「インバウンド・ルネッサンス 日本再生」

池上 重輔、早稲田大学インバウンドビジネス戦略研究会 著

 

 

 ■インバウンド観光の課題

1:どのような客をどれぐらい誘客するか、どの程度収益化するかの戦略

2:低単価から高付加価値化

3:観光産業におけるグローバルブランド化

 

■インバウンドアウトバウンドループ(IOL)

1観光客・ビジネスパートナーなどを海外から呼び込む

2日本・地域・サービスとの接点を高め日本のファン化

3日本に滞在

4帰国し日本製品・サービスを継続購入

5再び日本へ

 

・観光事業者と非観光事業者が連携して地域の魅力を高めることを重要視

・3つのループ

-観光における国内、海外のループ

-観光事業者と非観光事業者のループ

-非観光事業者における国内、海外のループ

 

■事例1:燕三条地域(新潟)

・産業観光:工場の祭典(工場を解放して製造現場を見せる)

・人材育成:若手デザインコンペ、学生インターン

・販路開拓:海外向け見本市、出展、販売

・台湾をターゲットに自然とモノづくりの観光資源

・海外のデザインアワード受賞

・ネーミング:新潟県央地域から「燕三条」へ

・広域連携:燕市、三条市、高岡市、越前市

 

■事例2:北海道

・十勝のワインアカデミー(高価値化)

・十勝のチーズブランド(品質保証を地域で構築)

・お菓子産業(北海道限定ポジショニング)

・白い恋人パーク(製造過程やお菓子作り体験、工場のテーマパーク化)

 

■事例3:富山県

・宿泊しなければ体験できない「富山の朝ごはん」

・職人に弟子入りする宿(木彫り体験)

 

■事例4:岡山県倉敷市

・国内初のジーンズ生産によるジーンズストリート

・ジーンズミュージアム、体験工場

・課題:交通網(倉敷駅から50分)

 

■事例5:瀬戸内しまなみ海道

・体験型サイクルツーリズム

・定住人口以外の交流人口の拡大

・地域連携(レンタルサイクル事業、観光団体、自動車道、協議会など)

・国際サイクリング大会の開催

・課題:サイクル目的の人は消費も滞在も少ない

 

 

■各地域の魅力構築(IOLを前提とした戦術のカギ)

 

・差別化要素:自分達のうりは何か

・儲け方:どこでどのようにコストを回収するか

・顧客の明確化

・地域のポジショニング:どのように認知してほしいか

 

1経験価値化:

・顧客が良いと感じるような顧客経験のデザイン、コト化

・サービスドミナントロジック

・顧客と共に作る意識(共創)

 

2地域連携のマネジメント

・リーダーの存在、仲間の拡張

・相互の信頼(時間的にもコミットが必要)

・協業の目的の明確化

 

3高付加価値・高価格化

・機能×情緒的価値の構築へ

・外部の評価による高価値か

・枯渇感、希少性

・顧客の選択(価値理解のある顧客との共創)

 

■観光ビジネスモデルの高付加価値化

>第1段階

・ターゲット:マスからアッパーミドル・富裕層へ

・コンテンツ:そこにしかない固有の体験を高単価に

・受け入れ:小グループで数日から1週間程度の滞在

>第2段階:上質化によりリピート率の向上、収益性の向上

>第3段階:利益拡大からコンテンツなどへのさらなる投資へ

 

・受け入れオペレーション設計

・FIT取り込みの二次交通

 

■ガストロノミーツーリズム

歴史や哲学などの文化的要素と食を総合的に理解する

 

・定義:土地に根ざす食材や料理とそれを生み出す風土や歴史などの文化的要素との掛け合わせからなる固有の食文化を体験を通じて総合的に理解する旅行

・高級食材に限らない(うどんやラーメンなども)

・土地に固有の食文化こそが価値、本物感

・通常の観光客でも三回は食事をとるため、観光産業に食は不可欠

・ただの欲求ではなく旅行先を選択する第1の条件になるもの

・食関連資源のリストアップ(調理方法、習慣、道具など)

・その土地の歴史や文化と関連したストーリー

・イベントの重要性(地域住民や観光客の結びつけ)

 

■富裕層ラグジュアリーツーリズム

・個人資産100万ドル(1億円)以上を高所得者層。世界で1600万人(クレディスイス)

・世帯年収15万ドル(1650万円)以上の旅行者(ラグジュアリーツーリズム)

・1包括性(カスタマイズされた最高の体験、安全で快適な移動や宿泊)

・2排他性(希少性、入手困難性、高価格)

 

■日本の観光協会と米国型DMOの違い

・言語:「日本語のみ」/「英語、その他外国語」

・セールス:「セールスのみ」/ 「顧客ニーズを満たすマーケティング」

・財源:「地方政府の一般財源」 / 「政府や納税者への負担はなし」

・KPI:「観光客数」/ 「地域経済への経済効果」

 

■日本観光学術会の位置

・観光、ホスピタリティ経営分野で国際競争力は低い(世界30位)

・観光学部のカリキュラム問題

 -経営(会計、マーケティング、人事、戦略)、統計、英語

 

■ツーリズムリーダー

・必要な要素は、アート(リベラルアーツ、歴史、文化)、サイエンス(体系化された知識、戦略、マーケ)、クラフト(経験)

・マーケティングによる地域の売りと顧客ニーズを踏まえた観光コンテンツづくり