内容(「BOOK」データベースより)
死んだ男を囲む、二人の女の情念。ミッションスクールの女子たちの儚く優雅な昼休み。鉄砲薔薇散る中でホテルマンが見た幻。古い猫の毛皮みたいな臭いを放つ男の口笛。ダンボールに隠れていたぼくのひと夏の経験。日常に口を開く異界、奇怪を覗かせる深淵を鮮やかに切り取った桜庭一樹の新世界、6つの短編小説。
あと一話で読み終えます。
私にとってはすごく久しぶりの桜庭作品です。
というのは私は今はそんなに桜庭作品が好きというほどでもなくてなかなか読む機会がないんですよね。
それでもこの短篇集はとても桜庭さんらしさに溢れているように感じました。
ゴシックな感じとか、少しこじらせている感じとかそれでいて感じる清らかさ。
全6編の中でわたしとしては好き嫌いはありましたが、どれもいくらでも長編にできそうな物語性があるんですよね。
それがすごいと思う。
短くても濃厚というのか、物語の背景をいくらでも妄想できそうなそんな作品なんです。
私がとりあえず好きなのは『モコ&猫』と『五月雨』です。
『モコ&猫』は大学でモコに一目ぼれした猫の話で、いや一目ぼれって勝手に私が言っているだけなんですが、なにも始まらなくてもやっぱりこれはラブストーリーなんです。
モコが美人じゃないとこも好き。
始まりがあれば必ず終わりがある。
何かとかかわれば自分も必ず変わってしまう。
それを嫌うような恋心。
それでもやっぱり終わりはあるんだなあと切なくなりました。
『五月雨』は超短編ですが、まあ、ポーの一族みたいな話です。
ひたすら美しくて儚い物語でした。
最後の『赤い犬花』も期待してこれから読みます。