ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ディア・エヴァン・ハンセン

2021-11-27 13:43:24 | た行

伝えたいことが明確で音楽もいい!

 

「ディア・エヴァン・ハンセン」72点★★★★

 

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高校生のエヴァン・ハンセン(ベン・プラット)は

シングルマザーである母(ジュリアン・ムーア)と二人暮らし。

 

日常にさまざまな不安を抱える彼は

学校でも目立たず、孤独を抱えていた。

 

彼はセラピーの一環として、自分宛の手紙を書くことになる。

「親愛なるエヴァン・ハンセンへ」――

 

だがエヴァンは学校でその手紙を

同級生コナー(コルトン・ライアン)に持ち去られてしまう。

 

数日後、エヴァンは学校で校長に呼び出され

コナーが自殺をしたと知らされる。

そしてやはり友人のいなかったコナーのポケットに

「親愛なるエヴァン・ハンセンへ」という

エヴァン宛の手紙があったことも――。

 

悲しみにくれるコナーの両親に

「息子と友達だったのね」と問われたエヴァンは――?

 

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「ウォールフラワー」(12年)(大好き!)「ワンダー 君は太陽」(17年)(良作!)で

お墨付きのスティーヴン・チョボスキー監督が

トニー賞&グラミー賞&エミー賞受賞の人気ミュージカルを映画化。

 

舞台版で初代主演を務めた

ベン・プラットが主人公を演じ、それはそれは見事な歌唱を魅せてくれます。

 

で、お話は

冴えない高校生エヴァン・ハンセンが、

あることからSNSで人気沸騰し、人生を変えていく――という展開なのですが

 

彼が注目されるきっかけになるのが

「自殺した同級生と友達だった」という嘘なんですよね。

それは彼の両親からの

あまりにも大きい「そうあってほしい!」というプレッシャーと

彼らを悲しませたくない、という善意からなる

小さな嘘だったのに

それがどんどん大きくなっていってしまう――という。

 

序盤はその「嘘」というモチーフの存在が大きいのと

自殺してしまった同級生が妄想のなかで歌い踊り始めたり、と

ビミョーにどう立っていいのか、入りにくい?という印象があった(苦笑)

 

しかし

中盤、エヴァンの同級生で

バリバリの元気印で、アクティビスト風な女子生徒が

「自分も問題を抱えている」と、エヴァンに打ち明けるんです。

 

「どんな人も、みんな何かを抱えているんだ――」と

ここからパーン、と視界が開けて

メッセージが、がぜん明確になっていく。

 

誰もがなにかを抱えてる。手を伸ばせば、誰かがいる。

あなたは、ひとりじゃないよ、って。

 

最後、どう収集するのか?もなかなかよくて

ああ、やっぱり監督うまいなあ、裏切られなかったなあと思いました。

 

SNS世代には特に響くのでは、と思いましたが

エヴァンの母親役のジュリアン・ムーア、

自殺してしまったコナーの母親役エイミー・アダムス、

それぞれの母像と、子どもへの愛の贈りかた、というのも大きなテーマなので

家族で観てもいいかもしれない。

 

それにしても。

ミュージカルなので、みんな歌います。

「ラ・ラ・ランド」を手がけた作曲チームによる音楽もいいし

エイミー・アダムスの歌も久々だけどやっぱうまいし

あら、ジュリアン・ムーアもうまいのね!

それに

ベン・プラット、すごく気になって調べたら

その生き方もカッコイイじゃん!

がぜん注目してしまいました。

 

★11/26(金)から全国で公開。

「ディア・エヴァン・ハンセン」公式サイト


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