ゴンペルツ成長曲線は、腫瘍細胞の増え方を表すグラフのことです。
「がんはもう怖くない?」でも書きましたが、
腫瘍細胞は多くの場合は2分裂によって増殖し、2のn乗個、つまり指数関数的に増殖します。
また、計算上は時間を追って増大を続け、無限に大きくなります。
この様なモデルは実験室内で急速に増殖中の細胞には当てはまるのですが、
実際のがん細胞はもう少し複雑です。
ある研究者は腫瘍細胞の増え方を、
数学者Benjamin Gompertzの関数曲線
に合わせて説明しました。
これがゴンペルツ成長曲線(Gompertzian growth)です。
この成長曲線をみると、最初は急激に立上がり、ある時点から緩やかなカーブを描き、
最終的には横軸と平行になってしまいます。
すなわち、
腫瘍は小さいときほど激しく増殖し、
ある大きさをすぎると、増殖を休止する
と言う事ができます。
さすがの がん細胞も、無制限に大きくなることはできません。
大きくなりすぎた癌は周囲からの血液供給を絶たれ、
酸欠をおこして中から壊死してくるのです。
ただし、酸欠を起こした癌細胞は冬眠状態になるので、抗がん剤が効きづらいことも
わかっています。
以上の事から、
抗がん剤は手術をした後など、細胞分裂が盛んな時期に始めるとよいと言われています。
逆に大きくなった固形癌には抗がん剤は効きにくいのです。
鉄は熱いうちに、という事でしょうか。
これを基にして化学療法における薬物投与の理論をNortonとSimonらが提唱し、
Norton & Simonの仮説と呼ばれています。
ちなみに、
腫瘍科研修医時代に、Gompertzianが覚えられなくて、
「ごんぱっつぁん」というなぞのキャラクターを立ち上げたものの、
何の事だかわからないまま試験を受けた覚えがあります。