ワーナー・ブラザースは今年の新作映画を、アメリカでは劇場公開と同時にインターネット
配信すると発表して物議を醸していますが、「ダークナイト」「インセプション」の
クリストファー・ノーラン監督は、AP通信のインタビューで、「スタジオによる一方的な
決定で、関係者になんの相談もありませんでした。輝かしい映画スターを起用した長編映画を
目指して、何年もの時間をかけて情熱を傾け勤勉に仕事をしてきた偉大な映画製作者たちは、
駆け出しのストリーミングサービスの客寄せ商品にされてしまうことを知らされたのです。
それは正しいビジネス判断ではなく、すべてが混乱しています。」と苦言を呈していますが、「ローマ」「アイリッシュマン」「マリッジストーリー」等数々の映画賞に輝くオリジナル
映画を配信してきたNetflixの協力を得て、30年温めていた企画「マンク」を完成させた
デビッド・フィンチャー監督(「代表作「セブン」「ソーシャル・ネットワーク」)の、
「現在、ストリーミングサービスがなかったら、カルチャーとしての映画が作られることは
あまりなかったんじゃないかと思っている。下手をすると劇場は、マーベルのような映画ばかりになっていたかもしれない。そういう時代にストリーミングサービスの果たす役割はとても
大きくなったと思う」と言う意見もあり、ストリーミングサービスを一概に悪とは言えない
状況にあるのも事実です。
デビッド・フィンチャー監督の6年ぶりの新作「マンク」は、「市民ケーン」の脚本で
アカデミー賞を受賞したマンクの愛称で知られるハーマン・J・マンキウィッツが、
「市民ケーン」を執筆するまでの経緯を、当時の世界恐慌に喘ぐアメリカ映画界と政治状況を
背景に描いた作品で、アメリカ映画界にも影響力を持っていた「市民ケーン」のモデルに
なった新聞王ハーストと、急進的な改革を打ち出して、貧困な労働者の指示を集め、
民主党からカルフォルニア州知事選に立候補したアプトン・シンクレア(「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の原作者)が、ストーリーの中核となっています。
※インタビュー出典;Yahoo!ニュース、映画.com
サンシメオンの集会室でのルイス・B・メイヤー誕生日パーティーでの、
シンクレアに関するマンクとメイヤー、タルバーグの論争場面より
※ ルイス・B・メイヤー(MGMの共同創始者)、アービング・タルバーグ(映画プロデューサー)
ルイス・B・メイヤー「シンクレアは悪戯に市民を煽ってる。」
マンク「それは市民に考えさせるためだ。」
アービング・タルバーグ「君はいつも彼の肩を持つ」
「この不況に週5千ドルも貰っておいて、弱者のつもりか!」
メイヤー「奴は赤だ。」
アービング「俺もそう思う。」
マンク「アービング、あんた程の知識人だったら、共産主義と社会主義の違いを
知っているはず。
社会主義はみなで富を分け合うが、共産主義はみなで貧乏を分け合う。」
「シンクレアは、あんたのクリスマスボーナスを、家の掃除をしてくれている人々に
分け合おうと言っているだけだ。」