経済の金融化は、サービス経済化の一種だから物財消費をある程度緩和する。しかし、この同じ事象が経済の不安定性を増悪させる。環境負荷と経済安定との、このトレードオフ的な関係は利潤率の低下に起因する資本主義の危機の現れ方の一つである。
しかも、サービス経済化全般がーー金融化の場合は特にそうだがーー物財生産がグローバルなサプライチェーンを外部した結果であり、環境負荷の軽減があるとしてもそれは環境負荷が単に他地域に転嫁されているだけである可能性も決して低くはない。 世界的なトータルとして見れば環境負荷が軽減されていないということもありうるのである。
トランプ政権が掲げた「ラストベルト復権」政策は、製造業の復興を通じて国内雇用を回復しようとするものだが、環境規制に対する敵対的政策と一対のものだった。鉄鋼や石炭といったエネルギー依存の高い産業は、製造業復興の中核を成しており、再び国内環境を汚染するリスクを伴う。トランプ政権下での環境規制緩和(例:パリ協定からの離脱、化石燃料産業への補助)は、企業コストを削減する一方で、環境負荷を増大させた。
それだけでなく、グローバルなサプライチェーンを構築し、生産工程間の分業の地理的な配置フレキシブルに調整することで、維持されている半導体産業など新進の工業部門の生産性の基盤を掘り崩す動きでもある。
しかし、グローバル分業の推進は、国内産業を空洞化させ、貨幣の投機的運動に国内経済をゆだねることになる。
この二律背反を現代資本主義は自ら生み出し、かつ乗り越えることができない。
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