テーマ:クラシックロック(754)
カテゴリ:洋ロック・ポップス
バンド黄金期の超名盤
そもそも、ザ・キンクス(The Kinks)は、ビートルズやローリング・ストーンズのように音楽ファン以外にまで広く知られるわけでもなく、“不当に過小評価を受けてきたバンド”の典型例だと言える。それゆえ、忘れ去られぬよう広く聴き継がれ、その評価が長期的には変わっていってほしいと切実に思う。それでもって、聴き継がれるには、初めてこのバンドを聴く人にとって入口となる盤はどれか、という話は重要であろう。なんだか回りくどくなってしまったけれど、要するに本盤『マスウェル・ヒルビリーズ(Muswell Hillbillies)』は、キンクスを初めて聴くという場合の最初の一枚としてお薦めの最有力候補の一つではないかという話である。 キンクスの最盛期は、1966~67年頃から1972年と言われる。アルバム作品で言うと、『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ』(あるいはその前作の『サムシング・エルス』)から『マスウェル・ヒルビリーズ』ということになる。筆者個人としては、1970年代の残りの期間の作品にも愛聴盤が複数あり、キンクスの隆盛はまだまだ続くと言いたくなることもあるのだけれど、世間的にはこのように言われるのが一般的である。つまるところ、この作品は、キンクスが最も才能を発揮していた時期の最後を飾る盤で、なおかつバンドの最高傑作と称される盤というわけである。 一言でいえば、ブルースやカントリーといった米国音楽の英国的アダプテーションということになるだろうか。音楽的には米国風なものが随所に見られるのだけれど、トータルでは英国風なのである。かつキンクスらしいコンセプト・アルバムになっているうえ、現代社会を風刺的に描き出すレイ・デイヴィスのソング・ライティングが光る。これほど成功する要素がうまく揃うことは、長く広い音楽業界でもそうそう簡単に起こることがない。そう思えるほど、こうした諸要素が調和し、一つの作品に昇華している。 筆者のお気に入り曲を少し挙げておきたい。まず、20世紀から逃避したいと歌う1.「20世紀の人」。この曲のように、現代社会の生きづらさの嘆きやそこからの逃避といったテーマを皮肉っぽく詞にするレイ・デイヴィスの真骨頂は、本アルバムのあちらこちらに顔を出す。6.「複雑な人生」は、厄介事を切り捨ててシンプルに生きようという、21世紀の現在においても、忙しい現代人には必聴のナンバー。こんな内容をこういう風にまったり演奏してのけるところが何よりの魅力だと言える(ちなみに、まったりした演奏という点では、2.「パラノイア・ブルース」も筆者のお気に入りだったりする)。あと、何が何でも聴き逃がせないのは、アルバムのラストを飾る表題曲の12.「マスウェル・ヒルビリー」。カントリー・ロック風の曲調にのって、ロンドン郊外のマスウェル・ヒルビリーという小さな箱の中に閉じ込められても、画一化されたゾンビーなんかになるものか、という詞の内容。これもまた、“みんな平等”という名のもとの画一化が幅を利かせ続けている今の日本社会への批判としても聴き継がれたいと思うナンバーだったりする。 すっかり長文になってしまったが、最後に、本盤のジャケット・ワークが秀逸なことにも触れておきたい。収録曲の内容とともに、ジャケット(表面・内面とも広げた形の写真)もまたロック史上、最高レベルのものだと個人的には思っていたりする。 [収録曲] 1. 20th Century Man 2. Acute Schizophrenia Paranoia Blues 3. Holiday 4. Skin and Bone 5. Alcohol 6. Complicated Life 7. Here Come the People in Grey 8. Have a Cuppa Tea 9. Holloway Jail 10. Oklahoma, U.S.A. 11. Uncle Son 12. Muswell Hillbilly ~以下、CDボーナス・トラック~ 13. Mountain Woman 14. Kentucky Moon 1971年リリース。 マスウェル・ヒルビリーズ+2/ザ・キンクス[SHM-CD]【返品種別A】 マスウェル・ヒルビリーズ +2 [ ザ・キンクス ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021年11月30日 04時51分20秒
コメント(0) | コメントを書く
[洋ロック・ポップス] カテゴリの最新記事
|
|