の系譜。

『人魚姫』・・・

人魚姫が愛する王子は能天気。

いつもそばにいて、王子ひとりを見つめている人魚姫の一途な想いに気付きもしない。

 

少なくとも私が読んだ子供向けに書かれた『幸福の王子』の王子は、

『人魚姫』の王子と同じ。

すぐそばにいて、自分に愛を注いでくれる存在には目もくれず、

遠くの貧しい人ばかり見ている。

 

『人魚姫』の王子は、最後にどこかの国のお姫様にプロポーズする。

私が読んだ本には「お姫様を人魚姫と間違えた」と書いてあったけど、

原作はどうなのかな?

いずれにせよ、王子はすぐそばにいる人魚姫ではなく、

どこかの国のお姫様を選ぶ。

 

『幸福の王子』は特定の誰かを選ばない。結婚もしない。その点は『人魚姫』の王子とは違う。

だが、この王子も、人魚姫の王子と同じ。

寒い冬にただ一羽残った鳥ではなく、

遠くの貧しい人を見て

「かわいそうにかわいそうに」

といつも心を痛めている。

王子が微笑むのは、

鳥が王子の身に着けている美しい装飾を剥いで

寒い空の下、貧しい人のところに行ってそれを渡した時だけ。

だから鳥は、寒くてもおなかが空いても

仲間がみんないなくなってひとりぼっちでも

王子のために冬の空を飛び続ける――

 

『人魚姫』の人魚も、

魔女からもらった足で歩くたび、

激しい痛みを感じた、と書いてあった。

『幸福の王子』の鳥も、

厳しい寒さの中を飛ぶ。

 

人魚は痛くても平気だから?

その鳥は、他の仲間と違い、寒さに強かったから?

 

違う。違うよね。

 

違うんだよ!

 

ああ、もどかしい!

どっちの王子も、鈍すぎるわ!

 

***

 

結局、一人泡となってしまう人魚と違い、

鳥には少しだけ、

ほんの少しだけ救いがある。

 

最後に鳥は王子の足元で死に、

その瞬間、王子の鉛の心臓は音を立てて割れる。

 

今までさんざん

「ああ貧しき者たちよ、かわいそうにかわいそうに」

と言い続け、胸を痛めてきた、優しい王子。

それでも王子の鉛の心臓は

ヒビすら入ることはなかった。

その心臓が、割れた!――

 

王子、遅いよ!遅いんだよ!

 

遅まきながら、

たぶん何かに気付いたらしい王子の鉛の心臓は割れて、

ボロボロになった王子の像は、

人間によって捨てられ、燃やされる。

 

私が読んだ本には、

『鉛の心臓と鳥の死骸は一緒に捨てられ、燃やされました。

炎の中で

鉛の心臓はハートの形になり、

鳥を優しく包みました』

と書いてあったように記憶している。

王子も鳥も天国には行かず、

王子の心臓はハートの形になって、

燃やしても燃え尽きず、

ずっとこの世で

永遠に

鳥を抱きしめ続けている、みたいな。

 

「おはなしのくに」のラストは、

死んだ鳥と捨てられた王子の像は天国に行き、

幸せに暮らしました、となっている。

鉛の心臓がハートになり・・・・・・というくだりはない。

 

どっちが原作に近いんだろう?

オスカーワイルドは欧米圏の人みたいだから、

たぶん最後に天国に行く「おはなしのくに」のラストの方が

原作に近いんじゃないかと思うけど。

 

原作を直接訳したらしいサイトがあったのでリンク。

幸福の王子 原作:オスカー・ワイルド 翻訳:結城浩

 

 

上記サイトでは「天国に行った」とある。

やはり天国に行ったっぽい。

 

***

 

というわけで。

私は、

今思えば、

最初に読んだ翻訳書の「最後はハートになって」云々の影響もあったのか、

『幸福の王子』は恋愛の物語だと思っていた。

 

それで、自然と

「王子=男」「鳥=メス(女)」

と勝手に思い込んでいた。

 

だから、「おはなしのくに」で、王子と鳥を男性の古川雄大さんが、男性として一人二役で演じているのを見て、驚いた。

 

「いやいやいや! BLかよ、Eテレ!」

 

と。

 

「『腐女子の幸せとは』、かよ!」

 

と。

 

「別にいいけど、子供向け番組でいいのか、BL流しても?」

 

と。

 

でも、

イケメンの古川雄大演じる若い燕が

イケメンの古川雄大演じる美しい王子の像に

「私はあなたのために」

「私はあなたのそばに」

と震えながら凍えながらそっと寄り添う画面を見てると、

 

「ああ、いいな~、これも♪」

 

と納得してしまった。

 

というか、むしろ、これが正しいのかもしれない。

 

美しい古川雄大(王子)と、

美しい古川雄大(燕)の

美しい純愛。

 

よっしゃBL、バッチ来い!

 

そういえばオスカーワイルドは男色の唯美主義者だったという噂がある。

 

古川雄大に二役させたNHK。

彗眼。

 

結論:Eテレのおかげで新しい世界が開けたわ。知らんけど。

 

評価:★★★★★(5/5)

 

 

 


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