【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

選挙の○○

2021-10-26 12:34:50 | Weblog

 今回の自民党の総裁選は「選挙の顔」を選ぶ選挙だったそうです。だけど不思議です。今月末の総選挙、「岸田さんの評価」はできないでしょう? だってまだ実績はありませんもの。評価するとしたら「安倍内閣」「菅内閣」の実績の方。
 「選挙の顔」が岸田さんだとしても、「選挙の下半身」が誰かが問題なのではないかなあ。

【ただいま読書中】『認知症患者安楽死裁判 ──事前意思表示書か「いま」の意思か』盛永審一郎 著、 丸善出版、2020年、2600円(税別)

 本書出版の時点で安楽死が法的に認められている国は、オランダ(2002)、ベルギー(2002)、ルクセンブルグ(2009)、コロンビア(2015)、カナダ(2016)、オーストラリアのヴィクトリア州(2019)。致死薬の提供が合法とされているのはスイス・アメリカのオレゴン州など9つの州とコロンビア特別区(1997)、ドイツ(2015)です。日本では嘱託殺人や自殺幇助は禁止されています。
 もちろんオランダでも、殺人・嘱託殺人・自殺幇助は法律で禁止されています。ただ、30年の議論の末誕生した「安楽死法(通称)」で定められた「注意深さの要件」を満たした場合、違法性が阻却されるとされました。
 2016年に一人のアルツハイマー型認知症の人が安楽死の処置を受けました。アルツハイマーと診断がされたときには「認知症がひどくなったら安楽死を希望」という事前承諾書が作成されていました。ただ、「その時には本人が明示的に希望する」とあったのですが、認知症がひどくなって本人は何もきちんと判断できない状態だったため、その手続きは省略されました。検察はそれを「法的な要件を満たしていない」と見ました。さらに点滴の針を刺すときに一瞬腕を引っ込めた動作が「死を拒否する行動」とも検察は主張しました。
 つまり「認知症になりつつある人が作成した安楽死の事前承諾書」よりも「認知症がひどくなった人の判断がきちんと得られていない」ことが問題とされ、安楽死法の要件に関する裁判が初めて起こされたのです。
 地方裁判所は医師に対して「無罪」の判決を下します。検察は最高裁に控訴しました。ただし医師の無罪については争わず、「注意深さの要件」に関して最高裁の検証が必要、という理由を挙げています。「判断能力がない人間にも生きる権利はある」「患者が『いま現在』望んでいることを無視してよいのか」「判断能力がなくなった人が事前の安楽死の要請を撤回することはできない、という地方裁判所の判断は正しいか」が検察が挙げた論点です。
 本来安楽死で重要なのは「絶望的な苦しみの存在」と「死にたいという本人の強固な意思表明」です。では、苦しみや意思が周囲から推測するしかない状況の場合は? しかも本人が過去に「こんな状況になったら安楽死をしたい」という正式な文書を残していたら? こんな状況で「安楽死をするか」の決断を迫られたら、私だったら逃げたくなりますね。
 「正式な文書さえあればよい」という形式主義が徹底されると「書類さえあれば本人の意思はどうでも良い」となってしまいます。これで怖いのは、知的障害者や精神障害者、あるいは“劣等民族"に対しての安楽死が「書類はある」で堂々と敢行されてしまうこと。こういった極論についてもきちんと議論をしているのですから、西洋の「知の態度」はすごいと思います。日本だったらすぐに感情に流されてしまいそうなので。

 



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