白水ま衣さんの歌について | 日々のちいさな記録帳
私は、2016年頃から、短歌を始めた。(思い付いた時にぽつりぽつりという、具合に詠んでいる)

そして、昨年、生まれて初めて歌会というものに参加した。

福岡歌会(仮)という、結社の垣根なく集まれる歌会だ。

そこで出会った白水ま衣さんと言う方の歌に心引かれた。

「清潔なロビーのようなこのひとの心に落とす夜のどんぐり」

「塔」2017年5月号 白水ま衣

白水さんの歌は、美しい余韻を持たせつつ作意を深く考えたくなるほどに魅力的だ。(世の中には丸ごと、放り投げてしまいたくなるほど難解な歌も多い)

 清潔なロビーのような人…なんだかわかる気がする。私が想像したのは立派なホテルの大理石で出来た柱や床だ。
そんな、美しいけれどそれが神々しいせいでどこか、近づきにくくもあり、でも、とても心引かれる人、すっと入ってきた。

どんぐりというのも、小さな温かみのあるもの、言葉として適切で、私はどんぐりが大理石の床に当たった音を聞いたような気がした。
言葉としてそんな風に響く感覚がとても理解できた。(「突き刺さる」という表現もよく使われるが突き刺さるほど鋭くなく、優しく心に響くということ)

「このひとの」と言う部分に、言葉を発する側の緊張感も伝わってきた。

理由はわからないけれど、私は、最初からこの歌は恋の歌だと思っていた。

とある、友人である男女が一緒に出掛けて道を歩いている時、「好きな人は居ますか?」と、小さな告白の言葉を発する女性の姿が思い浮かんだのだ。
(相手に好意を寄せつつ、「好きです」などといった直接的な言葉は投げかけられないけれど…)

でも、どうして「夜」なのかそれがわからなかった、だから洗濯物を干しながら、まな板で野菜を切りながら、道を歩きながら、時々思い出しては考えていた。

そして、8ヶ月たった頃、ふと、閃いた。
二人はきっと、一緒に映画をみたり公園を散歩したり美術館に行ったりして、夜になったのではないかと…。

私は、なんだか凄く満足な気分になった。
短歌を始めたばかりで、右も左も良くわからない。
しかし、白水さんのこの歌で、短歌の面白さ、奥深さを教えてもらった気がする。
本当にありがとうございました。

Profile
白水ま衣(しろうずまい)
鹿児島生まれ。申年。射手座。塔短歌会所属。
1999年より作家を始め、2000年4月、塔短歌会に入会

上記に記した歌の他に、

「泉にはなれないけれど薬缶にはいつでも水を満たしておくよ」

猫と薬缶 福岡歌会(仮)アンソロジーⅢ

「Bob Dylan から Dylan Thomas へ移りゆく思考 信号ひとつ無視して」

「ポケットに入れても少しはみ出してしまうのがたましいなのでしょう」

Dylan 詩誌福岡ポエトリーvol. 5

など、素晴らしい作品を多く発表されている。


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