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中国に騙され続ける日本人の愚かさ

『月刊日本』2023年1月号 酒井信彦の偽善主義を斬る   2022年12月22日

 10月30日、中共の江沢民元主席が死去した。93歳であった。翌12月1日の新聞各紙に詳しく報じられているが、産経新聞と朝日新聞とでは、その印象はかなり異なる。産経は一面トップの縦見出しで、「中国の反日を強化」と打ち出し、他の縦見出しでも、「96歳 経済開放 民主化認めず」「権力欲 集団体制ゆがめる」と、否定的側面を強調し、2面肩の記事で、「歴史戦 火ぶた切る」「各地に抗日記念館増設」と掲げて、さらに追及している。

 一方、朝日は、1面のトップではなく肩の記事で、見出しは「江沢民元国家主席死去」「96歳 中国の経済発展推進」と地味であった。

 ポイントである歴史問題は避けられず、この1面の記事での次のように述べている。「外交面では対米」関係を改善し、97年に国家主席として12年ぶりに米国公式訪問を果たした。一方、対日政策では歴史問題を重視し、抗日戦争の勝利を強調する愛国教育を強化。中国国内の反日感情を強める結果を招いた。98年に国家主席として初めて日本を公式訪問した際、宮中晩餐会で歴史問題に言及し、日本国内で反発を呼んだ」。

 この記事の記述から明らかなように、「愛国教育」というのは名ばかりで、その実態は日本だけを標的とした、「反日教育」正確に言えば、「虐日教育」なのである。それはアメリカとの対比で明らかである。日本との戦争の後で、朝鮮戦争においてアメリカと戦っている。そもそも日中戦争の中国側の主役は、中華民国であって中華人民共和国は存在していなかった。また帝国主義時代に中国を侵略した最も中心的国家は、大英帝国・イギリスであるが、イギリスに対して恨みがましい非難をしたこともない。結局先に述べたように、唯一の攻撃対象とされたのがわが日本なのである。

 さらに12月1日、3面の古谷浩一論説委員による、江沢民の「評伝」では、さらに批判的な要素を加えて、次のように述べている。「急速な経済発展は深刻な『貧富の格差』を生んだ。人々の不満が鬱積してゆくなか、イデオロギーを失った党の求心力を維持するために『愛国教育の強化』を推進した。その過程で生まれた偏狭なナショナリズムが、中国の若者たちの反日感情を刺激した。日中関係が受けた影響は大きい。98年の訪日でも示されたように、江氏自身も日本に対して歴史問題での強いわだかまりを持っていたようだ」。この最期の部分は明らかにおかしい。歴史問題は、江沢民個人の問題ではなく、以下に述べるように、中共の基本的な国家戦略であるからだ。

 戦後の中共の対日態度の歴史を振り返ってみると、50年前の日中国交成立時には、異常なまでの「日中友好」が謳われ、日本中に「日中友好協会」が成立した。さらその際に徹底的に利用されたのが、「最大の政治的動物」であるパンダであった。本来、シナ人によるチベット侵略の象徴であるパンダに、歴史に無知である日本人は単純に騙されてしまった。

 つまり日本人をだまして利用する政策は、国交成立の時から始まっていたのである。

 その後、鄧小平時代は日本の新幹線技術などを積極的に吸収して、経済成長を成し遂げた。ただし有名な「韜光養晦」のように、ずっと猫をかぶり続けていた。それが後継者江沢民の時代になって、遠慮することなく、日本に対して本性を現すことになったのである。その端的な表れが、98年に国家元首として初めて日本を公式訪問した際に、最も神聖な場である宮中晩餐会の場において、歴史問題すなわち虐日政策をぬけぬけと主張した。考えられないほどの、外交的な非礼である。

 この虐日路線は、胡錦涛時代にゆるんだ時期もあったが、尖閣問題などで、大規模な反日の官製デモが繰り返され、日本企業は甚大な被害を受けたが、結局、泣き寝入りの状態に追いこまれた。 現在の習近平政権は、江沢民政権をバージョンアップしたものなのである。

 それにしても、国交50年でここまでシナ人にやられ続けて、まだ気が付かない日本人の愚かさは、例えようもなくすさまじい。これはシナ人の手先となって日本人をだまし続けてきた日本人が、存在するからである。その代表が、広岡知男社長の「歴史の目撃者論」に端的に表れた、朝日新聞に他ならない、その他には国益を考えず経済利益に目を奪われた経済人や、政治家も同罪である。

 ただしこの状況を正確に認識していた日本のメディアも存在した。産経新聞は以前から、歴史問題を「歴史戦」と正確に表現している。武器を使わない戦争であるから、「情報戦」「思想戦」「心理戦」である。しかし愚かな日本人には、その自覚がまるでない。これらの戦いにおいても、「白痴的平和主義」に陥っている。

 

sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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