昨年末の最終回に、夫婦喧嘩は必ずしも悪いことではないという話をしました。

 

前回の話は、夫婦喧嘩は、夫婦の間に何らかのバグ(不具合)が発生していることを知らせているにすぎません。そのバグを、その都度適切に修正していくことで夫婦関係はアップグレードし続けるわけで、夫婦喧嘩を避けてばかりいると、バグが修正されないままたまっていって、最悪の場合、システムクラッシュに至ることのほうが怖いという話でした。

 

今回は、上手な夫婦喧嘩の心得パート2として、夫婦喧嘩の実践編をお話ししたいと思います。

 

双方の主張が平行線のまま、いっこうに落としどころの見えない夫婦喧嘩を経験した夫婦も少なくないでしょう。何時間怒鳴り合っても、罵倒し合っても、お互いに気分が悪くなり、翌日寝不足になるだけで、何にもいいことがないと思っている人も多いかもしれません。でもそれは、夫婦喧嘩の仕方が下手なんです。

 

上手な夫婦喧嘩にはコツがあります。

一言でいえば、「無理に結論を出さない」ということなんです。

 

繰り返します。夫婦喧嘩の目的は、バグを発見することです。お互いに、言いたいことを言って、それぞれの立場から見えるバグを指摘したらおしまいにすればいいんです。下手に結論を出そうとするから、余計にこじれるのです。

 

結論を出さなきゃ何も変わらないじゃないかと思うかもしれませんが、大丈夫なんです。

 

お互いの問題意識をお互いの脳にインプットすれば、あら不思議! そこから先は、無意識が勝手にいい落としどころまで2人を導いてくれるという不思議な現象が起こるんです。私はこれを「無意識の歩み寄り」と呼んでいます。

 

たとえば夫が深夜0時に帰宅して、そのことを妻がとがめ、喧嘩になったとする。妻は夫が浮気していないか不安だし、育児の愚痴を聞いてもらいたかったという気持ちもある。一方、夫は取引先との接待で、大してうまくもない酒を飲み、2次会、3次会と連れ回されてぐったりきていたとする。

 

そんなとき、妻は自分の不安と夫への期待をそのまま伝えればいい。夫は自分がどんなに大変な思いをして疲れているのかをそのまま伝えればいい。どっちの主張が正しいかを判定する必要はありません。その日はそのまま寝る。

 

寝ている間にも無意識は活発に活動しています。夫の無意識は「ああ、彼女は不安だったんだ。このところちゃんと話をする時間もなかったしな」なんてことを考える。妻の無意識は「そうよね。彼だって疲れているのよね。あんな言い方をしなければよかった」なんて反省したりする。

 

そうしているうちに、無意識が、本人の言動に影響をおよぼし始め、夫は自然に早く帰宅して妻の話を聞くようになったり、妻も無意識のうちに気持ちの伝え方に気をつけるようになったりする。そうしてお互いに何をどうしたという意識をしないうちに、バグが修正されます。

 

派手に夫婦喧嘩をして、そのあと数日間口も聞かず、しょうがないからいつの間にか仲直りしたあと、しばらくしてみるとなんで喧嘩をしたのかもはっきりと思い出せないという経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。

 

時間が解決したと表現することもありますが、実は、時間をかけて、お互いの無意識が歩み寄ったということなんです。それをくり返すことで、喧嘩のたびにわざわざ結論を出さなくても、小さなバグは修正され、夫婦関係は進化していきます。

 

ぜひ建設的な夫婦喧嘩を積み重ねて、お二人だけの素敵な夫婦関係を育てていってください。

 

※2022年1月13日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。