中東争乱。日本は湾岸諸国と距離置くべき | 一日一笑 : おもしろ情報館

中東争乱。日本は湾岸諸国と距離置くべき

プロパンブタン情報20151118

中東争乱。日本は湾岸諸国と距離置くべき
IS・テロ・内戦・難民―渥美堅持氏に情勢聞く


 IS(イスラム国)シリアやイエメンの内戦、シリアからの大量難民、エジプト・シナイ半島でのロシア旅客機墜落など地政学的リスクが絶えない中東。石油の需給関係からは先の読めない中東地域の火種の背景と今後について、昭和経済研究所の渥美堅持アラブ調査室長(東京国際大学名誉教授)に聞いた。渥美室長は今の中東が「争乱の時代」にあるとの認識を示したうえで「日本は争乱に巻き込まれないために 引き続き中東湾岸諸国との距離を置くべき」という。要旨は次の通り。

◎「アサド悪人説」では分からない中東世界

 今の中東は争乱の時代といってよい。良いも悪いも米ソの東西冷戦時代にあった力による秩序が崩壊して以降さまざまな価値観がぶつかり合う時代に突入し、シリア、イラク、イエメンの先行きがどうなっていくのか判然としない。問題なのはメデイアや専門家が中東で起こる出来事に予めイメージを刷り込んでいるためにそれが混乱を助長していることだ。中東世界は「アラプの春」「アサド(シリア大統)悪人説」のような表現では裏にある複雑な背景を理解できない。アサド大統領率いるバース党政権は少数部族により編成されている。その部族民と少数派のキリスト教系住民はその庇護の下で難なく暮らしている。半面アラブ系住民は難民となってコーロッパへと流出している。仮に バース党から反体制派に政権が移れば、シリア国内の混乱は拡大し、やがてシリア分割の道しかない。有志連合やロシアがISを攻撃すればするほど、ISは拡散して危険も拡散することになる。「アラブの春」は「プラハの春」と比してメディアで多用されるが 政教分離を目的に若者たちが向かった民主化運動は 哲学も組織もないままに国家建設を称えたために失敗し、結局、軍が抑えることになった。 ISをメディアが呼ぶテロ組機と決め付けることも危険だ。 ISはシリアのアラブ系部族と連携し、共存関係にある。何より、lSにはイスラム国建設という明確な政治目的がある。

◎「部族」「イスラムJ「国家」をさまよう中東との付き合い方

 中東はアラブ民族が主流を成す地域だが、今、アイデンティティーの変遷の只中にいる。それは①部族②イスラム③国家―三つの価値観のうち どれに治まろうとしているのかである。中東アラブ世界には三つの価値観が入れ普わり立ち代わりする歴史のパターンがあり 今日のそれは「部族主義」が台頭している時代といってよい。従って 中東が安定化するには相当時間を要する。日本が心配しなければならないのは湾岸情勢である。一見して近代化、工業化した国々が存在するものの、根にあるのは血のつながり。サウジアラビアのサルマン新国王は政権を血の結束で固めており 部族主義の自覚を促している。サウジアラビアの建国は、法学者ワッバーブが称えるイスラム原理主義運動をサウド家が支援することによって成功した。サウジにとってISは、建国の歴史をよみがえらせるものであり、その動きを最大限に警戒しているはずだ。なぜなら、サウジはオイルマネーによってイスラム世界の盟主の地立を確立したものの、時代とともにイスラム理論は色褪せ、その不満が国内に噴出しているからだ。他の湾岸諸国も石油収入が落ち込み、王宮内には窮屈な空気が漂っている。イエメン内戦 イラク国境防衛に伴う湾岸諸国の国防資は巨額に上り、その穴埋め問題を含め、サウジを始め湾岸諸国は来年最も世界の中で注目される存在になるだろう。日本が湾岸諸国に依存しすぎると、進出企業が抜け出せなくなり、政府も関与せざるを得なくなるから 邦人死者を出したアルジェリア事件が再発する危険性も高くなる。引き続き日本は湾岸諸国との距離を置くべきだ。また 中東以外、日本においても過激なイスラム的な環境が作られる土壌は十分にある。そのパターンは、引きこもりや鬱病に罹った者が精神の浄化を求めてイスラム教徒となり、ISのような破壊主義的思想に触れてテロリストになっていく。イスラム教徒になるには洗礼や証明書など不要で「アラー以外に神はなし」と自己宣言すればいい。9・11米国同時多発テロは、狂信的なウサマ・ビンラーディン率いるアルカーイダによる復讐劇であったが、そのテロはトップダウン型であり、十数年かけて用意周到に準備された。対してISのテロはチェーンストア型である。命令がなくとも、個々がISを名乗ってある場所で自爆テロなど派手なパフォーマンスを実行する。すると同様の手口が自然と世界中に拡散していく。自発型テロといってもよい。シナイ半島で起こったロシア旅客機墜落事件について、ロシアもエジプトも未だテロ説を唱えていないが、エジプトの治安能力の低きを露皇したものであり、航空機の乗り入れを各国が相次いで停止したのは、再発の危険が極めて高いことを示している。