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第910回田辺寄席(最終回)

2023年04月09日 17時11分01秒 | 落語・講談・お笑い
大阪最古の地域寄席、49年間の歴史に幕 「田辺寄席」3月で終了 _ 毎日新聞

学生時代から社会人になってしばらく、
「田辺寄席」は頻繁に通った落語会だった。
顔ぶれはそこそこ良く、非常に安価で、客席と高座が近い。

仕事が忙しくなり、まして「新型コロナウイルス感染症」などというライブ活動の阻害される状況になって、
落語会はご無沙汰してしまっていた。

ただ最終回というこのニュースを目にして、
久し振りに行ってみることにした。

整理券を受け取り、会場の周りや展示物を色々と見る。
ここで見たが、既に亡き3代目や松喬、松葉、吉朝、鶴志といった方の写真もある。


「開口0番」(文太):△+

久し振りに見たが、あまり老いを感じない。

田辺寄席に40年以上出演し続けている文太にとって、
「最終回」というのは思い入れがあるものでは、と思っていたのだが、
非常に淡々と喋っている。
「落語会というのは、始まりがあれば終わりもある」という感じ。
世話人の大久保さんが亡くなった時点で、ある程度諦めていたのかも知れない。

文太が言い出した(「開口一番」の前、という意味の)「開口0番」について少し喋り、
下座に出囃子を弾いてもらって舞台の上で笛を合わせて見せる。
「廓丹前」「船行」「野崎」など。
文枝(当然先代)が襲名前にNHKホールで撮った録音(「立ち切れ」じゃないかな)の
放映が襲名後になり、後から「廓丹前」で出たように合わせた話など。

笛や三味線は流石なのだが、下座の太鼓のリズム感が酷過ぎる。
このあたりの曲、聞いていないのだろうか?


「いのちのおうどん」(鞠輔):△-

女性。恐らく、見るのは初めて。
確か繁昌亭の落語教室の先生だった師匠に弟子入りした、という人じゃなかったかな。

ネタは全く分からない。メッセージ性はあるっぽいが。
子どもが二人出てくるのだが、まず、この二人の人物描写が全く出来ていない。違いが分からん。
二人の気や気持ちの変化が見えないし、上下や目線での位置関係といった技術的なものが皆無。
声が一本調子でハンデがあるのだから、何とかしてくれ。

プロなんだからきちんと勉強して欲しい。まず落語をきちんと見たら?
まあ、師匠選びが(略


「天王寺詣り」(文太):△+

淡々と会話し、進んでいく。
でも位置関係が明確できちんと風景が見え、登場人物それぞれの年齢やハラが分かるのだから、
これがプロというものでしょう。


「義士外伝 山岡覚兵衛の妻」(旭堂南華):△+

この人も聞くのは久しぶり。
以前聞いたときは細かいカミ・トチリが気になったのだが、
この日は特に気にならなかった。
講談の力強さと、女性らしい柔らかさがマッチした良い高座。


「愛宕山」(文太):○-

大阪と京都の違いのあたりは、濃く描かずに中で持たせている。
山登りも特にクサく演じる訳ではないが、ポイントポイントで疲れを入れたり、
姿勢を変化させることできっちりと伝わる。

この旦那が非常に良い。
小判を投げるところも挑発に押される感じではなく、
最初から計画的に(実際、そのつもりで持ってきている)投げている。
かわらけのように投げられるかどうか、色々試してみた挙句、普通に「行こうか」となる。
旦那の理屈や価値観が終始一貫している感じ。

そこに大阪の幇間2人が絡んでいく訳だが、
こちらも悪くはないが、華は弱い。
戻る場面など、もう少し動きを大きくしても良いかも。

戻って来た場面での旦那もあっさりと。
勿論、もっと濃く驚きの描写を入れた方が、下げの落差が大きくなって分かりやすいだろうが、
まあ、それをやらないのがこの人の持ち味ではある。


「抜け蟹」(文太):○

元は「抜け雀」だが、小田原から坂下宿(鈴鹿峠の下)に舞台を移している。
小田原なのに何故上方言葉?という疑問への対応になっている。
その他「雀」でなく「蟹」にすることに伴う様々な設定の変更、サゲも変わってくる。
サゲは「蟹」に伴うこのネタの方が、
「駕籠かき」の説明をしてしまいがちな「抜け雀」よりも良いのでは、と思う。

「養子」の繰り返しは文太の遊び。
これは好き嫌いがあるでしょう。

この人は、「天王寺詣り」や「愛宕山」よりも、こういった変わったネタの方が生き生きしているなあ…。


最後、大阪締めで終わり。

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